日本語セミナーに参加して

Heritage Language  継承日本語教育を考える

 

日本語セミナーに参加して

11月3日、NSW大学主催による「日本語応用言語学セミナー2 012」が行われました。NSW大学のトムソン木下千尋教授、カリフォルニア州立大学ロングビーチ校の片岡裕子教授、カリフォルニア大学サンディエゴ校の當作靖彦教授の講演ということで、日本語教育に携わる多くの先生方で会場は満席。多くの方々がこの日の話題の中心である継承日本語教育に高い関心を持っていることが伺われました。各先生方からそれぞれに興味深いお話を伺うことができました。

木下先生より継承日本語学習者の問題点として「日本語力が外国語としての日本語を学んだ学習者と全くバランスが違い、また個人差も大きいため既成のカリキュラムに入れづらい」「正当な評価を受けにくく、力を伸ばしにくい」「教師やほかの生徒から日本語エキスパートと見なされ教室内で孤立しやすく学習意欲を削いでしまう」という報告があり、継承日本語教育の難しさが大学レベルでもあるのだということに、改めてこの分野の奥深さを感じました。

また、片岡先生の「継承語としての日本語」は、国語教育と継承日本語教育の違いを再確認する良い機会となりました。

継承語話者の日本語力について、「日常言語能力は高いが学習認識言語能力は低い」「『話す、聞く』は強いが読み書き能力は弱い」「大きくなっても幼児語が残る」「話し言葉と書き言葉の区別ができない」「英語の言い方が日本語にそのまま現れる」「基本的なことは理解しているが特殊な構文や文法に弱い」「日常会話は流暢だが高度な会話力は弱い」などの特徴が挙げられました。一方で、日本語母語話者よりは多少低いものの、外国語としての日本語学習者よりはずっと高い日本語力を持っていること、親の態度、特に母親の影響を強く受けることも挙げられました。継承語学校での取り組みは、交流ができることから効果的な学習となること、また、継続していけば日本語力が徐々に向上し、高度な日本語力に達することができることも指摘されました。

常に両親の会話など高いレベルの日本語を聞き、高度なインプットを得ることによって、語彙力や構文力を養うことができるとのことです。しかし、日本の国語の教科書を使っての学習は、難しい言葉が使われてはいるものの、音として耳から習得していない言葉のため、読めても意味が分からず、あまり効果的ではないとのこと。教科書を使ってどのように生きた言葉の習得を図るか、今後大いに研究の余地があると思いました。

日本語を継承することの大切さを子どもたちが理解すること、保護者は常に母語話者とは違うのだという認識を持ち、加点法で子どもの日本語をとらえ前向きに評価することが必要だとのご指摘もありました。

最後に當作先生の今後の日本語学習についてのお話の中で、これからの時代に求められている人材である創造性・独創性・高度の思考力・問題解決能力・異文化間コミュニケーション能力を持った人を育てる必要があり、土曜校はその最適の場であること、そして教師は日本語学習を通してそういった人間を育てるための教育をしているのだということを伺い、子どもたちの未来を切り開くお手伝いができることを幸せに思うと同時に身を引き締めて取り組まなければと肝に銘じた次第です。

素晴らしい講演会を無料で実施してくださった木下先生、片岡先生、當作先生はじめ、多くの関係者の方々に心より御礼申し上げます。


継承日本語教育を考えよう

JCS教育支援委員会

シドニー日本クラブ(JCS)会長、担当理事、日本語学校代表者により構成され、JCS日本語学校3校の運営支援、継承日本語教育の研究・普及に努めている。日本語スピーチコンテストや「継承日本語」に関するワークショップを開催

 
シーハン宏子(しーはんひろこ)
プロフィル◎文部省の派遣でシドニー日本人学校教師を3 年間経験。その後、地元の小学校、ハイスクールで日本語指導。現在、JCS日本語学校NB校で継承語としての日本語を指導。ICET(Inter-Cultural Education Today)教育コンサルタント

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