最終回 NSW州コミュニティー言語連盟の継承語教育

Heritage Language  継承日本語教育を考える

NSW州コミュニティー言語連盟の継承語教育

冬休みの間に、NSW州コミュニティー言語連盟(NSW Federation of Community Language Schools)から2学期の雑誌が届きました。35年前にいくつかの言語グループで設立されたこの会も、多文化社会の中で確実に大きく成長し、現在はヨーロッパ、アフリカ、アジア、中近東、オセアニア、南アメリカと多くの地域から56に及ぶ言語、250のコミュニティー団体が登録しているそうです。3万人以上の生徒が合計2,352人の教師の下でそれぞれの言語や文化を学んでいるとの報告がありました。

多文化社会であるオーストラリアでは、多くの国々とオーストラリアを友好的に、かつ互恵的につなげることができる人材が求められており、政府は多くの援助金を出してバイリンガル人材の養成をサポートしています。私が子どもたちに日本語を指導しているシドニー日本クラブ(JCS)日本語学校もこのサポートをCLS援助金としてNSW州政府からいただいています。

各校で登録されたYK以上の生徒1人ひとりに援助金が支給され、学校運営のための多くの費用をそれで賄っています。また、昔のCLS校は政府の教育省管轄の学校ではなく、コミュニティーの必要性により運営されている民間の学校として認識されていたため、教会の一部やコミュニティー・センターを借りて授業をしていましたが、現在はNSW州政府へCLSとして登録をすれば、公立学校を無料で借りることができるようになっています。

そのような中で私たちが実施する継承語教育は、当然NSW州の教育理念に基づいて実施されなければなりません。子どもたちは小さいころから、語彙や文法を身に着け、「話す・聞く・読む・書く力(言語能力)」を高めると同時に、適切な言葉が出てこない時に「ほかの方法で表現できるような力(方略能力)」や、「論理的な思考力・想像力・予測力・判断力・類推力などの知的能力(認知能力)」を高めるように指導されます。また、自分の身の回りや住んでいる社会、世界についての知識などを基に「自分の意見を持つ能力」や、人間はすべて平等であり自分と異なる人々や文化を受け入れ認め合うという「人権尊重の態度」「他文化から何かを習おうとする意欲」なども必要です。こういった内容のすべてを総合的に指導できるように、それぞれの学校で毎週先生方は工夫をし、切磋琢磨しながら、継承語教育を模索しています。

スピーチは、このような力をすべて注入し、1人ひとりがそれぞれのレベルで自分の意見を構築し、聞き手に分かるようにまとめて発表につなげるという、とても有意義な教材です。

現在、JCS3校は8月に実施されるスピーチ・コンテストに向けて、各校とも継承語を学ぶ子どもたちの日本語力が最大限に発揮できるよう、その指導に熱が入っています。

■参考文献:『NSW州の教育方針』(シャリーフ照子)

※当連載は今回が最終回となります。バックナンバーはウェブサイト(nichigopress.jp)からご覧になれます(「育児」カテゴリ内)。ご愛読ありがとうございました。


継承日本語教育を考えよう

JCS教育支援委員会

シドニー日本クラブ(JCS)会長、担当理事、日本語学校代表者により構成され、JCS日本語学校3校の運営支援、継承日本語教育の研究・普及に努めている。日本語スピーチ・コンテストや「継承日本語」に関するワークショップを開催
 

シーハン宏子(しーはんひろこ)

プロフィル◎文部省(現・文部科学省)の派遣でシドニー日本人学校教師を3年間経験。その後、地元の小学校、ハイスクールで日本語指導。現在、JCS日本語学校NB校で継承語としての日本語を指導。ICET教育コンサルタント

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