読み聞かせプロジェクト

Heritage Language  継承日本語教育を考える

読み聞かせプロジェクト

今月は、私が担当している10〜12歳の子どもたちのクラスで行った読み聞かせプロジェクトを紹介したいと思います。

私のクラスの子どもたちは元気いっぱいで、日本語で話したり聞いたりするのはとても得意です。ですが、やはり読んだり書いたりすることには、少し苦手意識があります。また、子どもたちの年齢は、思春期が始まる時期でもあり、日本語を使う自分をどのように受け入れるのか、なぜ自分は日本語を学んでいるのかを考え始めているようです。読み書きを、話したり聞いたりする力同様に伸ばしていくためには、音と文字を一致させることが重要で、音読をすることが効果的なのかと思いますが、ただ教科書を音読することに意義を見い出すのは難しい時期です。

早稲田大学で子どもの日本語教育を研究なさっている川上郁雄先生は著書の中で「子どもたちにとって『意味のある』場面、内容、相手に日本語を使用する時に学びが起こる」と書いていらっしゃいます。つまり、社会の中で日本語を使用していくことで、子どもたちは学んでいくことができるということです。これを基に考えると、子どもたちにとって「意味のある」場面、内容、相手を提供することが私たち教師としての役割であると言えます。

この考えを基に、子どもたちが自分たちより小さい3〜4歳の子どもたちに読み聞かせをするプロジェクトを企画するに至りました。このプロジェクトでは、お兄さん、お姉さんとして(場面)、小さい子どもたち(相手)が喜ぶ絵本(内容)を読むというものです。

つばき組の子どもたちにプロジェクトの内容を説明し、絵本を見せると、子どもたちはあっという間にどの本を読むかを決めてしまいました。絵本を読む練習をすることを宿題にしたのですが、保護者の方から「普段本を読むことがないうちの子が、『小さい子に読んであげないといけないんだよ』と言いながら真剣に練習していました」とメールまでいただくほど、子どもたちにとって大きなモチベーションになったようです。当日は朝から「何時に絵本読むの?」と本を片手に準備万端な子や、ライオンの話を読むのにライオンのぬいぐるみを持ってきた子もいました。1対1で活動をしたのですが、時々相手の顔を覗き込みながら気持ちを込めて上手に絵本を読んでいました。

思春期は、子どもたちにとって心の変化の時期であると同時に、学習の転換期でもあるのかもしれません。親から子へ受け継ぐ継承語から社会の中で使用する「日本語」へ、与えられる学習から主体的な学びへ移っていく時期であるとも言えるでしょう。

今年1年、つばき組の子どもたちと学びの転換を楽しんでいきたいと思っています。

<参考文献>川上郁雄(2011)『「移動する子どもたち」のことばの教育学』くろしお出版


JCS日本語学校シティ校
島崎薫

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