日本語学校での指導実践より

Heritage Language  継承日本語教育を考える

日本語学校での指導実践より

当コラムでは、今回より継承日本語指導に取り組んでいらっしゃる多くの先生方の実際の教育実践をお伝えしていきたいと思います。今月はJCS日本語学校ダンダス校で教えていらっしゃるサマットちづる先生からの実践報告です。

昨年度、私が担当したクラスはYKとY1の生徒9人でした。年間を通じてニュースやディスカッションをよく行いました。まだ文章を書くレベルではなかったので、3学期に校内で行われたスピーチ発表に向けてどのように原稿を書こうかと悩みましたが、最終的に全員が元気いっぱいに伝えたいことを文章にして、発表してくれました。そしてこれを機に生徒たちの力がどんどん伸びていったように思えました。

4学期に入り、自作の絵本を使ってさまざまなアクティビティーに取り組みました。この絵本を最初に教室で見せた時に、1人の生徒が手作りだと気付き「これ、先生が作ったの?ぼくも作りたい!」と言ってくれました。その時、自分たちもやってみたいという挑戦する心が生まれ、子どもたちはとてもきらきらとした表情を見せてくれました。

まずは、簡単な絵本作りから始めました。私が見本として見せた4ページの本は、言葉の紹介のみで、物語にはなっていませんでしたが、生徒たちにこの白紙の本を渡すと、すらすらと絵を描き出し、物語まで作る子も出てきました。時間内には終われなかったので、宿題としたところ、翌週、仕上げてきた自分の絵本を披露したい子たちでいっぱいになりました。

数週間後には、いよいよクラスで一丸となり、絵本製作の開始です。

「むかし、むかし」から始まり、登場人物を決め、どこで何をして最後はどのように物語を締めくくるかまで、すべて生徒たちのみで作り上げました。

製本し、最終日に生徒1人ずつにこの絵本を手渡すと、自分たちが作り上げた絵本を開き、「◯◯ちゃんが描いた絵!」や「これは、私!」と全員がとても誇らしげでした。

年頭にはまだ言葉を書くことすらおぼつかなかった生徒たちがここまで達成できた陰には、家庭でのお母様方・お父様方の努力がありました。

まだ年齢の低いお子さんにやる気を出させて、忍耐強く付き合ってくれた親御さんがいてくれたからこそ、成し遂げられたことだと確信しています。

1年間の子どもたちの成長を振り返ってみると、小さな積み重ねが大きな成果として実を結び、子どもたちが楽しんで取り組んだことが習得に結びついていることも分かります。週1回の授業を支えるために、家庭での取り組みが必要ですが、何より子どもたちのやる気を引き出すためには、楽しさ、興味を引く内容、チャレンジできそうなテーマなどが必要です。子どもたちの実態に即した学習内容と指導方法の提供に、継承日本語教師たちは毎週切磋琢磨しています。


サマットちづる
(JCS日本語学校ダンダス校教員、HSC日本語対策委員会セクレタリー)

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