注目サーフ・ヒーロー!カノア五十嵐選手インタビュー/2016WSLリポート

CT日本人初参戦のカノア五十嵐。マインド整理の数分間。世界を相手に始動する瞬間だ
CT日本人初参戦のカノア五十嵐。マインド整理の数分間。世界を相手に始動する瞬間だ

ニュー・ジェネレーションのハイスキルなサーフィンをひしひしと感じられた今大会は、雨、風、そして晴天と荒れた天候の中、大きな盛り上がりを見せた。この大舞台に挑んだのが、注目選手の1人であるカノア五十嵐だ。 (インタビュー・文・写真=yasu kakurai)

スペシャル・インタビュー
カノア五十嵐、WSL-CTという高くそびえ立つ壁の向こうへ

いつ会っても、気さくで笑顔の優しいカノア五十嵐は、数年前よりも柔らかく紳士な雰囲気を持ったニュー・サーフ・ヒーローに成長していた。今年、チャンピオンシップ・ツアー(CT)に日本人初参戦を果たし、歴史に深く名を刻んだカノア。日本人の血を受け、アメリカで生まれ育つ。その環境は、彼を単に日系アメリカ人に留めず、ミックス・カルチャーの中に生きる『国際人』に育て上げた。サーフィン・コンペティターとなると1戦30分の中で、どの波に乗り、どのような技を入れ、どうトータル・メイクしていくか。しかも世界トップ34名の中で戦い抜くには、ハイリスク・ハイリターンな技で打って出なければならないのだ。だからこそ、多くの技術としっかりと決められる正確性が伴わなければならない。ちょっとしたミス、例えば波の選択やエアーの甘さ、着地の失敗などは命取りの大きなミスにつながる。世界の名だたるサーフ・ポイントで行われるCTに参戦することは、そのぎりぎりの精神状態で戦うということ。

アスリートには、とてつもなく大きな“自分との孤独な戦い”がある。「緊張して、初戦前夜もしっかり眠れなかったから……。次はとにかく明日のラウンド2のことを考える」と、CT初参戦直後、カノアの言葉。しかし、カノアの心は強かった。「自分らしいサーフィンをしよう」とマインド調整をし、極限の状態から「サーフィンは楽しむものだ」と我に返った。そこからの快進撃で強豪相手に臆することなく波をつかみ、自分のスタイルを波に刻み、結果を見ればルーキー初参戦9位のスタート。カノア五十嵐、見る者を引き付けてやまない魅力を持つサーファー。これからまだまだ、目が離せない。

カノア五十嵐、CT初参戦。そのバックグラウンドを聞く

—「国籍・米国、しかし日本人の魂を持ったカノア五十嵐」と、言われますが自分ではどうとらえていますか。
 外では英語の生活、家に帰れば日本語を話して日本食を食べる……、まるで2つの国に同時にいるみたいでした。最近はアメリカよりオーストラリアに居る方が長いですね。1年のほとんどを海外で暮らしているせいか、自分の国籍はあまり意識していません。

—家族とのつながりを大切にしていることがとても伝わってきますが、自分にとって家族とは何ですか。
 家族がいるから頑張れます。サポーターであり、アドバイザーであり、心を許せる場所。家族……、それは1番大切なもの。

—「プロ・サーファーになる」という小さな頃からの大きな夢をかなえ、CT選手になった今の気持ちは?
 とにかく「うれしい」のひと言です。目標が1つクリアされて、ステップ・アップしたのが実感できます。幼い頃から憧れていた選手たちと同じ場所で戦えることに感動しています。CT選手になって、改めてプロ・サーファーになったことを実感しました。

カノアのリッピングはとにかくしなやかで華麗に波をえぐる。豪快なスプレー
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ラウンド3でベテランのジョシュ・カーを抑え、見事な勝利をものにした笑顔のインタビュー

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—この先の新たな目標や夢は?
 今年はCTのルーキー・オブ・ザ・イヤーを目指しています。新たな夢はないですね。小さな頃から僕の夢はただ1つ、ワールド・チャンピオンになることです。

—これからの日本人グロメッツへのアドバイスを。
 楽しんでサーフィンをすること。練習でも大会でも。それと、1番のサポーターは「親」だということを覚えておいてほしいと思います。

—大会の時、自分のモチベーションや精神面のコントロールはどのようにしていますか。
 いつも楽しんで大会に挑んでいます。ドキドキもするけどわくわくもしていて……緊張も楽しんでいる感じです。海に入る直前は、天国にいるおじいちゃんのことを考えています。「見ててね。頑張るよ、いい波を届けてね」ってね。

—カノアにとってサーフィンとは?
 サーフィンは、楽しくて仕方がないもの。辞めようと思ったことは、1度もありません。

—憧れのサーファーは誰ですか。
 子どもの時は、ケリーが憧れの人でした。でも今は、ヒートで一緒になれば倒さなければいけない人。なので現在、憧れの人はいなくなりました(笑)。

—オーストラリア、そして世界の好きなサーフ・ポイントは?
 オーストラリアではキラが好き。世界では、やっぱりパイプ(ハワイ)が1番好き。だから、CTの最終戦になる“パイプライン・マスターズ”が楽しみです。

—『日豪プレス』読者をはじめ、海外で生活をしている日本人にひと言と最後に感想を。
 僕もそうですけど、海外生活を楽しめたらいいなと思います。オーストラリアにいてもホームのようでうれしかったです。スナッパーの大会に応援に来てくれた人たち、ありがとう。そしてまた、来年もスナッパーで会えるように頑張ります。

Profile
1997年1月10日生まれ、幼少期から注目を集め、今や世界の舞台で活躍。Quiksilverなど多くのスポンサーを受け、大きな期待が膨らむ。

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ウィルコはシドニー出身。母国でのうれしいCT初優勝をつかみ取った。快進撃が続く
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CT初戦を制したマット・ウィルキンソンとタイラー・ライト、ダブル・オージーでトップを飾った

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今大会は、番狂わせが起こり、ルーキーズのサーフィンが目立っていた。まず、髪型も個性的なマイキー・ライト(AUS)は、波をザックリとえぐるスタイリッシュなカットバックから特大のスプレーを巻き上げ、ラウンド1では、コロへ・アンディーノ(USA)を圧勝するライディングを披露していた。コナー・コフィン(USA)もカリフォルニア出身のホープで、フルレールのスラッシュが際立つルーキー。ラウンド1では、王者たるケリー、更に技の1つひとつがキレていたマット・ウィルキンソン(AUS)とのヒートからスタート。だが、ルーキーにして堂々たる試合運びをし、今後の展開がどのようになっていくかが楽しみである。

そしてもう1人ルーキーを挙げるのであれば、カノア五十嵐(USA)になる。アスリートとしての注目度、人間性、サーフィン技術などにおいて、あふれる魅力を彼のそばで感じた。メローで穏やかな中に強い闘志があり、何よりサーフィンを楽しんでいる。パワフルな選手が多い中、しなやかで豪快なスプレーを放ち、サラっとこなすエアーがカノアのサーフ・スタイル。世界の強豪陣を相手に第1戦のランキング9位。この結果は好成績な走り出しだと言えよう。

ルーキーたちの活躍の一方で、重鎮(サーフ・エリート)たちの早期敗退が目立った。優勝候補とも言われていたフィリペ・トレド(BRA)は、さすがの10ポイント・ライド(ラウンド4)をマークしたが、セミファイナルにてエアリバース着地の際に鼠径部(そけいぶ)をひねり、肉離れを起こした。やはり、ハイ・ポイントを得る技には、リスクが伴うということになる。他にも、オーウェン・ライト(AUS)、ビード・ダービッジ(AUS)、アレホ・ムニーツ(BRA)がケガで初戦から欠場している。大会前、開幕後と既に荒れ模様の2016 WSL CTとなっている。


決勝の舞台は、バック・ハンドでボトムから垂直にリップするマット・ウィルキンソン(AUS)と、波のフェイスを鋭く刻み込むコロへ・アンディーノ(USA)の戦いとなった。この決勝までの流れを見ても、2人ともこれまでとは断然に違うサーフィンを見せ、バランスとパワーが増していた。ただ、マットは、見栄えの良い波をつかみ、マニューバーの流れにしっかりとリッピングなどの技を決めてきた。終了のフォーン間際にも波をキャッチし、会場にはそのライディングへの歓喜の声が響く中、優勝の座を勝ち取った。

■Results:MEN

優勝 マット・ウィルキンソン(AUS)
2位 コロヘ・アンディーノ(USA)
3位 フィリペ・トレド(BRA)

ステュアート・ケネディ(AUS)
5位 ジョエル・パーキンソン(AUS)

アドリアーノ・デ・スーザ(BRA)

エイドリアン・バッカン(AUS)

ジョンジョン・フローレンス(HAW)
9位 カノア五十嵐(USA)

■Results:WOMEN

優勝 タイラー・ライト(AUS)
2位 コートニー・コンローグ(USA)
3位 カリッサ・ムーア(HAW)

ジョアン・デファイ(FRA)

■開催地:
スナッパーロックス・クーランガッタ・ゴールドコースト

■期間:2016年3月10日~21日

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