【インタビュー】井上富紀子さん(ザ・リッツ・カールトン親善大使他)


サービス業や顧客対応に携わる人たちから絶大な支持を得るカリスマ、井上富紀子さん。2014年「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞の実行委員長賞を受賞した会社の取締役や、トップ・クラスのホスピタリティーを誇るザ・リッツ・カールトンの親善大使を務める他、マラソンやトライアスロンに挑戦するアスリートでもある。オーストラリアとの関係が深く、将来はゴールドコーストに住むのが夢という井上さんに、ビジネスやスポーツ、挑戦することの大切さなどを伺った。なお取材はマリオット・ホテルの協力により、同ホテル27階のエランドラ・ルームと呼ばれるエグゼクティブ・フロアで敢行した。
(取材協力=Surfers Paradise Marriott Resort & Spa、インタビュー=内藤タカヒコ、写真=佐藤瞳)

井上富紀子(ふきこ)さんは、レディース・ファッションの企画・製造・販売を行うラブリークイーン株式会社の取締役であり、また同社の物流を手掛けるLFC株式会社の取締役として活躍している。LFC株式会社は2014年に経済産業省から「おもてなし経営企業」に選出され、同年、人を大切にする経営学会主催の「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞の実行委員長賞を受賞。取締役の井上さんは女性リーダーとして注目され、全国各地で講演会やセミナーなど多忙な生活を送っている。

ザ・リッツ・カールトン親善大使

井上さんは会社の取締役としての顔の他に、ホテル・グループ「ザ・リッツ・カールトン」の親善大使という顔も持ち、文字通り世界中を飛び回っている。同グループは世界的にトップ・クラスのホスピタリティーを提供することで知られ、ゲストに対して上質なおもてなしを行うこと、スタッフを大切にすること、スタッフも自分のホテルに誇りを持って働いていることで有名だ。

井上さんとザ・リッツ・カールトンとの出合いは、ザ・リッツ・カールトン大阪で行われたホスピタリティーを学ぶ2日間のセミナーだった。出席予定だったご主人が1日しか参加できなくなったことから、急遽井上さんが1日だけ代わりに受講し、なんとそこで世界中の全てのザ・リッツ・カールトンを巡る旅に出ることを決意した。

旅先の国や地域には想像を超えた驚きがあり、それぞれのザ・リッツ・カールトンにはそれぞれの感動がある。次々に訪れる新鮮な感動から、ザ・リッツ・カールトンがなぜこれほど人びとを魅了するのか、ゲストを幸せにする最高のサービスとは何かを深く考えさせられたという。

この世界中のザ・リッツ・カールトンを巡る旅は、05年のザ・リッツ・カールトン大阪から07年の東京まで、1年10カ月の間に訪れた拠点数は63にも及ぶ。その様子は07年に1冊の本『リッツ・カールトン20の秘密(ミスティーク)』にまとめられ、サービス業や顧客対応の本質を捉えたロングセラーとしてたくさんの人に愛され続けている。

オーストラリアとの出合い

井上さんが初めてオーストラリアを訪れたのは1988年のこと。当時留学中だった息子さんに会うための来豪だったが、メルボルン、ブリスベン、ゴールドコーストを訪れた。この時「将来はゴールドコーストに住みたい」と強く思ったという。

「青い空と海、白い砂浜。そして何より人が温かくフレンドリーなところが気に入りました」と語る。「たとえば自転車を停めて景色を見ていると、必ず『大丈夫ですか?』などと声を掛けられます。東京のような都会では考えられないことですが、ゴールドコーストではごく自然なこと。そんなちょっとしたことですが、とても素敵な街だと感じました」

また、仕事でも、スポーツ・ウェアのメーカーとしてオーストラリア製品の輸入・販売を手掛けることなどを通じて縁が深まっていった。その後、日本に住んでいたオーストラリア人の友人がQLD州のヌーサへ移り住んだことから、友人を訪ねて1年に5~6回は渡豪することになり、93年からはオーストラリア留学のエージェント業も手掛けるようになった。

井上さんは現在、長年の夢であるゴールドコーストに住むための準備を進めている。同時に、2年後にメルボルンにオープンするザ・リッツ・カールトンを楽しみにもしているそうだ。

豪州へ移住準備中の井上さん。サーファーズ・パラダイス・マリオット・リゾート&スパのエランドラ・ルームで
豪州へ移住準備中の井上さん。サーファーズ・パラダイス・マリオット・リゾート&スパのエランドラ・ルームで

アスリートとして

井上さんは、アスリートとしてマラソンやトライアスロンへの挑戦も続けている。ビジネスや生活が一段落し、これまでの人生で未経験のものに挑戦したいと考えた時に、偶然トライアスロンの映像を見たことがきっかけだったと言う。

「水泳を終えて水から上がってくる選手たちの美しい姿を見て、直感的に『私もやってみたい』と思いました。当時の私は泳げませんでしたが、どうしてもトライアスロンに挑戦したいという気持ちが強かったです」と笑いながら話す。それまでも趣味で走ってはいたが、これに加え自転車のトレーニングと、水泳のプライベート・コーチのレッスンも開始し、約1年後の初めてのレースで見事に完走を果たす。以後各地の大会に出場し、今年6月に山形県で開催された「みなと酒田トライアスロンおしんレース」の年齢ごとのカテゴリーでは優勝を飾るまでの実力を身に付けた。

今の井上さんの目標はトライアスロンの世界大会へ出場することだ。現時点で日本トライアスロン連合のエイジ・カテゴリーで2位につけており、年間総合成績が3位以内であれば国際トライアスロン連合が主催する世界大会への出場が叶う。そのため、忙しい身にも関わらず毎日のトレーニングは怠らない。

水泳、自転車、長距離走を連続して行う過酷な競技になぜこれほど夢中になるのだろうか。その魅力を井上さんは「1カ月、2カ月とトレーニングを続けていくと、少しずつ自分の限界値が上がることを実感できます。昨日より今日の方が良いという日々の進化が実感できます。そしてゴールした時の達成感は何ものにも代えられません」と話す。それと同時に「今は年齢を重ねていくことが楽しくてしょうがありません。年を取ることはネガティブに考えられがちですが、トライアスロンでは出場選手は年齢ごとにカテゴリー分けされ、このエイジ・カテゴリーのお陰で私にも大きなチャンスがあります」。

チャレンジすることの大切さ

新しいことに挑戦する時、井上さんは自分の直感をとても大事にするという。挑戦する前に不可能そうだとあきらめてしまうことはせず、井上さんは自分の直感を信じて、世界中のザ・リッツ・カールトンを訪れたり、トライアスロンに出場してきた。

「新しいチャレンジに重要なことは、『できる』と信じること。現在の自分の能力から可能・不可能と予測するのではなく、まず目標を決め、それを達成する方法を真剣に考えることが大切です。目標の大小は関係なく、目標を持つことで頑張ることができます。また、自分の本当にやりたいことを考えて、すぐに始めることも大事ですね。決して『いつかやろう』とできない言い訳をしないことです」

井上さんとザ・リッツ・カールトン東京の総支配人リコ・ドゥブランク氏の著書『リッツ・カールトン20の秘密(ミスティーク)― 一枚のカード(クレド)に込められた成功法則』(2007年、豪州へ移住準備中の井上さん。サーファーズ・パラダイス・マリオット・リゾート&スパのエランドラ・ルームで オータパブリケイションズ発行)
井上さんとザ・リッツ・カールトン東京の総支配人リコ・ドゥブランク氏の著書『リッツ・カールトン20の秘密(ミスティーク)― 一枚のカード(クレド)に込められた成功法則』(2007年、豪州へ移住準備中の井上さん。サーファーズ・パラダイス・マリオット・リゾート&スパのエランドラ・ルームで オータパブリケイションズ発行)

現在は大学院で中小企業の経営改革について学んでいる井上さん。日本の実に99.7パーセントを占める中小企業の中には、社員の幸せに重きを置く企業もあり、そのような企業の姿勢や実態を学ぶことで、より良い社会を実現できるのではないかと考えている。「日本の『おもてなし』は世界中で重要視されています。講演活動などを通じてそれをもっとたくさんの人へ伝えて、一緒に考えていきたいです。私のライフワークですね」と将来の目標も語ってくれた。

会社の取締役であり、ザ・リッツ・カールトン親善大使、そしてアスリートとして活動し、大学院で学ぶ。多忙な身であっても、常に次の目標に向かって行動している井上さんの今後の更なる活躍に注目したい。

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