【40周年記念特別寄稿】オーストラリア、日本、そして北朝鮮

※仮訳:在シドニー日本国総領事館(記事原文は英語)

日豪プレス40周年記念・特別寄稿

※仮訳:在シドニー日本国総領事館(記事原文は英語)

日豪プレス創刊40周年というこの絶好の機会に、「平和という技術」及び「戦争という手段」の対比について書かせて頂くことになりました。

オーストラリアと日本の関係は、第2次世界大戦後に急速に改善されました。経済、文化、観光、そして、その他の分野での関係は、直ちに再確立されました。立憲主義の原則、法の支配、議会制民主主義、及び自由市場のルールを共有する国として、オーストラリアと日本は強い絆と友情を育んできました。この絆は、両政府及び企業レベルにも反映されており、更に、個人、文化及び芸術レベルでも明白となっています。豪日両国の法律は、表現と報道の自由を確認し擁護しています。日豪プレスは、この貴重な実例ではないでしょうか。

日本及びオーストラリアの両国民は、国や世界情勢についての情報を、政府のプロパガンダを通じて入手することはありません。

現代技術は、インターネット、グローバル・テレコミュニケーション、衛星テレビへの自由なアクセスを提供しています。これにより人びとは、膨大なニュース、情報や意見におおむね検閲なしにアクセスすることができます。人びとは自分自身で結論を導き、自分自身で判断を下すことができます。考える内容を強制されることはありません。

悲しいことに、オーストラリアにおける日豪プレスの40年は、偶然にも北朝鮮のミサイル計画の開発の年表とほとんど正確に一致しています。

その始まりは、伝えられるところによると、1976年に北朝鮮が旧ソ連からスカッドBミサイルを、エジプトからミサイル発射台を入手したことにあります。

ミサイル開発計画により、84年には最初のスカッドBミサイル発射実験が行われました。初の自国製大陸弾道弾の発射は、93年に行われました。オーストラリアと日本が、平和、繁栄、協力の方法を発展させていた一方で、北朝鮮は戦争の道具と相互破壊の方法論を開発していたのです。

北朝鮮による普遍的人権の侵害の深刻さは、過去40年にわたってオーストラリアや日本を含む各国のメディアで報道されてきました。そしてついに、国連人権理事会は行動を起こしたのです。2013年3月にジュネーブで開催された会合において、国連人権理事会は組織的で広範かつ深刻な北朝鮮の人権侵害を調査するための国連調査委員会(COI)の設置を決議しました。COI設置の決議は、投票を求めることなく採択されました。国際社会は深い懸念を抱いており、行動を望んでいたのです。

私の同僚であるマルズキ・ダルスマン(Marzuki Darusman、インドネシア出身)とソーニャ・ビセルコ(Sonja Biserko、セルビア出身)と共に、私はCOI委員長に任命されました。早急な報告が必要とされ、14年3月には報告書が提出されました。報告書は、ソウル、東京、ロンドン、ワシントン、ジュネーブで行われた公聴会を経て提出されました。私たちは、公聴会に招待された報道記者と密接に関わりました。北朝鮮は出席や協力を拒否するだけでなく、国連決議で協力するよう要請されたにもかかわらず、COIの北朝鮮訪問要請を拒否しました。

提出された報告書は、北朝鮮の悲惨な人権状況を例証するものとなりました。このCOI報告書は注意を引くものであり、読みやすいものでした。ほぼ全てのページにわたって、目撃者の証言が記載されています。証言者は、北朝鮮による主に市民をターゲットとした、残忍で、抑圧的かつ暴力的で、胸を引き裂くような話を直接語りました。それらの証言は、オンライン上にアップロードされています。人権について北朝鮮が傲慢で無関心であることに対する世界的な非難として、今日も証言はオンライン上に掲載され続けています。当然のことながら、国連人権理事会、国連総会において採択された一連の決議並びに国連安全保障理事会の正式な手続きを踏んだ決議は深い懸念を表し、国連による強力な行動を求めています。

国連における北朝鮮に関する私の任務は既に終了していますが、国連は引き続き関与しています。COIの勧告を踏まえ、COIがその報告書で指摘した犯罪の被害者の証言を収集し、COIの任務を継続するため、ソウルに国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)が設置されました。現在、3万人以上に及ぶ脱北者が韓国に逃れ、居住しています。報告された犯罪のうちの幾つかは、国際法上の「人道に対する犯罪」に相当します。この犯罪には、国家が支援した「人類の良心に衝撃を与えるような」暴力行為が含まれます。「人道に対する犯罪」に相当する場合、国際法と国連決議は、世界が目を離さないことを約束します。関係国が行動を起こさないのであれば、国際社会は説明責任を果たすために介入を開始します。これまでのところ、それは起こっていません。しかしながら、それは起きなければならないのです。

COIの重要な任務に、朝鮮労働党35号室が実施した国家実行に関係しているものがあります。35号室は「誘拐や拉致といった通常の諜報活動」と呼ばれる活動を担当し、特に日本からの拉致を任務としていました。この衝撃的な北朝鮮の政策は、新潟県で学校からの帰り道に当時13歳の少女であった横田めぐみさんが拉致された77年には遅くとも始まっていました。彼女は翻訳を手伝うために必要とされていたようです。02年9月に金正日(キム・ジョンイル)総書記(当時)が小泉純一郎総理(当時)と会談した際、北朝鮮は、40年前の彼女の拉致事件は事実であると認めました。北朝鮮による日本人拉致被害者の正確な数は不明です。COIは、その人数は少なくとも100人であり、更にはるかに多い可能性があることを見いだしました。しかし、ほんの一握りの方々だけしか、帰国を許されませんでした。他国民も拉致され、拘束されました。その中で、最も多くの国民が拉致されたのは韓国です。1953年の朝鮮戦争を終結させた停戦協定の後も、多くの捕虜は帰還できませんでした。彼らは家族と郵便や電話で接触することさえ許されていません。

COIは、外国人の誘拐や拉致といった犯罪が「人道に対する犯罪」であると指摘しました。(拉致された)国民が故郷や家族の元に戻って来ない限り、犯罪は継続しています。国家による国際的拉致は、海賊行為のようなものであり、説明責任が求められます。COIは、北朝鮮当局者の国際刑事裁判所への付託を勧告しました。しかしながら、それには安全保障理事会の決議が必要となっています。しかし、国連憲章の下、票を投じることが(拒否権を発動しないことが)必要とされているロシアと中国の協力がないため、これまでそのような決議はまだ実現できていません。

その間に、北朝鮮に対する世界的な緊急行動を促す以下の重大な進展が見られました。

● 17年7月4日、北朝鮮は初めて大陸間弾道ミサイルの発射実験を行い、同ミサイルは日本の排他的経済水域内に着弾しました。また、17年8月29日に、日本上空を通過する弾道ミサイルを発射しました。これらの平和と安全を脅かし、安全保障理事会の決議に反する意図的な挑発行動は、米軍とその同盟国によるあり得るべき行動に対し、日本国民が人質として捕らわれていることを示すためのものでした。

● 17年9月3日、北朝鮮は6回目の地下核実験を行いましたが、この爆発力は過去のものより5〜倍強かったと伝えられています。安倍総理は、この行動に対して「断じて容認できない」と明確に表明し、文在寅(ムン・ジェイン)韓国大統領は「罰」に値すると表明しました。・17年8月28日、北朝鮮の人権に関する国連事務総長の最新の報告書が公表されました。報告書には、「人道的状況を含めた深刻な人権侵害の継続的パターン」と記載されました。実際、これは非常に控えめな表現です。国連のCOI報告書が明らかにしたように、北朝鮮は単に「深刻な人権侵害」を引き起こす国ではありません。COIは、北朝鮮が日本国民を含む国際的な誘拐や拉致といった「人道に対する犯罪」を犯していると指摘しました。このような犯罪には、早急な説明責任が求められます。

北朝鮮によって引き起こされた安全保障情勢は、今や非常に危険です。歴史は、世界が「夢遊病者」のようにつまずきながら第1次世界大戦に突入していったことを教示しています。核兵器、ミサイル及び潜水艦発射技術の実験自体、深刻な人権侵害に等しいことです。国連は、北朝鮮による比類のない人権侵害についてのCOIの調査結果を放置してはなりません。北朝鮮による人権侵害は、北朝鮮をめぐる安全保障上の脅威と密接に関係しています。世界が兵器問題を解決しようとする一方、北朝鮮による人権侵害が棚上げされてはなりません。これらは全てパッケージの一部なのです。また、それらは、北朝鮮に対応することに更なる危険な側面があることも明らかにしており、全ての人類が危険にさらされることになります。

解決のための鍵は、中国にあります。中国は、北朝鮮のエネルギーの生命線である石油パイプラインを維持しています。世界的な対応を評価するには、人権を重視し続けることが必要不可欠です。「人道に対する犯罪」を犯した国は不安定であり、予測不能である傾向があります。それらの国々は、自国民と国際社会に対する責任を負わなければなりません。その責任には、我々が決して忘れてはならない日本人拉致被害者の苦難に対する犯罪についての北朝鮮の説明責任も含まれます。



マイケル・カービー

元豪州連邦最高裁判事。北朝鮮における人権に関する国連調査委員会(COI)の元委員長で豪州在住。その功績を称えられ、2017年、旭日重光章を受章

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