【インタビュー】新日本国大使 秋元義孝氏

 

着任インタビュー

秋元義孝・新大使に聞く
 
10月末に駐オーストラリア特命全権大使としてキャンベラの日本大使館に着任した秋元義孝・新大使に話を伺った。
 
 

これまでの経歴について

——特に専門とされてきた分野についてご紹介ください。

 私の場合、ロシアと経済協力の2つが専門と言えるのではないでしょうか。外務省では入省した時点で専門の外国語を決められるのですが、私の場合はロシア語でした。そのために若いころからソ連・ロシア関係に長く携わってきており、モスクワには3回、合計9年間勤務しました。

経済協力の方は、40代になってから携わるようになり、ジャカルタに勤務した時は、経済担当公使としてODAの現場を見て歩きました。オーストラリアに来る前は、外務省で儀典長という主に外国賓客の接遇をする職におりました。ただし儀典とかプロトコルは専門とは言えませんが。

——これまでのお仕事の中で印象に残るものをご紹介ください。

35年間外務省に勤めている中でいろいろな経験をしました。ロシア関係で一番印象に残っている出来事は、やはり「ソ連邦の崩壊」と「冷戦時代の終焉」でしたね。当時はまだ30代で外務省のソ連担当部局におりましたが、誰もが想像できなかったスピードでソ連帝国が瓦解していくのを目の当たりにしました。20世紀後半の最大の出来事だったと思います。

最近で一番印象深かったことは、昨年のブータン国王御夫妻の御訪日と今年の天皇皇后両陛下の英国御訪問です。儀典長として深く関わらせていただきましたが、かけがえのない貴重な経験でした。

 

大使としての公務について

——着任以来のオーストラリアについての印象はいかがでしょうか。

10月末に着任したばかりですし、まだシドニーとメルボルンにしか行っていません。その範囲で申し上げれば、広大な土地と美しい自然、そして資源に恵まれたたいへん豊かな国だということ。そのような恵まれた環境の中で、人々がたいへんオープンで親しみやすく、親日的というのが第1印象です。

日本は、経済停滞、少子高齢化、原発などのさまざまな問題を抱え、社会に閉塞感すら感じられる中で、オーストラリア社会の豊かさ、大らかさが羨ましいですね。

——大使としてのオーストラリアでの最大のミッションは何であるとお考えでしょうか。また、日本の対豪政策についてどのようなお考えをお持ちですか。

日本にとりオーストラリアは基本的価値や戦略的利益を共有する重要なパートナーです。長きにわたって両国関係を支えてきた経済関係を一層発展させること、そして近年活発化してきている政治・安全保障面での協力関係をさらに強化すること、これが日本の対豪政策の基本です。また2国間関係の文脈だけでなく、国際社会が直面するさまざまな問題への取り組みにおいても協力を強化していくことが重要です。そういった個別の分野での協力を1つ1つ積み重ねることによって友好関係を一層盤石なものとしていければと思います。

しかし、国と国との本当の友好関係というものを考えた場合、政府や大使館の力だけでできることは限られています。両国の友好関係をこれまで支えてきたもの、そして今後とも支えていくものは、何よりも人と人との関係です。オーストラリア各地で活躍されているビジネス関係の邦人の方々、さまざまな形でオーストラリアに住まわれている方々、留学やワーキング・ホリデーで来られている若い方々、そういう方々の思いや努力が積み重なって、これまで両国の友好が育まれてきたし、今後も育まれていくのだと思います。そのように考えると、私にできることは、そのための環境作りのようなことではないでしょうか。そういう気持ちで精一杯仕事に取り組んでいきたいと思います。

——日本の調査捕鯨活動について、オーストラリアに暮らす日本人はどのような事柄を理解しておくべきでしょうか。

捕鯨問題は、両国間で立場が全く異なるほとんど唯一の問題です。日本政府の立場は、調査捕鯨は国際捕鯨取締条約で認められた科学的研究のための活動であり、条約に沿った形で実施されているということ、つまり国際法の観点からみても合法的な活動であるということです。

残念ながら、オーストラリアの多くの人々は調査捕鯨に反対しています。大事なことは、それぞれの立場がどうであれ、暴力や妨害行為によって相手の生命や財産を脅かすことは到底容認できないということです。

また、日本とオーストラリアの関係は、1つの問題で左右されるような関係でなく、もっと大きな広がりと深みと歴史を持っています。特定の問題についての立場の違いはあっても、不必要に煽ることはせず、両国の友好関係という大局を常に忘れないことです。

 

パーソナリティーについて

——趣味など、オーストラリアで挑戦してみたいこと、楽しみにしていることはありますか。

せっかくオーストラリアに来たのですから、ゴルフは多少なりとも上手になりたいですね。それからこの国の豊かな自然に触れるためにできるだけ多くの場所を訪れてみたいです。また行く先々でその土地の美味しいワインを味わいたいですね。あとは、日本で1年くらい前から油絵を習い始めたので、こちらでも暇を見つけて続けたいです。

——大使ご自身のパーソナリティーをひと言で表現されると「何」でしょうか。

ひと言で表現する上手い言葉が見つかりません。自分の性格はよく分かりませんが、極めて合理主義的な面と恩義を大切にする古風な面とが複雑に共存しているのでないでしょうか。

——大切にされている座右の銘と、その理由をご紹介ください。

座右の銘は「人間万事塞翁が馬」です。人生は、何が最終的に福か禍かは誰にも判らないという故事です。だから、成功している時も奢らず、失敗した時も落ち込まず、という風に自分なりに理解しています。

自分のこれまでの人生の中でいろいろな経験を積み重ねていくうちに、自然にこのようなことを会得したように思います。自分の娘たちが落ち込んでいる時なども、よく言って聞かせましたから、今では我が家の家訓になっています。

 

在豪日系コミュニティーへのメッセージ

—— 新大使として在豪邦人の皆さんにメッセージをお願いします。

オーストラリアは、シドニーであれメルボルンであれ、どこもたいへん美しい自然、住みやすそうな街、親日的な人々、豊かな社会という素晴らしい国ですが、しかし、実際に生活されると仕事面でも私生活面でもいろいろなご苦労がおありかと思います。

繰り返しになりますが、オーストラリアにいろいろな形で滞在されているすべての邦人の方々の思いや努力が積み重なって日本とオーストラリアの友好関係が育まれてきたし、これからも育まれていくのだと思います。そのような活動を少しでもお手伝いするのが私の役目だと思っています。

大使としての在勤中にできるだけ多くの場所を訪問し、できるだけ多くの方々とお会いして、いろいろなお話を伺えればと思います。

皆様のご健康とご活躍をお祈りしております。

 

【略歴】
秋元義孝(あきもとよしたか)
昭和 28年 1月1日生
昭和 51年10月 外務公務員採用上級試験合格
   52年3月 東京大学法学部第二類卒業
     4月 外務省入省
平成 3年11月 在連合王国日本国大使館 参事官
   6年6月 在ロシア日本国大使館 参事官
   9年8月 欧亜局東欧課長
   11年8月 経済協力局無償資金協力課長
   13年1月 経済協力局政策課長
   14年4月 在インドネシア日本国大使館 公使
   16年8月 在ロシア日本国大使館 公使
   20年1月 大臣官房審議官兼総合外交政策局(国連担当)大使
   20年7月 中東アフリカ局アフリカ審議官
   22年8月 儀典長
   24年9月 在オーストラリア日本国大使館 特命全権大使

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