オーストラリアの「海の幸」2016年版(魚図鑑、名店ガイド付き)②

取材・文=馬場一哉、写真=伊地知直緒人、馬場一哉
取材・文=馬場一哉、写真=伊地知直緒人、馬場一哉

BBQ文化など肉食のイメージの強いオーストラリアだが、実は「海の幸」にもかなり恵まれた国であることをご存知だろうか。オーストラリアではシーフードを積極的に食べる文化は元々なかったというが、食文化の異なる海外からの移民の増加と、恵まれた漁場が近くにある幸運が重なり近年、シーフードの存在感はかなりの高まりを見せている。本特集ではオーストラリアの「海の幸」に関する最新事情、及び日本とはまた異なる当地特有のおいしい魚の情報をお届けしていく。Photo: Naoto Ijichi, Kazuya Baba

オーストラリアの海の幸事情(1/2) ▶▶▶

オーストラリアの海の幸事情(2/2) ▶▶▶

オーストラリアの魚図鑑 ▶▶▶

厳選、海の幸がおいしい8店 ▶▶▶


跳ね上がる人気魚種の市場価格

魚介市場が広がりを見せていくこと自体は喜ぶべきことではあるが同時にある種の悲鳴もまた上がっている。「良い魚を発掘するのはうれしい反面、あっという間に価格が上がってしまうのが困りどころ」と石井氏は言う。石井氏がオーストラリアの御三家と呼ぶ魚介の1つである南洋金目鯛は以前は1キロ6ドル程度だったというが石井氏が取り扱い始めたことで注目を集め、あっという間に値が跳ね上がってしまったという。今では1キロ38ドルの高級食材となっている。

桜井氏もまた価格の高騰について言及する。「たしかに南洋金目鯛は値段が上がりました。それでも足りない状態なので人気はすごいです。カツオなども価格が跳ね上がっています。カツオのたたきをきっかけにローカルのシェフの間でも話題になってファイン・ダイニングでもカツオが使われるようになったんです」

それまで安く手に入ったものの価格が上がるのは消費者としては苦しいところだが、一方で市場の熟成に伴い価値が高いものに値が付くようになるのは自然なことでもある。いずれにしてもレストランで多種多様なおいしい魚を食べられるようになっているのは確かだ。石井の見立てによるとすしネタとしておいしいものを全てそろえられればその数は今や30は下らないという。

人気の高い魚は調理しやすいようあらかじめ切り身の状態で売られている
人気の高い魚は調理しやすいようあらかじめ切り身の状態で売られている

オーストラリアの“御三家”

オーストラリアの魚介市場のポテンシャルの高さに注目が集まっている昨今だが、実際、日本の市場とオーストラリアの市場にはどのような違いがあるのだろうか。コスティ氏は言う。

その日にマーケットに届いたイエロー・フィン・ツナ
その日にマーケットに届いたイエロー・フィン・ツナ

刺身用に貝やタコが並ぶようになったのはここ最近のこと

刺身用に貝やタコが並ぶようになったのはここ最近のこと

「オーストラリアには巨大なリーフがあるなど海域はユニークで数多くの魚が捕れます。もちろん市場の大きさやニーズの違いなどもあるので規模感は比べるべくはないですが、それでも魚の多様性に関しては日本にひけを取らないと言えます。ただ、消費者にとって大きく異なるのは小売りの状況。日本ではスライスされフレッシュな状態でパッキングされた刺し身などが簡単に手に入ります。しかしオーストラリアでは刺し身として売られているものは少なく、新鮮な魚を生で食べるには1匹買ってさばく必要があります。物理的にはさまざまな刺し身を用意して店頭に並べることもできますが一度スライスしてしまうとその日のうちに売り切らなければならない。店としてはリスキーです。人口の違い、市場規模の点で仕方のない部分ではありますね」

一方で魚の多様性に関して、日本より優れている点を石井氏は強調する。「天然のミナミ・マグロはオーストラリアだからこそ食べられるぜいたくな逸品。ミナミ・マグロの季節はちょうど日本の夏に当たるのでしっかりと脂がのったマグロはたいへん重宝されます。日本では1人2~3万円くらいの価格帯のすし店や高級料亭に行かないと食べられません。日本は冷凍ものや養殖ものなど海外産のものが実際は多数を占めていますがオーストラリアはほとんど国産のもので賄えます。こと夏に関してはオーストラリアのほうがおいしいものを食べられると言っていいでしょう」

先にも書いたが石井氏が御三家として挙げるのが南洋金目鯛に加え、この天然のミナミ・マグロ、そしてタスマニア産の紫ウニ(白ウニ)だという。御三家がすべてそろうのは天候的にそれほど多くはないと言うが、時期的には8月から9月にかけての約2カ月間。この時期は積極的にいろいろな店を覗いてみると良いだろう。そして石井氏は現在ミナミ・マグロの熟成ずしを浸透させようと尽力している。日本でも流行りの兆しを見せている熟成ずしがシドニーで試せるのはうれしいところだ。

日本食レストランといえばかつては高級路線の店が多かったが、市場の熟成に伴い、今はリーズナブルで良いメニューを出す店が増えてきている。魚好きには非常にうれしい時代が来ていると言えるだろう。

ブルー・フィン・ツナの大トロやホッキ貝なども刺身用に並ぶように
ブルー・フィン・ツナの大トロやホッキ貝なども刺身用に並ぶように
ハマグリのような感じで食せるピピ貝
ハマグリのような感じで食せるピピ貝
活きたウニもよく店頭に並んでいる
活きたウニもよく店頭に並んでいる
活きたロブスターなども購入することができる
活きたロブスターなども購入することができる
ワタリガニやロブスター、エビなどは生のものだけではなくはゆでられた状態のものも売られている
ワタリガニやロブスター、エビなどは生のものだけではなくはゆでられた状態のものも売られている
パック詰めのウニもよく店頭に並ぶようになった
パック詰めのウニもよく店頭に並ぶようになった

取材協力

ジョージ・コスティ氏(クラウディオス)
ジョージ・コスティ氏
(クラウディオス)
石井誠人氏(ピアモント・シーフード)
石井誠人氏
(ピアモント・シーフード)
木村大郎氏(クラウディオス)
木村大郎氏
(クラウディオス)
桜井光春氏(デ・コスティ)
桜井光春氏
(デ・コスティ)
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料理をおいしく美しくする
匠の技が光る「日本製の包丁」

料理に良質な食材が必要であるのと同様に、そのおいしさを料理人の存在抜きに語ることはできない。そして彼らの経験や勘を支える「道具」もまた、不可欠な存在だ。とりわけ料理の出来を左右するのが、包丁。そこで海外輸出において右肩上がりで成長中の高品質な日本製の包丁に注目したい。

外国人シェフもが日本の包丁を愛用するその理由は、やはり何と言っても「切れ味」の違いだ。ヨーロッパの包丁が「力を入れて叩き割るように切る」ように作られているのに対し、素材を美しく切るために独特の製法で作られてきた日本の包丁は「力を入れずに切る」のが当たり前。道具としての日本の包丁が磨かれてきた背景には、多様な食材を使い、見た目にも繊細な料理が多い和食文化がある。

和食と包丁の「切っても切れない」関係

「鼓丸」のオーナー兼すし板前・長島氏
「鼓丸」のオーナー兼すし板前・長島氏

「Knives and Stones」ショールーム

「Knives and Stones」ショールーム

和食の達人たちにとって“良い包丁”とはどんな存在なのか。シドニー北部、ニュートラル・ベイの日本料理店「鼓丸」のオーナー兼すし板前・長島氏いわく「包丁は妻や家族の次に大切な伴侶」。日本各地の他、シドニーで料理人として腕をふるい続けてきた長島氏は「素材に合った包丁を使うことが、料理に違いを生みます。例えば、刺し身などそぎ切りをする場合は、両刃より片刃の方が、角が立つように均一に引けるので見た目も美しく、また食べた時の舌触りが良いのでおいしく感じられます。一方、大きさをそろえたい野菜などは両刃の方が均一に切りやすく、これにより味のしみ込みにムラがなくきれいに仕上がります」と語る。

良いものを大切に、長く使うために

料理の見栄えだけでなく味をも変える、包丁。厨房に立つならば最適な包丁選びはもちろん、刃や柄のこまめなメンテナンスも重要だ。シドニーで日本製の刃物と砥石を扱う「ナイフ&ストーンズ(Knives and Stones)」では、玄人向けの他、一般家庭用にも幅広く製品を販売している。また、刃の欠けやひずみなど自力では難しい修理にも応じてくれる他、包丁を使うために重要な『研ぐ』というメンテナンス作業も請け負い、「一度研ぎに出すとスッと刃を滑らせただけで切れるようになります」とオーナーのジェームズ氏は話す。

長年使用した包丁は柄の部分の木が腐食したり、割れたり、また柄自体が手の圧力で細くなってしまう場合もある。和包丁は元から柄の取り替えを前提とした作りになっているが、実際自分で柄を入れ替えるのは至難の業。そんな時にもナイフ&ストーンズは頼りになる存在だ。セント・ピーターズにある同社のショールームには日本屈指の包丁や砥石が並び、良い道具を大切に長く使う本物志向の人にうってつけだ。


■Knives and Stones ■所在地: Unit 2, 2 Bishop St., St Peters NSW ■Tel: (02)8599-0898 ■Web: www.knivesandstones.com ■Email: sales@knivesandstones.com ■営業時間:月~金10:30AM~4PM(要予約)■取り扱いブランド:正本総本店、堺孝行、スケナリ、田中、佐治作、黒崎など


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