持続可能な洋服の楽しみ方を目指す スロー・ファッション(QLD)

© Undress Pty Ltd trading as Lána 持続可能な洋服の楽しみ方を目指す スロー・ファッション
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写真撮影の現場で楽しそうにポーズを取るLánaのスタッフ。後方右から2番目がエダ・ハマー氏

今の時代、ショッピングに出掛ければ安価な値段で手軽に洋服を買うことができる。トレンドの商品や気に入った物を買って、ショッピング・センターを後にするのはとても良い気分になるものだ。1着だけ買うつもりでも、気が付けばもっと多く買ってしまうことや、頻繁に洋服を購入しても、いざという時に着る物が見つからないという経験がある人も多いのではないだろうか。一度使ったきり押し入れにしまわれたままになったり、捨ててしまう物もあるだろう。そこで最近注目されているのが、使い捨てになりがちな傾向の洋服に対し「洋服を着る」という日常の行為そのものを見直すことを提唱するスロー・ファッション。スロー・ファッションとは何なのか。ブリスベンでそうしたファッションに関わる人びとやブランドを紹介する。(取材・文=フリアン・ロドリゲス・カンポス)

スロー・ファッションをめぐる動き

スロー・ファッションとは

トレンドの新商品を「大量」かつ「安価」に次々と生産しては消費者にいち早く提供するファスト・ファッション。その対極にあるのがスロー・ファッションだ。それは、社会と環境への影響を意識しながら着る洋服を選び、責任を持ってファッションを楽しむということ。少ない量で、質の高い洋服を着ることを勧めるのがスロー・ファッションの本質で、ワン・シーズンだけでなく、同じ物を長く使い続けることが大切だという考えに基づいている。

Suitcase Rummage

@suitcaserummages Suitcase Rummageのブース出店者
@suitcaserummages
Suitcase Rummageのブース出店者

スロー・ファッションの取り組みの1つに、洋服を繰り返し使うことが挙げられる。中古の洋服を選ぶのは、手軽に洋服を繰り返し使用できる方法の1つだ。ブリスベンで毎月第1·第3日曜日にブリスベン・スクエア図書館横の広場で開催されている「Siutcase Rummage」は、中古の洋服やその他さまざまなアイテムが売買されるイベントだ。同イベントは、洋服に限ったものだけではないが、ブリスベンで中古の洋服の交換が最も活発に行われている場と言っても過言ではない。とても気軽に参加できるイベントで、出店者はウェブサイトで申し込み、割り当てられたブースに売りたい品物を入れたスーツケースを持ち込んで販売する。現金での販売や、他の商品との交換が可能だ。不要になった洋服や小物を売って、お小遣いを手に入れられる。もちろんお客として各ブースを見て回り、交渉しながら洋服やアクセサリー、その他掘り出し物探し、楽しむこともできる。さまざまな品物を大切にしてきた人びとと触れ合える価値のあるイベントとなっている。

Suitcase Rummage
■住所:266 George St., Brisbane
■Web: www.suitcaserummage.com.au
■Email: suitcaserummage@gmail.com
■Facebook: Suitcase Rummage

© Undress Pty Ltd trading as Lána  2月にゴールドコーストのLost Palms Brewing Companyで行われた公開イベントで衣料シェアリング・エコノミーを推進するハマー氏
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2月にゴールドコーストのLost Palms Brewing Companyで行われた公開イベントで衣料シェアリング・エコノミーを推進するハマー氏
© Undress Pty Ltd trading as Lána Lánaでユーザー登録したら、レンタルしたい洋服を見つけ必要な日にちを設定。あ
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Lánaでユーザー登録したら、レンタルしたい洋服を見つけ必要な日にちを設定。あ

注目の人・ブランド

Lána

ブリスベン出身のエダ・ハマー氏は、今年1月に洋服をシェアできるインターネット上のプラットフォーム「Lána」を立ち上げた。同ウェブサイトでは、貸し出したい洋服を登録して、一度貸す度に報酬がもらえる。気に入った物があれば、他のユーザーから借りることももちろん可能だ。レーティング制なので、他のユーザーの評価を確認しながら安心して利用できる仕組みとなっている。ブランドのキャッチフレーズは「Uber is for cars. Airbnb is forhomes. Lána is for your clothes」。他者の車を利用できる「Uber」や個人の家に泊まれる「Airbnb」と同じ感覚で、他者の洋服を利用できるのが「Lána」だ。他人との服の貸し借りというのはあまりなじみのない概念かもしれない。気が引けると感じる人もいるかもしれないが、Lánaの魅力を幾つか紹介しよう。

© Undress Pty Ltd trading as Lána メンズの洋服はまだ少ないがユーザー数が増えればもっと多く見れるだろう
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メンズの洋服はまだ少ないがユーザー数が増えればもっと多く見れるだろう

まず、旅行時に荷物を軽くできるということだ。数カ月単位の旅行の場合、荷物がかさばるのは避けられない。しかし、Lánaを利用すれば、最低限の洋服だけを持ち、他に必要な物があったら現地の人から借りられる。特に旅行中の場合、ドレスやスーツが思いがけず必要になることもあるかもしれない。そうした洋服が必要になった時にサイズの合う物を予約できれば持ち運びの心配や手入れの心配をしなくて済む。荷物が少なくても着る服に困らないというのはとても魅力的だ。洋服を買って帰りの荷物が膨らむという事態も避けられる上に、洗濯の手間も不要。ちなみに、洋服の洗濯に関しては、貸し出した持ち主が負担することになっている。つまり借りる場合、洗濯の心配は無用だ。

創業者のハマー氏はブリスベンで立ち上げられた、持続可能なファッションを促進するためのファッション・ショー「Undress Runways」の主催者でもあり、2013年からスロー・ファッションの促進・意識の向上に努めている。ハマー氏が指揮するランウェイでは、専属のデザイナーによるオリジナルの洋服が披露される。16年にはシドニーやメルボルンにも展開。ランウェイのためにデザインされた洋服は、VIHNというオリジナル・ブランドで販売されている。Lánaのウェブサイト上では、VIHNのオリジナル商品も貸し出されている。今年ようやく発足したものの、現在まだレパートリーが少ないのが現実だ。メンズの洋服は特に少なく、少しずつ増えているもののまだ範囲が広くない。これからのブランドの発展に期待が寄せられる。

Lána
■Web: www.lana.global
■Facebook: 「Lána」で検索

Textile Beat

©2018 - Textile Beat ファッション・レボリューション週間(4月23日~29日)に先立ちウーロンガッバで行われたワークショップの風景
©2018 – Textile Beat
ファッション・レボリューション週間(4月23日~29日)に先立ちウーロンガッバで行われたワークショップの風景

次に紹介するのは、ブリスベンに拠点を置く「Textile Beat」。2013年にジェーン・ミルバーン氏によって立ち上げられたスロー・ファッションを促進するための団体だ。ファッション・レボリューションと呼ばれる活動団体の一員でもある彼女はスロー・ファッションのパイオニアと言われている。中古の洋服の再利用を促すSuitcase Rummageとは違うアプローチで、使われなくなったり、ほつれたりした洋服を自分で手直ししたり、リメイクすることを勧めている。裁縫のスキルや洋服のリメイクの仕方を教えるワークショップを開催することで知られている。個人や団体に向けて定期的にスロー・ファッションを日常生活で実践するためのワークショップを開催し、依頼があればオーストラリア国内各地、海外でも講演やワークショップを開催している。興味があれば、ぜひ同団体のイベントに足を運んでみて欲しい。

Textile Beat
■Web: www.textilebeat.com
■Email: jane@textilebeat.com
■Facebook: Textile Beat

次世代のファッション

近年、新しい発想やビジネス・モデルでファッション界を変えていこうとする運動が盛んになる一方、ファスト・ファッション業界も労働を改善・公開することで存続を図っている。

ブランドごとに労働状況など数々の基準を基に評価されるシステムが「Baptist World Aid Australia」によって開発され、これまで利用してきたブランドがどの位置にいるかを消費者が簡単に把握できるウェブサイトが作られた。その名も「Ethical Fashion Fast Finder」だ。スロー・ファッションの哲学に近付こうという姿勢を見せるブランドを容易に見つけられるウェブサイトだ。Aを最高にFまでの評価があり、一目で分かるようになっている。これが持続可能なファッションへの答えかどうか疑問が残るものの、労働条件や環境への配慮などが第三者から評価されることでファスト・ファッションを取り巻く環境の改善は図れるだろう。自分のスタイルを大きく変えずにより経済的な買い物を重視する人にとって、有力なオプションの1つとも言える。次にショッピングに行く前に、好みのブランドをEthical Fashion Fast Finderで検索して見るのも良いだろう。

ブリスベンで開催された「TEDxKurilpa」でエダ・ハマー氏はスロー・ファッションについてこうメッセージを寄せた。「今、あなたはどんな服を着ているだろうか? その洋服がどこで作られたか知っているだろうか? 今あなたが持っている洋服のタグのほとんどに、中国やバングラデシュで作られたということが記されている。毎朝服を選ぶ時に、自分の服がどこで作られたか、環境にどう影響しているのか意識してみよう。身にまとっている洋服が良い影響を広げることにつながると思えれば、きっと良い気分で1日のスタートを切れる」

©2018 - Textile Beat リメイクされた洋服を背景に微笑むミルバーン氏
©2018 – Textile Beat
リメイクされた洋服を背景に微笑むミルバーン氏
© Undress Pty Ltd trading as Lána Lánaでレンタルした洋服を身にまとう創業者のエダ・ハマー氏
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Lánaでレンタルした洋服を身にまとう創業者のエダ・ハマー氏
© Undress Pty Ltd trading as Lána 4月の新着のドレス。特別な夜にレンタルしたいパーティー向けの洋服がたくさん用意されている
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4月の新着のドレス。特別な夜にレンタルしたいパーティー向けの洋服がたくさん用意されている
© Undress Pty Ltd trading as Lána Lánaはプロフィル画像のサポートとして写真撮影のサービスも行っている。ユーザー名ナディンさんのドレスの投稿もLánaによる撮影だ
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Lánaはプロフィル画像のサポートとして写真撮影のサービスも行っている。ユーザー名ナディンさんのドレスの投稿もLánaによる撮影だ
© Undress Pty Ltd trading as Lána 数少ないメンズの衣装の1つのオーバーオール
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数少ないメンズの衣装の1つのオーバーオール
© Undress Pty Ltd trading as Lána 市内でバンド演奏の日にLánaを利用してVIHNのスカートとトップをレンタルしたアイラさん(中央)
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市内でバンド演奏の日にLánaを利用してVIHNのスカートとトップをレンタルしたアイラさん(中央)
©2018 - Textile Beat 昨年12月にシドニーで行われた、ジェーン・ミルバーン氏が執筆した『Slow Clothing: finding meaning in what we wear』の発売イベントでワークショップを楽しむ参加者たち
©2018 – Textile Beat
昨年12月にシドニーで行われた、ジェーン・ミルバーン氏が執筆した『Slow Clothing: finding meaning in what we wear』の発売イベントでワークショップを楽しむ参加者たち
©2018-Yan Chen-Suitcase Rummage ブリスベン・スクエアで定期的に開催されるSuitcase Rummageの様子。誰でも気軽に立ち寄り参加できる
©2018-Yan Chen-Suitcase Rummage
ブリスベン・スクエアで定期的に開催されるSuitcase Rummageの様子。誰でも気軽に立ち寄り参加できる

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