ゴールドコースト市・日本人プロ・ライフガードの素顔


朽木豊さん、27歳

将来は日本のライフガード発展に貢献したい

GC市プロ・ライフガード朽木豊さん

 いくらオーストラリアが多国籍文化の国だといって も、英語が母国語でない多くの日本人にとって、オー ストラリア社会に溶け込み、オージーたちと全く対等 に働いていくのは簡単なことではない。文化や慣習の 違いを理解し、オーストラリア社会の一員としての経 験を積んでもなお、この国で生まれ育ったオージーた ちよりも努力が必要だと実感することも多い。今年27 歳の朽木豊(くちき ゆたか)さんは、ゴールドコース ト(GC)市から市の職員として給与が支払われる、プ ロのライフガードとして働いている。

 

ライフガードへの道のり

  ライフガードになるための道のりは「それはもう、 大変でした」という朽木さん。初めて来たころは英語 も全く分からず、苦労の連続だった。

 朽木さんが最初にオーストラリアにやって来たのは 10年前。まだ高校生だった朽木さんは、交換留学プ ログラムで1週間のホームステイを経験した。その後 2003年に地元の神奈川県鎌倉で高校を卒業し再来豪、 GCで語学留学を始める。「カリフォルニアへも遊びに 行きましたが、僕にはのんびりとしたGCの方が魅力的 に見えました」

 そんなある日、かつて朽木さんの父親が日本でのラ イフセービングの発展に貢献したメンバーの1人だっ た縁で、06年にAPOLA(オーストラリア・プロ・ライフ ガード協会)会議に招待された。朽木さんは通訳代わ りに会議に出席したが、その時にライフガードという 職業に初めて興味を抱いたと言う。


この日はバーレー・ヘッズ・ライフセービング・クラブでパドルボードのトレーニング

 そして、軽い気持ちでフィットネス・テストを受け てみたところ、一発で合格を果たしてしまう。「もと もと、鎌倉にいたころからサーフィンばかりしていた ので、泳ぎと体力には自信はあったんです。でも、き ちんとしたトレーニングは何もしたことがなかったので、テストでは酸欠 状態になり、実はホ テルに戻ってからも しばらく気持ちが 悪くて大変でした (笑)」。その後は とんとん拍子にカ ジュアル・ライフガー ドとしての職を手に 入れることとなった。

  仕事もどんどん増えてきて、オージーばかりの環境 で働くことにも慣れてきたころ、朽木さんはこのオー ストラリアで永住権を取ることを真剣に考え始める。 「ところが、残念ながらライフガードの仕事は、技術 者移住の職業リストにありませんでした」。そこで、 今までやってきたライフガードの仕事を一時中断し、 TAFEに通ってシェフとして勉強しながら永住権を目指 す道を選択する。

 「この間に筋肉もかなり落ちてしまいました」とい うが、いよいよ永住権も取得でき、再びライフガード の仕事に復帰することができたのは、最近のことだ。 「筋肉がついてくるまで、しばらくはトレーニングで 筋肉痛の日々です(笑)」

 ところが、今度は仕事がなかなか回ってこない。「1 度現場を離れてしまったので、以前のようには仕事が ありません。これからまた、一から積み上げていくし かないですね」。

 

ライフガードになってよかったと思う時

  あまり知られていないが、オーストラリアでは「ラ イフガード」と「ライフセーバー」には少々違いがあ る。ライフガードというのは市の職員として雇われ、 プロとして1年を通して海の安全を守る仕事。ライフ セーバーというのは、地域のサーフ・クラブなどに所属 し、週末や祝日、暖かいシーズンなどにボランティア としてビーチをパトロールする仕事のことを指す。

 当然、朽木さんのように市民の税金から給料をも らって働くライフガードには重責がのしかかる。「市 民の方に税金ドロボウと言われたり、この仕事を理解 してもらえない時は辛いと思うこともあります」。


同僚のオージー・ライフガードと

 屈強のオージーたちに囲まれて、ライフガードとし て対等に働いていくのも簡単なことではない。「くだ らない会話を皆がしている時に、自分だけ話に入れないということもやはりあります。でもそれは割り 切って、胸を張ってやっていくしかないと思っていま す」。確かにここで生まれ育ったオージーたちより も、仲間として受け入れられるまでに時間がかかるこ とは多い。「割り切ってやり過ごせば、時間はかかっ ても徐々に仲良くなっていくものですから」。

 特に海で日本人観光客の助けになれた時に、この仕 事をやっていてよかったと思うと言う。「人命救助だ けでなく、何かトラブルがあった時にオージー・ライフ ガードと日本人観光客の間に入って、双方の意思の疎 通に役立てたりすると本当に嬉しく思います」。

 まずは、現在のカジュアルというポジションではな く、ライフガードとしてフルタイムの正規職員になる ことが今の目標。そして将来は、まだオーストラリア のような海を巡る環境が整っていない日本で、1年を通 して海を守る専門職である「ライフガード」という職 業の発展に貢献していくのが夢だと言う。

 

海の安全について

  最後に、観光客だけではなく在豪の日本人社会全体 にも、海に関連したルールをもっとよく知ってほしい と言う朽木さん。「この国にいる以上、やはりこの国 の海のルールを尊重しなくてはいけないと思います。 とにかく皆さんにもっとルールを知っていただきたい し、海での事故が1つでも減るよう気を付けて行動して いただきたいと思います」。

 

【海の安全ルール 全部知っていますか?】

■旗
・右の赤&黄色の2色の旗と旗の間で泳ぐこと ・赤だけの旗が立っている時は泳がないこと ・黄色だけの旗が立っている時には、流れが速いのであまり遠くへ行かずに
気を付けて泳ぐこと

■泳ぐ時の基本ルール
・ライフガードやライフセーバーのいないビーチで、1人で泳がないこと ・食事の直後や酒に酔っている時には泳がないこと ・もしカレント(潮の流れ)につかまってしまったら、パニックにならずに手を上げて救助してほしいとライフガードに訴えること。逆らって泳ぐと体力を消耗するだけなので、斜めに横切るように泳ぐこと ・足がつってしまってもパニックにならずに、手を上げて救助を待つこと

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