震災復興支援イベント「絆」

※本紙(QLD版)2月号にて、本文の記載に一部誤りがありました。ここに訂正をし、謹んでお詫び申し上げます。

ブリスベンで建築とアートの視点から震災復興を考えるイベントを開催

東日本大震災からもうすぐ4年。人々の記憶に天災の脅威をとどめ、被災地復興への想いを継続し繋げていくためのさまざまな活動は、今なお各地で続いている。2月にクイーンズランド工科大学で開催される国際交流基金の海外巡回展、「3.11ー東日本大震災の直後、建築家はどう対応したか」と「デザイン・フォー・グレイビング・メモリアル・アンド・キズナ」は、建築とアートという独自の視点から、被災者の心に寄り添いながら復興への試みを追求するユニークな企画だ。人々の復興への想いの絆を深め、その想いと絆を未来へつなげるためのアイデアとエッセンスを表現したこのイベントの概要を、主催者のインタビューとともにお届けする。
取材・文=パティスン美幸

3.11ー東日本大震災の直後、建築家はどう対応したか

HOW DID ARCHITECTS RESPOND IMMEDIATELY AFTER 3/11?

震災直後、全国で多くの建築家たちが立ち上がった。彼らが被災者の心に寄り添いながらアイデアを出し、現実に行った活動や将来における構想を3段階に分けて紹介している。第1段階は、避難所での緊急措置など最初期の取り組み、第2段階は仮設住宅、第3段階は本格的な復興計画となっている。さらに海外から寄せられたアイデアについても紹介する。

■会場:クィーンズランド工科大学 ガーデンズ・ポイント・キャンパス デザイン学部 ■日時:2月2日(月)〜20日(金)10AM〜5PM 会期中無休 ■料金:無料 ■共催:在ブリスベン日本国総領事館・国際交流基金 Web: www.brisbane.au.emb-japan.go.jp/jp/

デザイン・フォー・グレイビング・メモリアル・アンド・キズナ

Design for Grieving, Memorial and KIZUNA

上記イベントの関連プロジェクトとして、今年1月に発足したプロジェクト・グループ、Art for bright future(詳しくは右記)が主催する作品展。複数の作品を、「失われた街 模型復元プロジェクト」、「Emergency Shelter Exhibition」、「Installation Art for Tohoku」の3つのテーマに分けて展示し、紹介する。

■会場:クイーンズランド工科大学 ガーデンズ・ポイント・キャンパス デザイン学部 2 George St., Brisbane ■日時:2月2日(月)〜20日(金)10AM〜5PM 会期中無休 ■料金:無料

シンポジウム

自然災害で得た教訓から、オーストラリアと日本の未来、また子どもたちに何を残すのかをともに考える。

■会場:クィーンズランド工科大学 ガーデンズ・ポイント・キャンパス デザイン学部 メイン・レクチャー・シアター(有料駐車場完備) ■日時:2月6日(金)6PM〜 ■料金:$30(前売り$20)■定員:230名 ■申し込み:www.artforbrightfuture.com ■問い合せ:info@artforbrightfuture.com

パネリスト
・槻橋修
(神戸大学大学院工学研究科建築学専攻 – 准教授)

・坂口潤
(Jun Sakaguchi Architect – シドニー在住建築家)

・嘉住直実
(シアトル大学芸術学部 – 教授)

・ポール・サンダース
(クイーンズランド工科大学 デザイン学部 学部長・教授)

・アンドリュー・ウィルソン<予定>
(クイーンズランド大学 建築学部 講師)

・鈴木幸
(グリフィス大学 環境デザイン学科)

槻橋修

神戸大学大学院工学研究科建築学専攻 – 准教授。1968年富山県生まれ。京都大学卒業、東京大学大学院博士課程単位取得後退学。2002年にティーハウス建築設計事務所を設立。東北工業大学建築学科講師を経て2009年より現職。建築設計、アーバンデザインのほか、『建築ノート』誌など、メディア制作にも携わる。2009年に日本建築学会賞(教育)共同受賞、2014年に第40回放送文化基金賞とグッドデザイン賞を受賞。

坂口潤

シドニー在住建築家。ロンドン生まれ。2001年にシドニーに移住し、PTWアーキテクツでのキャリアをスタート。その間、アジアや中東におけるさまざまな計画を手がけ、ニューサウスウェールズ大学、シドニー大学、椙山女学園大学にて講師・審査員などを歴任する。シドニー、ブリスベン、メルボルンの三大都市にて開催された「Emergency Shelter Exhibition」では、発起人兼主催者代表を務める。

嘉住直実

シアトル大学芸術学部デジタルデザイン学科-教授。インスタレーションアーティスト&グラフィックデザイナー。京都に生まれ、佛教大学社会福祉学部卒業後、プロスキー実業団所属、1995年に渡米。オレゴン大学芸術修士号取得後、シアトル大学芸術学部就任。寺院や屋内外での追悼の空間アートの研究制作を中心に、芸術を通じて東北の復興活動に参加。現在シアトルを拠点として国際的に個展やグループ展を行い活躍中。

主催者インタビュー

復興への希望に向けて、
真に求められるデザインと芸術を追求

Art for bright future代表 堀口英人さん

日本とオーストラリアに在住する建築家や芸術家たちが、復興への希望を形にして次の世代へとつなげていくことを目的に、今年の1月に発足されたプロジェクト・グループ、Art for bright future。同グループの代表の堀口さんに、彼らが今度主催するイベント、「デザイン・フォー・グレイビング・メモリアル・アンド・キズナ」について話を伺った。

堀口さんは、日本とオーストラリアにデザイン会社を構えて国際的に活躍する建築デザイナー。同氏は、両国を頻繁に往来しながら年間100を超えるプロジェクトの模型や完成予想図を手掛ける多忙な日々を送っている。プロジェクトの内容も、施設や街並みの基本デザインからお土産グッズのデザインまでと幅広い。一方、クィーンズランド大学では、水・観光・アートを共通のテーマとしながら「国際観光文化都市を目指す水都大阪と、リゾート地から国際リゾート都市としての再生に期待するウォーターフロント・ゴールドコースト」などといった題材を扱う講義を展開し、関西とクイーンズランド州間の経済と文化の交流にも尽力してきた。

そんな堀口さんが、Art for bright futureを発足したきっかけは何だったのだろう。

すでに国際交流基金の海外巡回展『3.11東日本大震災の直後、建築家はどう対応したか』の開催を決めていた在ブリスベン総領事館の町田首席領事から、同巡回展のテーマに則した新イベントを立ち上げる話があることを伺いました。その後、首席領事の取り計らいでブリスベン在住の日本人建築家を集めてくださり、私の提案を知っていただく機会が設けられました」

イベントの準備を進める中で、ブリスベンやゴールドコーストに住むさまざまな日本人たちと出会う機会があった。

「こちらに在住の日本人の方の中にも、東日本大震災や阪神淡路大震災によって、今もなお辛く苦しい想いを抱いておられる人々がおられました。故郷が震災の被災地だという人、またご親族の家が津波で流されたと語る人たちです。そんな皆様からも、復興に向けた切なる想いを直接感じることができました」

寄せられる多大な期待と支援に感謝しながら、復興イベントをブリスベンで開催することの意義を再確認できたと言う。

Art for bright futureとしての活動は今回が初めての試み。現在の心境と今後の活動について聞いてみた。

「準備を進める段階で、状況に応じて物事に柔軟に対応していくことの大切さを感じました。人々から真に求められ、認められるべきデザインや芸術を追求しながら、さまざまな立場の人たちの思いや考え、豊かなアイデア、優れた才能を、未来の街づくりに具体的に繋げていくことが肝要だと思います。そのためには、行政やあらゆる分野の専門家なども交えながら、継続的な支援展開を推し進めていく役割をArt for bright futureが担えるようになりたい。そんな思いが日に日に強くなっております」

建築は、私たちの生活に密着したものでありながら、大規模なプロジェクトのほとんどは一般には公開されずに専門家たちによってのみ開発改良が進んでいく分野とも言える。暮らす人や利用する人をサポートしたいとデザインに挑むArt for bright futureの誕生に、これからも大いに期待したい。

●プロフィル 堀口英人
京都府出身。1999年、日本で建築デザイン会社「トライアード」を創業。現在、株式会社トライアード代表取締役社長。2007年にはオーストラリアに建築デザイン会社「GEOMODELS & DESIGN PTY LTD」を設立し、Managing Directorに就任。大阪商工会議所会員、京都商工会議所会員、クイーンズランド日本商工会議所会員(西日本交流担当)、関西日豪協会会員、ナレッジサロン会員。

堀口氏による作品解説

3人の日本人建築家、芸術家たちが発信する各プロジェクトの作品内容について、堀口さんに解説していただいた。

失われた街 復元模型プロジェクト

「被災者の記憶や残された貴重な記録をたどって、被災前の街を再現したものです。被災後の街の映像と比較してご覧ください。再び同じような惨劇を起こさないため、豊かな街づくりを進めるため、行政、建築家、異なる立場の専門家たちは何ができるのでしょうか」

Emergency Shelter Exhibition

「緊急時に、素早く安全な空間を確保するためのシェルターに関する展示です。比較的に調達しやすい身近な材料を使ったり、シンプルなピースの組み合わせを意識することで、特殊な工具を使わなくてもシェルターを組み立てることが可能になるという見本です」

Installation Art for Tohoku

「悲しみや追悼を表現した空間アート作品です。残された人たちの行き場のない深い悲しみ、形のない生命の波動を、アートという手段を通して開放することで、その人たちの気持ちが癒され、さらにそこから復興への希望を見い出せることを願って作られています」

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