ビビッド・シドニーに初参加「白根 昌和」さん

白根昌和さん

ビビッド・シドニーに初参加、未来に羽ばたく日本人空間デザイナー

最新の3DやITテクノロジーを利用してシドニーの街がさまざまなデザインのイルミネーションで飾り付けられるビビッド・シドニー。現実がまるでいきなりファンタジーの世界に変化したのかと疑うほど、その煌びやかな世界に魅了される。オーストラリアを代表するこの祭典に、今年日本人の空間デザイナー白根昌和さんが出展。イベントの紹介とともにインタビューをお送りする。Photo & Text by Moto

今年で7年目を迎える、光と音の祭典としては世界最大のイベント、ビビッド・シドニー。昨年度は観光客を含め140万3,000人が参加したという。テーマは光、音、アイデアという3本軸で、主催はNSW政府観光局とデスティネーションNSW。今年は一層内容が充実・拡大し、音楽ライブはオペラハウスだけではなく、キャリッジ・ワークス、ザ・スタジオ、ジョーン・サザーランド・シアターなどの会場でも開催。無料で行われるライブも多数ある。ジャンルもクラシックからロック、ジャズ、ラップ、アフリカン、ダンス・パーティーまで多種多様(詳細はWeb: www.vividsydney.comで)。音楽部門のキューレーターであるスティーブン・フェリス氏のお薦めは、6月8日にコンサート・ホールで行われる最終日を締めくくるにふさわしいパフォーマンス「TV オン・ザ・ラジオ」である。

また、各会場ではグローバルな視点をテーマとしたオーストラリアで成功を収めたビジネス家のトーク・セッションや、IT産業の将来性に関するレクチャーなども行われている。子ども向けのアトラクションも多く幅広い層が楽しめる企画が満載だ。また今年新たにチャッツウッドのザ・コンコースでは海をテーマとしたイルミネーションが6月8日まで午後6時~深夜0時まで観られるようになった。

ビビッド・シドニー最大の演出はさまざまな色、デザインに七変化するオペラハウスだ

そして今年、特に注目したいのが光のテーマの1つとしてサーキュラ・キーで参加している空間デザイナー、東京在住の白根昌和さんの作品「ライト・オリガミ」。その魅力はどこにあるのか。インタビューを通して探っていきたい。

白根さんの作品「ライト・オリガミ」。ヒーリング・サウンドが何重にも飛び交う構造が光とのコラボレーションによって幻想的な世界へと導いてくれる癒しの空間

「今回の作品は人が入れる万華鏡」

──大学時代には学校を入りなおすなど紆余曲折あったそうですが、卒業後はどのような活動をされていたのですか?
「卒業後、3カ月間ロンドンでインターンシップ生をやった後、7年間フリーランスとして活動していました。就職も思うようにいかなかったのですが、諦めずに作品作りをずっと続けていました。その後、JIA(日本建築家協会)から奨学金をもらい、2014年にマドリッド欧州大学のプログラムでマドリッド、サンディエゴ、上海でそれぞれ3カ月の修士コースを学びました。それらの活動を通してブランディングの大切さを知りました」

 

──時間はかかったものの得るものは大きかったと。
「はい。また、自分なりの建築のスタイルも見えてきました。そんな中、神戸ビエンナーレでの作品「ウィンク・スペース」を海外のコンペティションに応募したところ、国内だけでなく海外でも数々の賞を頂きました。

 

──今回の作品の内容について教えてください。
「作品のコンセプトはインタラクティブな設計をデザインすることです。一般的に建築科では私たちがやりたいデザインを学びます。しかしそれは建築家のエゴだと疑問を感じました。使う人が自由に使えて、それをどう使ってもらえるかに興味がありました。人の活動がデザインをする、そういうことを僕はインタラクティブととらえています。そして方法論として折り紙を活用しています。小さく折りたためる、つまり完成後海外への輸送も簡単にできるのではないかと考えました。今回の作品は人が入れる万華鏡、中で動けば動くほどデザインが変わることに着目しました」

 

──インタラクティブな設計をモットーにされている理由は何でしょうか?
「今まではメディアからの情報をトップダウンで利用していましたが、今はSNSが主流になるなど、情報網が変わってきています。自分発信ができる時代にインタラクティブな設計は合うと思いました。今回のドームは多くの人が入れば入るほど、良いデザインになると思います。発信する人が多いほどおもしろい。それと同じです」

 

──ビビッド・シドニーへの参加の経緯を教えてください。
「ウェブサイト上の作品をきっかけに、昨年9月にメールで招待を頂きました。そして公益財団法人・野村財団から助成金を頂けたことで実現可能となりました。多くの人の協力で今回の作品が実現でき、とても感謝しています」

 

──オーストラリアの印象はどうですか?
「人が優しいです。自然と建物が混在していて僕たちは地球に住んでいるのだなと感じます。都会もありバランスが取れていますね。シドニーは訪れるというより住んでみたい場所ですね」

 

──今後の活動について教えてください。
「アートではなくデザインがしたいです。大切なのは自己満足なアートではなく、使う人のためにデザインをすることです。空間設計の経験を生かし、食べることも大好きなのでレストランの設計をしてみたいです。え、何ここ?っていうおもしろい空間を作るのが夢です」

 

──初めてのシドニーということですが、もしお気に入りのスポットができていれば教えて頂けますか?
「パブはサーキュラ・キーにあるロード・ネルソン・ホテル。レストランはクローズネストにあるブラジリアン・グリルのBAHBQが気に入ってます」

こういう一本筋の通った日本人デザイナーの海外での活躍は我々日本人にとっても誇りであろう。アメリカ、ドバイでも出展経験のある白根さんには現在、海外からのオファーが殺到している。

ぜひAMPビルの正面に展示されている彼の作品を訪れ、人の動きによってデザインされるというコンセプトを体感してほしい。万華鏡をイメージしたドームの中での記念撮影もいいかもしれない。そしてその感想を世界へと発信してもらえればと思う。

新たにイルミネーションの場所として加わったチャッツウッドの発表会で今年の意気込みを語ったNSW州のスチュワート・エイヤー大臣

今回、イベントについて話を聞いたビビッド・シドニー・ミュージックのキューレーター、スティーブン・フェリス氏。オーストラリアで最もキャリアの長いDJでもある重鎮

Profile♦︎白根昌和(通称KAZ)
 尊敬する祖父が工具屋だったことから小さいころから物づくりをそばで見て育った。建築の世界を知ったのはガウディーの本に感動した小学4年生のころ。某美術大学に入学するも疑問を感じ、休学して再受験、東京芸術大学建築学科に合格、2007年卒業。今回の出展はAMP社勤務のルーベン・ヤング氏が彼を発掘し、建築業界で有名なグローバル企業ARUP社の協力のもと実現。「彼のような職人技を武器に見知らぬ土地を開拓していけるデザイナーはなかなかいない」と評価も高い。「遠藤照明家具コンペティション」優勝、イタリア「デザイン・アウォード」銀賞など国内外での受賞多数。作品に対するこだわりと正確なものづくりへの信念を武器に日本を代表する世界の空間デザイナーを目指す。

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