オーストラリア政府観光局:アンドリュー・ライリー前日本局長インタビュー

インタビュー

オーストラリア政府観光局:アンドリュー・ライリー前日本局長

豪州の魅力訴求で「第3のブーム」牽引へ

オーストラリア政府観光局(TA)日本局長のアンドリュー・ライリー氏が4月22日、任期満了に伴い退任した。同氏は日本在住歴が長く自他共に認める「日本通」。就任当時、オーストラリアを訪れる日本人観光客数が減少していた中、「日本市場におけるオーストラリア観光業界の復活」をミッションに掲げ、日本向けプロモーション活動を精力的に展開した。そんなライリー氏に、過去3年間の成果を伺った。取材・文・写真=小副川晴香

オーストラリアに日本人観光客が戻ってきた――。オーストラリア政府統計局(ABS)が発表した最新情報によると、今年2月にオーストラリアを訪れた日本人渡航者数は、前年同月比33.1%増の4万2,200人で2月単体では過去最高の伸び率を記録した。1月は前年同期比24.2%増の2万4,600人だった。

日本政府観光局(JNTO)の発表によると、2015年の日本人出国者数は前年比4.1%減の1,621万2,100人と依然として厳しい状況だ。しかし、渡豪者数は昨年9月以降、平均18%増加し、6カ月間連続でプラス成長を続けている。こうした快挙の背景には、ライリー氏率いるTAの地道なマーケティング活動があった。

オーストラリアを訪れる日本人渡航者数は、1990年代後半には年間約80万人を超えた。だが、需要の縮小や航空路線の減便を背景に、2000年代以降は長期的な低迷が続き、現在はピーク時のほぼ3分の1の水準に落ち込み、かつてのような勢いはない。だがライリー氏は就任当時、「渡豪者数を向こう3年で50万人に回復することは可能」と意欲を示した。

日本人にとってオーストラリアは、治安が良く大自然豊かな国というポジティブな印象はあるものの、リピーター率はこれまで高くはなかった。こうしたジレンマをどのように払拭したのか――。

――日本人の年間渡豪者数は?また、日本人に人気の都市は?

15年にオーストラリアを訪れた日本人渡航者数は、33万5,500人でした。ゴールドコーストやケアンズ、シドニーが人気ですが、最近ではメルボルンを訪れる日本人も増えています。ジェットスター航空が14年4月、メルボルン~成田直行便を就航したことで、メルボルンへの渡航者数が増えました。

――オーストラリアを訪れる日本人が増えた理由は?

やはり、昨年8月にカンタス航空がシドニー~羽田線とブリスベン~成田線を、更に12月には全日本空輸(ANA)がシドニー~羽田線を開設し、航空座席の供給数が大幅に拡大したことが挙げられます。

また、TAや各州政府観光局は継続的にプロモーション活動を実施しました。これにより、オーストラリアにある19の世界遺産をはじめ、クオリティーの高い食やワインなどの認知度が飛躍的に向上。都市と大自然の両方が楽しめる旅行先としてオーストラリアの魅力が再認識されたこともあるでしょう。

――確かにカンタス、ANAが相次いでシドニー~羽田線を開設したことは、在豪日本人にとっても大きなニュースでした。

オーストラリアと日本を結ぶ航空路線の供給数の減少は、大きな課題の1つでした。例えば、ANAのオーストラリア路線は、日本人観光客市場の縮小を背景に1999年に廃止。共同運航便も01年に提携先だったアンセット航空破たんに伴い運航を停止し、オーストラリア路線から完全撤退していました。

また、09年にはカンタス航空がパース~成田線を、10年には日本航空(JAL)がブリスベン~成田線を廃止するなど、航空各社による相次ぐ直行便の廃止や減便により、座席供給数が減ったことで訪問者数も減少傾向が続いていました。こうした中、新規路線が次々と就航したことは追い風になりましたね。

――その他にもTAはプロモーション活動を積極的に行ったそうですね。

我々は日本向けに独自のプロモーション・キャンペーンを展開しました。これまでTAは、世界共通のグローバル・キャンペーンをベースにプロモーション活動を行ってきましたが、日本の消費者にオーストラリアをアピールするには、現地マーケットに根ざした徹底的な広告、PR戦略が不可欠です。

TAではグローバル・キャンペーンのテーマとして「食とワインの魅力」に注力。我々は、同じテーマを基に日本に合った形でプロモーションを行ったのです。

――具体的にはどんなプロモーションを展開しましたか?

食文化が非常に発達している日本で、「食とワインがおいしいオーストラリアへお越しください」とアピールしてもピンとこないでしょう。実際にどこで、どんな食事が、どんなロケーションで体験できるかを具体的にイメージしてもらうよう工夫を凝らしました。

カンタス航空との共同プロモーションでは、シドニーのオペラ・ハウスとハーバー・ブリッジを背景に、アウトドアで景色を楽しみながらピクニックを楽しめること、カフェ文化が根付くメルボルンでは、地元の人に混ざってカフェでコーヒーが楽しめるなど、各都市でさまざまな食文化が体験できることを視覚で訴えました。

また、心理的にオーストラリアをもっと身近に感じてもらえるよう、広告にはオーストラリア人ではなく等身大の日本人モデルを起用しました。これまでのコアラやカンガルーを見て大自然に触れる、といったいわば2次元的な旅行から、食を満喫する体験型の3次元的な旅行ができることをアピールしたのです。

――そういった広告はどこで見られるのですか?

主に女性誌に広告を打ち出しました。雑誌だと美容院やネイル・サロンなどに長く保管されることから、より多くの人に見てもらえる機会が増えるという狙いがありました。さらに直近の例では、今年4月に東京メトロ(銀座線、丸の内線、東西線、千代田線、半蔵門線、有楽町線)での車内ビジョンをはじめ、駅コンコースでの柱巻きで、お薦めの観光スポットを紹介しました。

――食に関するプロモーションは他にもありますか?

昨年、「クックパッド」や「食べログ」と連携し、オーストラリアの食とワインの魅力をアピールしました。「クックパッド」では昨年5月29日より、「オーストラリア観光局の公式キッチン」を開設。ラム肉やフィンガー・ライムなどオーストラリアの食材を使ったレシピを紹介し好評でした。

一方、「食べログ」では、オーストラリアにあるレストランを紹介するアプリを新設しました。現地在住者がお薦めするレストラン情報も合わせて検索できるので、旅行中はもちろん、旅行を計画中の人にとても有益なツールです。オーストラリアにお住まいの皆様には、ぜひお薦めのレストランを登録していただけるとうれしいですね(笑)。

――そういった日本向け独自のマーケティング活動が功を奏したのですね。

他にも、SNSなどオンラインにも注力しています。現在、TAが運営する日本語のFacebookページ(Web: www.facebook.com/AustraliaJP)は18万人以上のファンがいます。他の外国政府観光局が運営する日本語のFacebookページと比べ、約2倍のファン数を獲得しています。

――今後、日本人渡豪者数はさらに増加していくでしょうか。

昨年9月以降、渡豪者数は前年同月比で平均2ケタ増と好調ですので、17年初めには直近1年の渡豪者数が40万人に達成できるのでは、と予想しています。

――それは楽しみですね。今後の活動方針は?

我々はこれからも積極的なプロモーション活動を継続し、日本におけるオーストラリアへの“サード・ウェーブ”(第3のブーム)を牽引したいと考えています。

現在、航空会社や旅行会社、州政府観光局をパートナーに、オーストラリアの上質な旅を訴求する「私のイチオシキャンペーン」の下、さまざまなプロモーションを展開中です。私自身は4月末で退任しますが、今後もTAは積極的なプロモーションを通じオーストラリアの魅力を訴求していきますので、ご期待ください。
(4月4日、東京都千代田区TAオフィスにて)

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