在シドニー日本国総領事、竹若敬三氏着任インタビュー

在シドニー日本国総領事、竹若敬三氏着任インタビュー

「日本の魅力や実力をしっかりと発信していきたい」

10月30日にシドニー入りした在シドニー日本国総領事館、竹若敬三新総領事。これまでどのような経歴を持ち、また今後どのような活動を展望しているのか。その人となりと併せて話を聞いていく。(インタビュー・写真=馬場一哉)


──来歴を拝見すると、実に幅広くさまざまな分野でご活躍されてきたことが分かります。これまでの具体的な活動内容を改めて伺えますか。

「まず時計の針を10年前くらい戻してもよろしいでしょうか。2007~11年まではニュー・デリーの日本大使館で経済公使を務め、インドへの日本企業の進出やインドに対する経済協力全般を統括していました。インドとEPAを結んだのもこの時でした。その後フィリピンのマニラで総領事を務めさせて頂き、マニラでの邦人保護など各種サービスに努めておりました」

──その後、国際協力機構(JICA)の総務部長へと転身されていますね。

「はい。インド、フィリピンでの開発業務に続き、総務部長として全体を統括職務に就いておりました。JICAは全世界に90カ所以上の拠点を持っておりますし、青年海外協力隊を毎年1,000人ほど、累計では4万人以上送っています。人の派遣や受け入れなどの仕事は大変ですがやりがいのある仕事でした。また、日本国内にも北海道から沖縄まで支部が14カ所ありますので、地方の国際化のため足しげく通いました」

──日本国内を北から南まで回るのはなかなか大変だったのではないでしょうか。

「ええ。ですが、他では得難い経験をできたと思いますし、私は現場が大好きなので苦にはなりませんでした。日本の魅力や実力を発信する際に必ずしも東京が主役ではない、地方にしかない魅力がたくさんあるということは、今後もしっかりと発信していきたいと思っています」

──すばらしい視点だと思います。その後国際協力局ではNGO担当大使をなされていますが、こちらでもJICAの延長線上の仕事になるのでしょうか。

「国際協力局では政府開発援助(ODA)を行っていますが、私が担当していた地球規模課題は噛み砕いて申し上げますと復数国家間における保健、防災、環境などの開発課題です。国連で2030アジェンダという30年までに世界が進む方向を決める開発目標が合意されました。これは先進国、日本もオーストラリアも取り組まないといけないもので、そういった課題に対する国内体勢を立ち上げることが必要です。
 その問題の中には例えばジェンダーも入っています。日本はジェンダーに関しては世界で101番目と非常に遅れているため、安倍首相も現在積極的に取り組む姿勢を見せています。そんな中、近年外務省が意識しているのがNGOとの関係性です。NGOの方が政府の代弁をする、政府がNGOの代弁をするということはもちろん無いですが、今は同じ机に着いて政策に関する対話をするという時代になっています。そういった部分の連携を行ってきました」

──海外勤務が続き、その後国内を細かく見られ、今度はシドニーと再び海外ですね。

「そうですね。今度は海外から日本とつながることになりますが、私としては、ぜひ日本との交流強化をしていきたいと考えています。人の交流や絆というのは国と国との関係を引き寄せる非常に大きな要因ですし、今までの経験で言いますと、例えばインド人は日本が大好きな人が多いのですが、これもインドと日本の深い交流に端を発しています。オーストラリアの場合は経済的な結びつきは既に非常に強いものがあるので、私としては文化、スポーツ、日本語の面で交流強化を発信していきたいと考えています」

──日豪関係の強化、期待しております。加えてシドニーの総領事館としての役割という点についてお話を伺わせてください。

「総領事館の基本的な業務は邦人保護です。これは最重要のことです。3万2,000人という多くの邦人がいらっしゃるシドニーで皆様が安心と安全を享受できるように精一杯務め、そのために地方政府、場合によっては他の方面にも積極的に働きかけていきたいです。シドニーには全豪州の経済界の人たちの中でも最大規模の商工会議所がありますし、皆様がお困りの際の相談や情報収集の面で日本企業の支援を行いたいです。企業支援はインド駐在の時にもしておりましたが、丁寧にお話を伺うのが基本だと心得ております。そのためにも、皆様には総領事館の敷居は非常に低いものだと思っていただければと考えております」

──企業の支援に加えて永住者などを含めた日系コミュニティーのサポートもぜひお願いできればと思います。

「もちろんです。シドニー日本クラブなど永住者のコミュニティーの皆様とも今後さまざまな場を持たせて頂く予定でおります。永住者の皆様は駐在員の皆様以上に長くいらっしゃる方でございますし、より長い視点で物事を見られていると伺っておりますので、やはり丁寧にお話を拝聴したいと思っております」

──来られてまだ数週間ではありますが、実際に住まれてみてシドニーの印象はいかがですか?

「非常に洗練された町だなと思います。町全体の美意識が高いと感じています。他方、交通渋滞は聞いてはおりましたが予想以上で驚いています。ですが、公共交通はなかなか便利だと思います。道や乗り換えなどが分からない場合でも人びとは非常に親切ですし、やはり観光都市だけあって訪問者に対するホスピタリティーは高いレベルにあると感じました。また、これは街の印象からは少し変わりますが、州政府が非常に強いと感じております」

──それはどのような点から感じられましたか?

「具体的な例では東京に州政府の事務所があることに対して驚きました。州の知事や首相、大臣の方がインフラ事業に巨額の予算を投じることができているのはやはり州の権限が強いのだなと思います」

──なるほど。ところで竹若総領事の学問の面でのご興味などがありましたら教えて頂けませんか。

「専門的に研究しているわけではないですが、日本の明治維新以来の歴史が科学的に解明されていないということへの問題意識を以前から持っています。私は福岡出身なのですが、佐賀県鍋島藩は幕末にオランダから技術を学んで非常に短期間で、軍艦作りなどを実現しています。その遺跡は現在佐賀藩主鍋島直正の進めた近代化事業としてユネスコの世界遺産になっています(編注:三重津海軍所跡)。他の国ではなかなかうまくいかず、実現困難な西洋の技術をあっさりと取り入れ成功した秘訣が何かというと実は科学的に解明されていません。
 開発というのは失敗の積み重ねなんですよね。試行錯誤の上で開発があるわけです。例えば日本の鉄道の幅は非常にユニークなんですね。新幹線は他の国と同じですが在来線は狭い。作りやすい、メンテナンス・コストも低いなどといった理由から大激論の末にそうなったわけです。
 日本は絶えず正しい答えを見つけてきたわけではないのですが、結果的にはうまくいっている。膨大な人口を抱え、どうやってそれを実現してきたのか。これはみんなが頑張ったという単純な精神論ではありません。日本の成功の秘訣を科学的に見てそれを開発に適用したら良いのではないかと思います。
 これは、私だけが言っているものではなくJICAの中で持たれている問題意識でもあります。これはいろいろな地方を見ていかないと分からないものなのではなかろうかと思います。日本人は自分自身のルーツをよく調べないといけない。こうした科学的な研究は豪州の人も好きかもしれないなと期待しております」

──最後にプライベートについて少しお聞かせください。ご趣味で山登りをされるとか。

「はい。昔はよく山登りをしておりました。オーストラリアには山登りが好きな人がたくさんいて、例えば日本の黒部など奥地にも結構出かけていると聞いております。そういう方々と出会えるのが楽しみです。ぜひ知識を共有できたらと思っています」

──何か新たにチャレンジしてみたいことはありますか?

「こちらではランニングが盛んだと聞いています。シティー・トゥ・サーフなどのランニング・イベントにチャレンジしたいなと思っています」

──最後に、読者に向けてひと言いただけますか。

「総領事館としては敷居を低くして少しでも皆様のお役に立てるようにサポートして参りたいと考えております。オーストラリア、シドニーという所は日本にとって非常に大事な場所でございますので、交流をますます強化していきたいと考えております。どうぞよろしくお願いいたします」

──本日はお忙しい中、ありがとうございました。

(11月17日、在シドニー日本国総領事館で)


竹若敬三氏(たけわか けいぞう)
福岡県出身。一橋大学法学部卒業。1960年12月21日生まれ。84年外務省入省後、アジア大洋州局、国際情報局、経済局を経て2005年、在イタリア日本国大使館・参事官に。07年在インド日本国大使館・経済公使、11年在フィリピン日本国大使館・政務公使を経て12年、同総領事兼次席公使に。13年に国際協力機構(JICA)総務部長、15年には国際協力局地球規模課題担当審議官としてNGO担当大使、世界エイズ・結核・マラリア対策基金理事を務めた。16年10月末、在シドニー日本国総領事に着任。

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