オーストラリアの「牛肉」事情に迫る2017版(おいしいレストラン情報付き)①

(Photo: Naoto. Ijichi)
(Photo: Naoto. Ijichi)

オーストラリアの「食」と聞いて、真っ先に思い浮かぶのはやはり「オージー・ビーフ」ではなかろうか。日本では「オージー・ビーフ」と言えばいわゆる赤身肉のイメージが強いが、実際には多種多様なさまざまな種類の牛肉が店頭には並んでいる。その中には赤身肉もあれば、サシの多く入った脂身の多いもの、更には当地でも高級な肉として認知を広げているWAGYUもある。世界的ブランドとして知られる「オージー・ビーフ」、本特集では2017年現在の実態に迫っていく。取材・文=馬場一哉、写真=伊地知直緒人

グラス・フェッドとグレイン・フェッド

硬めの赤身肉。オージー・ビーフにはそのようなステレオ・タイプのイメージが付きまとうが、実際、古くから好んで食されてきたのもそのようなタイプの牛肉だ。元々国土の半分が亜熱帯性気候のオーストラリアでは、昔から暑さに強く、肩の部分に大きな隆起のあるコブウシと呼ばれる牛が育てられ、主要なたんぱく源として重宝されて来た。だが、コブウシは牧草育ちであることに加え、元々肉質が硬いことでも知られており、よく焼かないとあまりおいしくないと言われている。そうしたこともあり、オーストラリアでは赤身肉をウェルダンで食べるというイメージが付いたのだろう。

だが、食習慣の変遷に伴い、現在、市場には多岐にわたるさまざまな種類の牛肉が出回るようになっている。QLD州にレンジャーズ・バレー牧場という広大な牧場を有し、4万2,500頭の牛を穀物肥育する日系の総合商社・丸紅オーストラリア(以下、丸紅)副社長及び食料部長の安田哲郎氏(以下、安田氏)は言う。「赤身肉を好んでいたというよりも、かつてはそれしかなかったというのが正直なところでしょう。しかし、食文化の多様化に伴い、穀物肥育の霜降り(サシ、マーブリングとも呼ばれる)が入りやすい肉が多く生産されるようになりました。一度おいしいものを食べると元には戻れないというのは世界共通。オーストラリア国内でも例にもれず、高い価格帯のサシの入った肉が広く流通するようになったわけです」(安田氏・丸紅)

丸紅のレンジャーズ・バレー牧場産のWAGYU。サシがたっぷり入っているのが分かる
丸紅のレンジャーズ・バレー牧場産のWAGYU。サシがたっぷり入っているのが分かる
広大なエリアで大規模に肥育されているレンジャーズ・バレー牧場の牛(丸紅)
広大なエリアで大規模に肥育されているレンジャーズ・バレー牧場の牛(丸紅)
ワイアラ牧場で牛を管理している様子(日本ハム)
ワイアラ牧場で牛を管理している様子(日本ハム)

丸紅ではそうした食文化の変遷に合わせ、肉質のきめが細かい牛を穀物肥育(グレイン・フェッド)し、市場に出荷している。「レンジャーズ・バレーでは、ブラック・アンガスを通常の約3倍の期間に当たる270日と長期間にわたる肥育を行っています。また、より高級な黒毛和種など(日本で「和牛」と呼べる牛の一種)とブラック・アンガスやホルスタインとの交雑種WAGYU(編注:WAGYUの詳細については後述)も育てておりそちらは更に長く360日の肥育期間を設けています」(安田氏・丸紅)

牛の種類に続いて牛肉を選ぶ際の指標の1つとなるのが、牧場で放牧されて育ったグラス・フェッドか、穀物を食べて育ったグレイン・フェッドかという点だ。一般的にはフィードロットと呼ばれる囲いで仕切られたエリアで育ったグレイン・フェッドが、脂がしっかり乗るため、人気も高いが、一方で、近年の健康志向もあり、グラス・フェッドの赤身肉も人気を盛り返している。

日本でも近年、手軽にワインや小皿料理を楽しめるバルと呼ばれる店舗形態のレストランが流行に敏感な若者を中心に流行っているが、そうした店舗ではワインに合う肉としてオーストラリア産の赤身肉を提供するケースが増えているという。そのような状況から現在オージー・ビーフは大きく3つにカテゴライズされると、日本国内食肉加工最大手・日本ハムの、豪州現地法人・オーストラリア日本ハム(以下、日本ハム)取締役の鳴海秀一氏(以下、鳴海氏)は話す。日本ハムもまたオーストラリア国内にワイアラ肥育牧場、シーライト牧場と2カ所の牧場、及び3ヶ所の処理工場を有している。「1つ目は昔から存在している一般的なグラス・フェッドの赤身肉を中心とした商品。2つ目はアンガスやWAGYUなどの長期肥育により霜降りがしっかりと入った商品。そして3つ目がアンガスのような高級な英国種を使ったグラス・フェッドです。高級なグラス・フェッドは健康志向の人に人気が高く、ホルモン・フリー、オーガニックなどといった付加価値と共に市場に出回っています」(鳴海氏・日本ハム)

高級グラス・フェッドの多くは滋養の高い牧草が生えるとされるビクトリア州やタスマニア州、ニュー・サウス・ウェールズ州などで育てられており、品質の良いものになると牧草育ちにもかかわらずサシが入っているものもある。「グレイン・フェッドの肉は世界中で食べられますが、高級なグラス・フェッドの肉は他ではなかなか食べられないのでオーストラリアにいあるからには一度試してみて欲しいですね」(鳴海氏・日本ハム)


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