オーストラリアの「牛肉」事情に迫る2017版(おいしいレストラン情報付き)②

(Photo: Naoto. Ijichi)
(Photo: Naoto. Ijichi)

高騰する牛の価格

日本では豚肉や鶏肉などに比べ、牛肉には高級なイメージが付きまとうが、オーストラリアでは取り立てて大きな違いはない。だが、近年牛肉の価格は高騰を続けているという。「実は子牛の価格が2014年から高騰しているんです」と安田氏は話す。「これは私の推測ですが資源バブルなどで多くの人が良い肉を食べるようになったのでしょう。需要が増えたことで12~13年に掛けて農家が大量に牛を出荷してしまったんです。ご存知の通り、牛は生き物ですからオーダーが入ったからといってすぐに作れるものではありません。当たり前ですが、メス牛がいないと作れないんですね。しかし繁殖のために取っておかなければならないメス牛までも出荷してしまい、メス牛が少ない状況となりました。それを元に戻すにはどうしても時間が掛かります。メス牛が生まれ、子どもを持つようになるまで少なくとも2年半~3年ほどの時間が掛かります。その間、牛を増やしたくても増やせないという状態でした。それもあって価格は高騰を続けています」(安田氏・丸紅)

シドニーの人気精肉店「ビクター・チャーチル」のヘッド・ブッチャー、ダレン・オ・ルーク氏(ビクター・チャーチル)うした高級肉の需要の高まりに対する問題
シドニーの人気精肉店「ビクター・チャーチル」のヘッド・ブッチャー、ダレン・オ・ルーク氏(ビクター・チャーチル)

国内需要に加え、オージー・ビーフの人気の高まりから輸出の需要も増加しているという。「中国、韓国、シンガポール、タイ、ロシアなど世界各国でWAGYUを始め、高級肉のニーズが高まっているので苦しみながらも増やしているような状況です。ただ、需要が高まっているからといって、ただいたずらに数を増やせばいいわけではありません。どんなに良い餌でしっかりと育てても、元の牛の質がダメだとなかなか良いサシが入らないので、若い牛選びは慎重に行わなければなりません。牛の場合、屠畜(とちく)加工(編注:牛を食べられるように処理すること)してみるまでその肉質が良いかどうかは分からないわけです。屠畜加工の際に質が低ければ、それまでの肥育の努力が水の泡となってしまいます」(安田氏・丸紅)

屠畜された牛は清潔な工場で丁寧に処理される(日本ハム)
屠畜された牛は清潔な工場で丁寧に処理される(日本ハム)
サシの入り具合をチェックする(日本ハム)
サシの入り具合をチェックする(日本ハム)

こうした高級肉の需要の高まりに対する問題点として、オーストラリア国内でWAGYUを始めとした牛肉や豚肉など種類豊富な肉の販売を行う大沢エンタープライズ(以下、大沢)代表の大沢紀三夫氏(以下、大沢氏)はこう話す。

「現在、オーストラリアWAGYU産業が直面している問題として、繁殖における素牛価格の高騰、穀物価格の高騰が挙げられるわけですが、それにより肥育期間の縮小がほとんどの生産者の間で起きています。この傾向は短期・中期における品質低下、具体的に言うとマーブル・スコアの低下につながります」(大沢氏・大沢)

大沢氏いわく、この状況は2~3年は続くのではないかという。

なお、世界各国で豪州産の高級肉の需要が高まっている中、日本では豪州産の高級肉はニーズが低い。日本国内ではオージー・ビーフと言えば依然、赤身肉のイメージが強く、サシが入っているものを求められていないからだという。詳しくは後述するが仮に豪州産の高品質のWAGYUを日本に輸出してもただ高いオージー・ビーフとしてしか売ることができないということも原因として挙げられるであろう。


オーストラリアの「牛肉」事情(1/3)▶▶▶ オーストラリアの「牛肉」事情(2/3)
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