オーストラリアの「牛肉」事情に迫る2017版(おいしいレストラン情報付き)③

(Photo: Naoto. Ijichi)
(Photo: Naoto. Ijichi)

豪州産WAGYUとは何なのか?

豪州産WAGYUとひと口に言っても「和牛」由来の種を100パーセント受け継ぐフルブラッドと、アンガスなどと掛け合わせた交雑種など血の濃さによってクオリティはまちまちだ。もちろん、フルブラッドが最も高品質でクオリティーは「和牛」と同等、当然ながらかなり値も張る。

そもそもWAGYU、和牛と書き分けている理由だが、これは和牛の定義に寄るものだ。和牛という名は日本国内出生、国内で飼育された牛にしか付けることができず、海外で育った牛は和牛とは呼ぶことができない。そのため、英語表記を余儀なくされているわけだが、品質の高低こそ牛によって異なるものの基本的には近いレベルのものと言って差し支えないだろう。

この豪州産のWAGYUの認知度は年々上がってきており、大沢氏のところにも輸出の問い合わせが数多くあるという。

ブラックモアやレンジャーズ・バレーなど、オーストラリアを代表するWAGYUもずらりと並ぶ(ビクター・チャーチル)
ブラックモアやレンジャーズ・バレーなど、オーストラリアを代表するWAGYUもずらりと並ぶ(ビクター・チャーチル)
店頭には肉以外にも、さまざまな商品が並んでいる
店頭には肉以外にも、さまざまな商品が並んでいる
高級ブティックなども立ち並ぶウラーラの目抜き通りに店を構える(ビクター・チャーチル)
高級ブティックなども立ち並ぶウラーラの目抜き通りに店を構える(ビクター・チャーチル)

「4~5年前まではブラック・アンガスが一番のグレードでしたが、今はWAGYUが一番のグレードとして認知されるようになりました。実際世界中から毎週のように問い合わせがあります。WAGYUの人気はこれからも伸びていくと思いますが、品質向上、安定供給、価格がネックになってくるでしょう」(大沢氏・大沢)

オーストラリア国内でも、スーパーや町中のブッチャーでもWAGYUが販売されるシーンを目にするようになった。

「豪州国内でのWAGYU人気の高まりに貢献したのはハンバーガーではないか」と大沢氏は話す。確かにハンバーガー専門店でWAGYUという文字を目にする機会は少なくない。また、街中のパブでもWAGYUステーキを提供しているところもある。だが、前述した通り、フルブラッドではなくともWAGYUと呼ばれるため、実際どの程度、和牛の種が入っているかは分からない。そこで覚えておきたいのが交雑種の呼び名だ。

フルブラッドWAGYUとアンガスをの掛け合わせた第1世代をF1(生物学用語でFはFilial=雑種世代の意味)と呼び、血の濃さは当然50%となる。F1を更にフルブラッドの和牛と掛け合わせればF2となり、血の濃さは75パーセント。そのようにかけ合わせて行くことでF3(87.5パーセント)、F4(93.75パーセント)と濃度が高まっていく(一方でフルブラッドWAGYUではない別の牛と掛け合わせることで血はどんどん薄くなっていく)。

なお、オーストラリア国内で最も高級なフルブラッドWAGYUとして知られるのはデービッド・ブラックモア。後述する精肉店「ビクター・チャーチル」などで購入することが可能だ。また、ブルー・マウンテンの麓のメガロン・バレーでは日本人の鈴木崇雄氏(ベルツリー・オーストラリア)がフルブラッドのWAGYUを肥育しており、大沢氏が扱っている。シドニー北部ノース・ブリッジにある日系のスーパー・マーケット「東京マート」などで購入可能なので覗いてみてはいかがだろうか。

なお、本特集では言及しないが、海外産のWAGYUが日本の和牛の立場を脅かす結果にもなっており、その点で日本の畜産業界は戦々恐々としている。

牛肉の選び方

牛肉を選ぶ際にはまずは購入する部位を決めることになるだろう。それぞれの部位の特徴に関しては別途まとめているのでそちらを参照して欲しい。部位を決めたらコブウシなのかアンガスなどの英国種か、あるいはWAGYUかなど、まずは牛の種類、次にグラス・フェッドなのかグレイン・フェッドなのかなど飼育環境、更には牧場の場所などについて目を向けると良い。先述した通りグラス・フェッドであればビクトリア州、タスマニア州など南のエリアのものを選ぶのが得策だ。

その上で牛肉の選ぶ際の判断基準となるサシの入り具合を示す指標を覚えておきたい。日本ではBMS(Beef Marbling Standard)と呼ばれる「脂肪交雑」を評価するための基準があり、サシの細かさによってランクが分けられているが(全12ランク)、オーストラリアでも同様にMSA(Meat Standards Australia)という指標があり、0~9までの全10ランクに分けられている。数字が高ければ高いほど霜降り具合も高く、高級な肉とされ、9よりも更にサシが多い場合には9+と表示される。日本のBMSと混同されがちだが、全く別の指標となるので混同しないように気を付けたい。

さて、肉をこだわって購入するのであればやはり精肉の専門店に足を運ぶことをお勧めしたい。そんな中、ブラックモアやレンジャーズ・バレーなど高級なWAGYUを購入するのであれば、シドニー東郊の高級住宅街ウラーラにある「ビクター・チャーチル(Victor Churchil)」に足を運んでみて欲しい。ここでは日本でも人気の熟成肉(Aged Beef)なども売られ、また肉だけではなく惣菜やパン、ケーキなども購入できるため非常に便利だ。内装なども非常に洗練されていることから、海外からわざわざ訪れる客も少なくないという。

また、シドニー・フィッシュ・マーケットの中にある「ビックス・ミート(Vic’s Meat)」も品ぞろえが多く人気が高い。レンジャーズ・バレーの肉はここでも購入可能だ。

「オージー・ビーフ」の故郷、オーストラリアにいる以上、やはり知識をしっかりと持った上でおいしい牛肉を食べたいものだ。本特集で得た知識を持って、ぜひレストランだけでなく精肉店にも足を運んでみて欲しい。

なお、次ページからはおいしい肉が食べられるシドニーのお薦めレストラン8店を紹介。そちらも併せて参考にしてもらえればと思う。

◆ 牛肉の部位を知ろう ◆


日本のスーパーでは、「すき焼き用」「ステーキ用」「しゃぶしゃぶ用」「煮込み用」など使用用途によってパックされて売られていることの多い「牛肉」だがオーストラリアでは部位の名称で売られていることがほとんどだ。ここでは買い物の際の参考として主な牛肉の部位を説明する。

①肩ロース(Chuck):適度に脂肪が乗った部位で、きめが細かく 柔らかいのが特長。薄切り肉にしてしゃぶしゃぶやすきやきなど幅広い料理に利用できる。

②肩肉(Shank):肉質はやや硬めだが、霜降りの柔らかい部分と赤身の部分があり風味が良い。鉄板焼きやすきやき、煮込み料理などに適している。

③リブロース(Rib):最も霜降りが多く、きめ細かい肉質とやわらかい風味で焼肉の定番。肉そのものを味わうステーキや焼肉料理に向いている。

④サーロイン(Sirloin):ステーキの代表部位。やわらかく脂肪分が少ない肉質で、霜降りが奇麗で大きい。しゃぶしゃぶやロースト・ビーフとしても最適。

⑤ヒレ(Tenderloin):非常に柔らかい肉質で脂肪が少なく上品な味が特徴。牛の枝肉の3%しか取れないサーロイン、ロースと並ぶ高級部位で、ステーキに適している。

⑥ランプ(Rump):肉のきめが細かく非常に質の良い柔らかな赤身肉。脂肪分が少なく、ステーキや焼肉、すき焼き、しゃぶしゃぶなどに合う。

⑦内モモ(Top Round):最も脂肪分が少ない赤身の肉で、あっさりとした風味が特徴。カレーやシチューなどの煮込み料理に適している。

⑧外モモ(Bottom Round):キメが粗くモモより少し硬めの部位で、味が濃い。カレーやシチューなどの煮込み料理にはもちろん、ひき肉にも最適。

⑨バラ(Brisket、Flank):前足に近い「肩バラ(Brisket)」と、後足に近い「トモバラ(Flank)」の2カ所からなる部位。両方とも濃厚な風味で、薄切りにして牛丼や焼き肉用に利用される。

⑩シンタマ(Thick Frank):内モモの下側にある部位で、柔らかくきめの細かい赤身肉。脂肪分は少なく、ロースト・ビーフやタタキに使われることが多い。

取材協力

安田哲郎氏(丸紅オーストラリア)
安田哲郎氏(丸紅オーストラリア)
鳴海秀一氏(オーストラリア日本ハム)
鳴海秀一氏(オーストラリア日本ハム)
大沢紀三夫氏(大沢エンタープライズ)
大沢紀三夫氏(大沢エンタープライズ)

オーストラリアの「牛肉」事情(1/3)▶▶▶ オーストラリアの「牛肉」事情(2/3)▶▶▶
オーストラリアの「牛肉」事情(3/3) おいしい牛肉が食べれる厳選8店 in Sydney▶▶▶

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