出会いから婚姻・育児・離婚まで最新事情をお届け!国際結婚特集2018④

出会いから婚姻・育児・離婚まで最新事情をお届け!国際結婚特集2018④

華やかな結婚生活や国際結婚に憧れを持つ人も多いが、中には止むを得ず別れが訪れ、それぞれ新たな人生を歩むことを選択するカップルも存在する。その際、財産分与や子どもの養育など知っておくべき離婚の準備や手続きについて、万が一の場合に役立つ情報を専門家の解説と共に紹介する。

国際結婚したカップルの離婚

記事協力・監修=山本法律事務所(Yamamoto Attorneys)/山本智子弁護士
離婚部分の作成に当たり本稿に関しては、シドニーで20年の実務経験を持つ山本弁護士のご協力を得て、家族法専門家としての観点から意見を求めた。

国際結婚の難しさ

オーストラリアの法律では、離婚を成立させる際、理由や原因を追求されることがないため、弁護士が離婚手続きの法務遂行依頼を受任する場合、通常そうした理由を聞くことはないという。しかし、カップルが関係を“清算”する際の相談には、「財産分与」「子どもの養育」「配偶者扶助」「社会保障請求の必要性」などの要素が含まれることが多く、その場合の法務遂行では“別れる理由”が重要なポイントになることがあるため、その理由を弁護士に話す必要が出てくるという。

また離婚の際、どちらの国の法律を適用させるのかという点について、どの国においても「法管轄」を満たすための要件が存在するという。オーストラリアの裁判所で離婚手続きを行うためには、離婚申請の提出日に配偶者のどちらかが、以下の3点のうちいずれかを満たしていることが用件の1つとなる。

  1. オーストラリア市民権保持者であること
  2. オーストラリアを常居所地としていること
  3. 申請日より、さかのぼって12カ月間、オーストラリアに在住していること

日本の離婚要件も同時に満たすこともあり得る。両国の申請要件を満たす場合、どちらの国で手続きを行うかは当人同士が決めることとなる。その決定要素には、利便性やコストが挙げられるが、最も大きな決定要素は、それぞれの国の法律の違いによる離婚の効果だろう。一般的なところでは、日本の法律では「離婚の際には親権者を設定すること」だが、オーストラリアでは同様の法律が存在しないので、「親権者設定は該当しない」こととなる。

山本弁護士によれば、常に「国際結婚」の難しさを目の当たりにしてきたという。そして、国際結婚とは「日本人が外国で営む結婚生活のこと」でもあるという。必ずしも夫婦のいずれかが非日本人であることに限らない。問題の原因は、言葉の壁や文化・慣習の違い、自身の家族が身近にいないこと、生活勝手の違い、なじみの薄い社会での疎外感など、さまざまなところに潜んでいるのではないだろうか。

子どもを守る「ハーグ条約」

オーストラリアには、日本でいう「親権」に合致する言葉が存在しない。法律上、子どもは親の所有物ではなく、親は子どもに対して何の権利も持っていないとされる。子どもは「両親から養育される権利」と「両親と関係を保つ権利」を持っており、親が別離したとしても子どもの養育義務は両親共に持ち続けるということが基本的な考え方だ。子どもの基本的な権利が守られているかどうかを確認するのが家庭裁判所の任務となる。

養育に関する争訟(そうしょう)では、具体的にどちらの親がどの義務行為を果たすかを決定させることになるが、裁判所は基本的に、両親の自発性を優先する。そのため、当事者間で解決させるべく、最終審に進む前のあらゆる過程で多種多様の和解手段が用意され勧められている。

また、子どもを一方的に海外に連れ出すことが否定されるのは、親との接触が否定されることが子どもの健康な成長に不利益をもたらすと考えられているためである。その考え方はオーストラリアのみならず、さまざまな国で共有されており、そうした国々で締結されている条約が、いわゆる「ハーグ条約(国際的な子の奪取の民事面に関する条約)」だ。

16歳未満の子どもがその定住国から一方的に他国に連れ出された場合、他国側が定住国に子どもを送り返す責務を負うことが、同条約の趣旨。子どもの養育に関する取り決めは、子どもの定住国で行われるべきだと考えられているため、同条約は子どもを迅速に定住国に返還したり、離れてしまった親との面会交流を円滑に行えるよう、締約国同士が協力し合うためのルールを規定したりするものとなっている。

日本は長い間、同条約の非加盟国だったが、国際結婚の増加に伴い日本人による一方的な子どもの連れ去りが問題視されるようになった。更に他国からの条約加盟への圧力も同時に高まってきた経緯から2014年4月、同条約に加盟した。

オーストラリアでは親権が存在せず、養育義務も両親がそれぞれ持ち続けることが子どもの最大の利益とされているが、子どもと親の関係にはさまざまな事情や背景があり、実際にはその基本見解が覆されることが多々ある。子どもに対する親の暴力行為や近親相姦などの事実はその最たる例だと言える。心理療法士や学校教員の専門的見地、更には年齢や成熟度によっては子ども自身の意見などを根拠に、親との接触自体が心身上不利益をもたらすと認められることがある。

その場合、一方の親が単独で養育義務を持つことになるが、単独とは言っても他方の親との接触を一切断ち切って良いとなるのはごくまれだという。単独の養育義務を持つ親の日本への里帰りは比較的容易だが、他方の親がオーストラリアにいたり、子どもの定住国がオーストラリアの場合、オーストラリアに戻って来ることを担保させるために里帰りの際、預託金などの条件が設けられることが珍しくない。

離婚について考えておくべきこと

配偶者と自身の資産及び負債の詳細を事前に把握しておくことは、財産分与を行う上で大幅な時間と費用の節約となる。

また子どもの養育に関しては、「相手を完全にシャットアウトする」という非現実的なゴールを持たないことが、早期解決への鍵となるそうだ。自身の境遇に合わせた準備を行うためにも、早い段階で弁護士への相談をお勧めしたい。


離婚案件のエキスパート、神林佳吾弁護士に聞く!
プリナップ(婚前契約書)の重要性

婚前契約書――。聞きなじみのない言葉だが、近年では多くのカップルが結婚前に弁護士を介し、これからの結婚生活や、もし離婚するとなった場合の取り決めをし、それらを残しておく書面だという。しかし、実際の重要性やその効力などはどれほどのものなのだろうか。オーストラリアにおける離婚案件を数多く取り扱う神林弁護士に詳しく話を伺った。


神林佳吾(かみばやしけいご)プロフィール◎1980年東京生まれ。95年渡豪、2004年クイーンズランド大学経営学部・法学部、同大学大学院司法修習課程修了後、弁護士登録。以後14年以上にわたって訴訟を中心に応対

――オーストラリアで弁護士になられた経緯と国際離婚についてのキャリアをお聞かせください。

1995年に来豪し、ブリスベンの中学校から大学院を経て、2004年から現在までの間、15年近くゴールドコーストで弁護士をしています。弁護士としてのキャリアは、2003年に司法修習で入った事務所で6年近く企業法務や訴訟を主に取り扱い、2009年に独立してからは、個人案件も多く取り扱うようになりました。

離婚に関しての取り扱いは10年ほどになりますが、前事務所でのキャリアも含めて現在までに300件近く対応しています。

――オーストラリアで離婚案件を扱う日本人弁護士は少ないと伺いました。神林弁護士が離婚案件に携わるようになったきっかけは何でしょうか。

恐らく、オーストラリアで日本人の離婚案件を年間に30件以上取り扱っている日本人弁護士は、私以外にいないのではないでしょうか。他の日本人弁護士の多くがそうであるように、私も弁護士になって4年目までは離婚案件を全く取り扱っていませんでした。私の場合、たまたま当時、顧問をしていた会社のオーナーが財産分与で訴えられてしまい、それが転機となりました。

その案件は依頼者が大きな資産家で非常に高額な係争(けいそう)額だったので、その時点でQLD州最高峰と言われる離婚弁護士の他に3人の弁護士と一緒に弁護士団を組んで応対に当たったのですが、その時のことが今でも私のバックボーンとなっています。

以降、離婚案件に携わるようになり、現在ではオーストラリアにおける日本人の離婚案件では過半数を手掛けているのではないでしょうか。

――国際結婚されたカップルで多い離婚理由を教えてください。

今回は国際結婚特集なので、あまり水を差すようなことは言いたくありませんが、あえて言うと、ほとんどのケースが「経済的な問題」と「家庭を顧みない」のどちらかに該当していると思います。

私の経験則で言えば、「お金」が理由で離婚するカップルが非常に多いと思います。巷(ちまた)では、離婚理由で一番多く挙げられるのが“性格の不一致”だと言われていますが、実際には経済的な事情で意見が食い違うことから不仲になったり、お金がないことで、ゆとりがなかったり、パートナーが家庭を大事にしないこと(浮気を含む)が不満で離婚に至るケースがほとんどです。とはいえ、夫婦仲は平穏でけんかがあるわけでもないのに「愛情が感じられない」という理由で離婚された人の財産分与に関する案件も過去にありましたので、離婚理由は本当に十人十色だと思います。

――「経済的なことで意見が食い違う」とのことですが、具体的にはどのようなことですか。また、離婚を回避する秘訣やヒントは何だと思いますか。

例えば、夫婦のどちらか一方のみが稼いでいるという状況の場合、家庭にお金を入れてくれなかったり、あるいは自分の趣味にはお金を掛けるにもかかわらず、家庭の生活費は渋るなど、収入を夫婦2人で協力して得たものであるという意識が乏しいために、婚姻費用をめぐって言い争いになるケースが考えられます。

また、夫婦で住宅を購入する際、頭金をどちらかの両親が出してくれるというケースがありますが、出してもらった頭金はどちらか一方に贈与してもらった物なのか、あるいは夫婦で返済する必要があるのかなど、その扱いをきちんと取り決めておかなかったばかりに、いざ離婚するとなった際にもめるというケースも多々あります。

更に金銭感覚の違いとして、特に日本人女性の人たちは、スーパーマーケットのチラシを見て特売品や少しでも安い物を購入したり、うまく献立が組み立てられるように奮闘している最中、ご主人はコンビニやガソリンスタンドで1本3ドルの缶ジュースを買っていたりすることなどでしょうか。スーパーマーケットで大きいペットボトルが安い時に買っておいて、家で飲む方が良いのではないかと、私自身も思います。しかし、その辺りは価値観の違いなので、夫婦間でよく話し合うしかないと思います。

私の個人的な意見ですが、離婚問題は虫歯のようなものです。ある一線を越えてしまうと、一時的に痛みが引くことはあっても、放っておいたところで抜本的な問題は自然に解決しないように思います。やはり仲違いする原因は何かあるはずなので、それを取り除かない限り、不仲になりがちな関係は解消できないと思います。

プリナップ(婚前契約書)

――結婚する以前に築いた財産は、財産分与の対象にならないと聞きましたが、違うのでしょうか。

日本では婚姻後に築いた財産のみが夫婦共有財産として財産分与の対象となるため、日本の感覚のままで勘違いをしている人が多いのですが、オーストラリアでは結婚前に築き上げた財産も財産分与の対象となります。お互いの結婚前の財産に大きな差がある場合だったり、ご両親が資産家の場合などは、離婚時に不必要な諍(いさか)いが起きないよう婚姻前に「プリナップ」(Prenuptial Agreement)と呼ばれる「婚前契約書」を認める制度が設けられています。

――プリナップとは具体的にどのような物ですか。また、その重要性について教えてください。

婚前契約書とは、夫婦が結婚するに当たり、それぞれが有する財産の扱いについて取り決めをしておく契約書を言います。本稿では混乱を防ぐため、オーストラリアの婚前契約書を「プリナップ」、日本の物を「婚前契約書」と記載して話を進めていきます。

プリナップを作成するメリットとして、結婚前に法的拘束力のある契約を取り交わすことで、結婚前の心構えや相互理解を深め、より建設的な結婚生活を促すだけでなく、もし離婚になった時のいざこざを防ぐことができます。

――オーストラリアの「プリナップ」は、日本の「婚前契約書」とどう違うのでしょう。

日本の「婚前契約書」は法律に違反しない限り何でも書けますが、万が一カップル間のトラブルや離婚になった時に「覚書」として1つの証拠にはなるものの、法的拘束力を約束する物ではありません。特に無理やり書かされたような書類は法的に全く意味を成しません。

その点、オーストラリアの「プリナップ」は、夫と妻それぞれに弁護士が付いて作成する物なので法的拘束力があり、裁判所が異例の判決を出さない限り有効性が保証されます。ですから、日本の婚前契約書では離婚後に紛争となる危険性を孕(はら)みますが、オーストラリアでは、そのような危険性はないと言えるでしょう。

ちなみに、過去に日本で作成されたプリナップを何通か拝見したことがありますが、結婚前の心構えや相互理解を深めるといった側面では良いとは思うものの、オーストラリアで紛争が起きた場合に何らかの法的拘束力があるかと問われれば、ほぼ全ての内容に疑問符が残りました。

――プリナップ作成の際、書き方にルールのようなものはありますか。弁護士などの専門家に依頼するべきでしょうか。

夫婦となる2人がそれぞれの弁護士からプリナップについて書面でアドバイスを受けて、契約内容を理解している必要があります。「Legal Advice Certificate」と呼ばれる、弁護士からアドバイスを受けた旨の証書を発行してもらう必要があります。

プリナップの書面は簡単な物で20ページから、過去に私が取り扱った案件では100ページ近くになった物もあります。結婚するカップルが弁護士であれば作成できるかもしれませんが、ご自身たちで作成することは無理だと思います。

前述したように、プリナップ自体が何十枚にもわたる契約書であり、また双方に弁護士が必要なので、相応に費用が掛かるものです。とはいえ、離婚後にそうした取り決めを書面にする場合は何倍もの時間と費用が掛かってしまうケースも少なくありません。ましてや、離婚後にもめて財産分与の裁判になるようなケースでは年単位の時間と費用が掛かってしまうので、お互いの関係が良好な時に取り決めておいた方が安心です。

また、プリナップを作成しておくことで離婚時のいざこざや、いがみ合いを避けることもできるでしょう。いったん夫婦仲がこじれて離婚に至った場合、些細(ささい)なことでも相手の言動に腹が立ってスムーズに合意することができないケースは多々あります。

――作成するべきタイミングはいつごろが良いでしょうか。

プリナップ作成のタイミングは2人の結婚の意思が固まったら、早ければ早いほど良いです。結婚式直前になって作成した物は、基本的には無効と見なされます。その理由として、「サインしなかったら結婚が流れてしまうかも……」という状況下で作成しているので、完全に本人の自由意志で作成されなかったと見なされるからです。

過去の判例では、結婚式直前に精神的な圧迫があったとされて、何十件ものプリナップが無効と判断されています。そのため、現在では、結婚式直前のプリナップ作成は弁護士も依頼を引き受けてくれないものです。

――婚前契約書作成後は、どのように保管するのですか。

それぞれの弁護士が原本を保管する場合が一般的です。また、裁判所に登記して、判決としてもらう場合には一部が裁判所のデータベースに記録されます。

クライアントの笑顔のために

――神林弁護士が仕事をする上で、心掛けていることを教えてください。

現在は組織の判断に左右されず、自分自身の判断で仕事をしているので、常に自分が正しいと思うことをするようにしています。

基本的に私は仕事をためないようにしているので、少しでも早く依頼者の不安を和らげることができるよう、なるべくすぐにレスポンスをするようにしています。特に離婚問題で相談に来られる方々は、長い期間にわたって悩まれた上で来所されているので、そうした人たちに「こんなことなら、もっと早く相談に来れば良かった」と、笑顔になって帰って頂けるような対応ができると、私もうれしいです。

――最後に、メッセージをお願いします。

日々の生活や事業を営んでいく中で、皆様に起こり得るさまざまな法律問題について、普段、平穏に暮らしている方々が、ただ法律を知らなかったが故に、思い掛けず不利な立場に立たされてしまうことが簡単に起こり得る世の中であり、弁護士として残念なことだと感じています。

クライアントの方々には思い切って弁護士に相談してもらうことで、心配事が解決し、1歩前に進めることもあります。また、何かを決断する時、事前に法律知識を得て備えておけば、将来の法的トラブルを回避することができるものです。私たち弁護士は法律のプロなので、ぜひとも上手に活用頂ければうれしく思います。

神林佳吾法律事務所
■住所:Q1 609/9 Hamilton Ave., Surfers Paradise QLD
■Web: www.kklaw.com.au
■離婚についてのブログWeb: www.kklaw.com.au/archives/divorce-process.html


カツダ・シナジー・ロイヤーズ、勝田順子弁護士に聞く!
子どもの養育と財産分与の心得

結婚生活が終わりを迎え、いざ離婚となった時に、子どもがいた場合やお互いが蓄えてきた財産などはどのように折り合いを付けていくのだろうか。それぞれにさまざまな取り決めや法律、ルールが定められている。複数の弁護士事務所と協働体制を取り、幅広い分野で専門性の高いリーガル・アドバイスを提供する、カツダ・シナジー・ロイヤーズの勝田弁護士が養育や財産分与に関する法的アドバイスをお届けする。


勝田順子( かつだじゅんこ)プロフィル◎2004年に来豪。シドニー法科大学院卒(Graduate Diplomain International Law)。09年にNSW州弁護士登録。専門分野は労働・雇用法。Katsuda Synergy Lawyers(カツダ・シナジー・ロイヤーズ/Web: www.katsuda.com.au)の代表弁護士。複数の弁護士事務所と協働体制を取り、幅広い分野において専門性の高いリーガル・アドバイスを提供している。また、18年9月にビザ案件のサービス提供に特化するMigration Agencyとして「Katsuda Synergy Migration Pty Ltd」を設立。同社の代表を務める

養育に関する考え方

子どもの養育について、「単独親権」を採用する日本と、「共同親権」の立場を取るオーストラリアでは考え方が異なります。離婚を機に「子どもを日本に連れて帰りたい」「父親または母親に会わせたくない」「自分の方針で子育てをしたい」といった希望があっても、共同親権制度の下では、DVなど子どもの利益に反する懸念がない限り、単独での養育は容認されません。

日本の場合「単独親権」

片親が単独で親権者になる単独親権を採用しています。これは、結婚が破綻(はたん)した後、子どもが両方の親と日常的に会い続けるのは、子どもの心をかき乱し、精神的混乱を来すという考え方に基づいています。親権を失ったもう一方の親は、面会交流の時間が与えられるにとどまります。

オーストラリアの場合「共同親権」

離婚後も子どもの養育の責任と義務は両方の親にあるとした上で、監護者やそれぞれの親が子どもと過ごす時間を決める仕組みになっています。これは、両方の親と健全な親子関係を保つことが、子どもにとっての利益になるという考え方がベースにあり、離婚後も親子関係、更には両方の親族との関係を築くことが重視されます。

ハーグ条約とその正しい知識

ハーグ条約は子どもをめぐる国際的な法的手続きの規定で、作成された背景には国際結婚の増加に伴い、結婚生活が破綻した際、一方の親がもう一方の親の同意を得ることなく子どもを自分の母国へ連れ出し、もう一方の親に面会させないという「子どもの連れ去り」が問題視されるようになったことがあります。同条約自体は1980年に作成されましたが、日本においても国際結婚の増加に伴い、外国で婚姻生活が破綻した日本人が、同条約に日本が批准していないことを理由に子どもと共に日本へ一時帰国することができないような問題が生じました。そうしたことを無視できなくなり、日本は14年に同条約の批准に至りました。

ハーグ条約は「子どもの親権をどちらが取るか」を決めるものだというのは誤解です。同条約は「子どもの親権」を決めるものではなく、子どもの居住国で、きちんと法的手続きを取るための手続きを行う規定です。離婚後にどちらの親が子どもの監護をすべきかの判断は子どもの元の居住国で行われるべきであるとの考えから、原則として、まずは子どもを元の居住国へ返還することを義務付ける手続法の役割を担っています。

夫婦が別れる場合には、「きちんと子どもの将来のことについて話し合う」ことが、子どもの福祉にかなうという考え方が背景にありますが、離婚などで両親が争っている時、片親がもう一方の親に黙って勝手に子どもを連れ去ってしまうことはあってはならないということです。

同条約が管轄権を決定するだけのものである以上、その決定は迅速にすべきであり、ハーグ条約が6週間以内に元の居住国への返還を決定するよう求めているのは、そのような趣旨があるからです。

ハーグ条約をめぐるトラブル

婚姻関係の破綻後、もう一方の親が反対しているのに子どもをオーストラリアから連れ出すと、ハーグ条約上の「子の連れ去り」と捉えられます。この場合、反対する親が同条約下で有効な返還命令を裁判所から取るなどの紛争が起こることが考えられます。

オーストラリアの家族法と日本のそれとは子どもの養育について考え方が全く違うため、日本法の下で協議、裁判を行いたいと願う親にとっては、同条約があるためにオーストラリアが管轄権を持つことを問題に感じる人もいるでしょう。ただ、返還命令の多くは、オーストラリアに残った親が面会交流を求めるもので、非親権者の親が親子関係を何とか維持したいとの願いから監督権や親権まで争うことはまれです。

ハーグ条約に批准していない国へ向けて出国する際のトラブル

子どもがオーストラリア国外に出国すると、国境を越えて連れ戻したり面会することが困難になるため、子どもが出国する前に、空港で足止めできるよう連邦警察を通して「Family Law Watch List」に申請するなど、素早い対応が必要になります。子どもを連れて出国する際、片親の同意を得るために多額の保証金を積まないと出国許可が出ないなどの問題が生じる可能性についても留意する必要があります。

離婚の際の財産分与に当たって

離婚の際の財産分与では、財産が日本やオーストラリアなどどこにあるかにかかわらず、基本的に金銭的価値があるもの全てが夫婦の共有財産に含まれます。現金や不動産、株式、車、ビジネスなどはもちろん、私物の貴金属や趣味のコレクションや家財道具といった物も含まれます。個別の財産については、その市場価値が争われることにも発展するため、細かいものまで財産に含むのは現実的ではないでしょう。

また、夫婦の共有財産かどうかで争われることが多いものに「両親からの金銭的援助」が挙げられます。ローンであれば両親に返済義務があるので夫婦の共有財産ではありませんが、贈与であれば夫婦の共有財産です。両親から金銭的な援助を受け取る場合には、その金額だけでなく、援助がローンなのか贈与なのかも記録を付けたり、貸借契約書を交わしておくのが賢明です。

財産分与の考え方

財産は基本的には「50:50」で分けられますが、婚姻時と婚姻期間の貢献度や離婚後に予想される経済力に応じて割合は変動します。DVや依存症が一方の配偶者に認められる場合は、それらの困難を乗り越えて婚姻関係が継続できていたのはもう片方の配偶者の努力があったからだとして、貢献度に加算される形で財産分与に影響を与えます。

貢献度には、結婚時の財産や結婚後の収入が加味されますので、これらの記録があることが大切です。相手の収入について全く知らなかったり、家計を管理する銀行口座にアクセスがなく、経済状況について把握していない場合、協議するための情報収集で多大な労力を費やすことになります。両親からの金銭的援助なども貢献度として加味されますが、年数が経つにつれて、これらの記録が曖昧で証拠もない場合は加味できない場合もあるため、家計の把握や記録化をされることが大切です。

慰謝料の考え方

相手の不貞行為に起因する離婚の場合であっても、オーストラリアの法律では慰謝料という考え方がないため、慰謝料請求を念頭に、相手の不貞行為の証拠資料などをそろえられたとしても、請求の対象にはなりません。

日本の場合

お金に関する法律として、日本では離婚の原因を作った「有責配偶者」がおり、有責配偶者がもう片方の配偶者に賠償として「慰謝料」を払う規則があります。

オーストラリアの場合

離婚の原因は男女の関係の話であって法律の介入する余地はなく、離婚の責任をどちらかに問うことや、賠償責任という考え方はありません。

子どもの将来については、両親の話し合いで取り決めることが最善であると日々の業務を通じて感じていますが、話し合いを行うにもオーストラリアと日本の親権や養育の義務の考え方の違いを理解することが、ファースト・ステップになるものと思います。離婚に至る経緯や状況は多種多様であるが故に、解決のアプローチも一様ではありません。弊所では、裁判での紛争だけに頼らず、ご相談者様にとって最善のアプローチや策をご提案することを重視しています。

カツダ・シナジー・ロイヤーズ
「依頼者にとってのベストを粘り強く追及する」をモットーに、労働法や移民法(ビザ)、企業法務、家族法、刑法など幅広い分野において専門性の高い法律サービスを良心的な費用で提供しています。英語で弁護士に相談する自信がないとお悩みの方でも、日本語でお気軽にお問い合わせ頂けます。「初回限定・電話コンサルテーションサービス」も好評です
■住所:Level 13, 111 Elizabeth St., Sydney NSW
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