働く女性にインタビュー2019 豪州で活躍する女性たち②

働く女性にインタビュー2019 豪州で活躍する女性たち

近年、日本を離れ海外のビジネス・シーンで活躍する女性たちが増えてきている。本特集では、豪州を舞台にグローバルに働く女性9人に、仕事のやりがいや現在に至るまでの歩み、活動に捧げる情熱や今後の展望などについて話を伺った。

豪州で活躍する女性 2019

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「不可能はない」という思いで新たな道を切り拓き続ける

「JUAN Bowl & Tea」オーナー・シェフ
石黒アンナさん

シドニーで人気の丼カフェ・レストランと聞いて、真っ先にその名が挙がるのは市内南東部のレッドファーンにある「JUAN Bowl & Tea」だろう。2017年10月にオープンして以来、連日行列ができている同店。また、昨年11月から今年3月末の期間には、長野県白馬村でポップアップ・レストランも営業し大盛況だったという。さまざまな挑戦を続ける石黒アンナさんに、現在に至るまでの心境や、白馬村での経験について話を伺った。

プロフィル
「JUAN Bowl & Tea」オーナー・シェフ。17歳で芸能事務所に所属し、歌や芝居、ラジオDJなどの仕事の傍ら、ウェブ・デザイナーとしてもキャリアを積む。来豪後、ローカルのレストランやカフェのキッチンで働き、2017年10月にシドニー・レッドファーンに「JUAN Bowl & Tea」をオープン。18年12月から19年3月末まで長野県白馬村で、レストラン「JUAN Wagyu Steakhouse」を営業した

――「JUAN Bowl & Tea」では、なぜ「丼」を提供しようと考えたのですか。また、メニューにあるマッチング・ティーを取り入れた経緯を教えてください。

丼、マッチング・ティー、デザートなどメニューもバラエティーに富む
丼、マッチング・ティー、デザートなどメニューもバラエティーに富む
ふんわりとした卵をまとった「UNAGI HITSUMABUSHI」
ふんわりとした卵をまとった「UNAGI HITSUMABUSHI」

一番最初に店をオープンしようと決めた時、実は大好きなすしレストランを開きたかったんです。しかし、日本からすしシェフを連れてくるには言葉やビザなどの問題があり、また、私がすしシェフのバックアップをするのは難しいなと思いました。それまでケータリングのメイン・キッチンやカフェで働いてはいましたが、すしは握れないと思い、他の誰かに頼る店ではだめだなという結論に至りました。

そこで、自分でできることは何かと考えた時に「丼をやろう!」と閃(ひらめ)きました。丼なら“ちらしずし”も作れますし、魚以外にも肉や野菜など何でも使えます。そして、店がオープンまでの約1年間、「やりたかったすしレストラン」の経験を積みたくて、元「華樹林」のすしシェフ・松谷さんの下で勉強させて頂きました。

丼もの屋を始めるに当たって、シンプルかつお洒落な丼にしよう!と考えました。日本で丼と言えば牛丼やカツ丼、親子丼などですが、どれもカラー・イメージは茶色や黄色などです。私は、それらとは違う丼を作りたいと考え、また店はカフェのようにしたいなと思っていました。

ただ、私はコーヒーも大好きなのですが、丼とコーヒーは合わないし、レッドファーンには人気のカフェが多く点在しており、あえてそこに参入する必要はないと考えました。また、お茶の専門店は少なく、丼とも合い、ワインと同じようにさまざまな組み合わせがあると考え、日本茶を始め、中国、台湾、オーストラリアの高級茶から厳選して提供するスタイルにしました。

――「丼×お茶」にはどのような反響がありましたか。

お客様の50%以上がマッチング・ティーを注文されます。ワインと同じで、人によって好き嫌いや感じ方が違うと思いますが、お茶の提供はオーストラリアでは珍しいこともあり、好評です。

例えば、WAGYU丼と共にお薦めしている「Jin Jun Mei(金俊眉)」――。これは中国紅茶の最高峰として知られていますが、飲んだ後に程良いうまみと甘さが口の中に広がります。丼ソースにタマネギとニンニクを使用しているので、この紅茶を飲むことで口の中がクリーンになります。そうすると、丼のふた口目もまた、ひと口目と同じおいしさを味わえます。

――2017年10月にオープンした「JUAN Bowl & Tea」ですが、ローカル・サイトでのアワードの受賞など地元民からの人気も非常に高いです。オープンから現在までを総括すると、どのような思いがありますか。

「JUAN Bowl & Tea」の店内。すっきりとシンプルだ
「JUAN Bowl & Tea」の店内。すっきりとシンプルだ

「光陰矢の如し」で、本当に一瞬でした。丼もの屋をやる!と決意し、元々更地だった場所を店舗場所に決めてからオープンまで、実に1年7カ月掛かりました。先の見えない、何も分からないゼロからのスタートですごく重いプレッシャーと闘っていたことは鮮明に覚えているのですが、なぜだか不安は全くなかったです。当時はレストランで働きながら、開店準備を着々と進めました。店舗設計、DA(Development Application)、「Food Safety Supervisor(FSS)」の取得など分からないことだらけでしたが、1つひとつクリアしていきました。

オープン当初は週6日営業で、キッチンは私とキッチン・ハンド1人だけでした。そしてある時、著名なブロガーやインスタグラマーが来店されたことをきっかけに、2週間後の週末には大行列が出来上がっていました。そのころから運営が全く回らなくなり、完全予約制に変更しました。食材の仕込みもほとんど1人でしていたため、毎日朝8時から日付が変わった午前2時まで働いていました。その後、メニューを8品から5品に減らしましたが、それでも追い付かなくなりました。2017年12月末まで頑張りましたが、自分自身に限界がきていると感じました。一度、仕切り直そうと正月から3週間、店を閉めました。

再開してからは、ありがたいことにシェフ仲間が入れ替わりで店を手伝ってくれることになり、何とか今までやってこられています。気持ちが落ち着くのに1年掛かりました。その1年を通して、スタッフの存在がどれだけ大切なのかを身に染みて理解しました。現在、店では多くの日本人スタッフが働いていますが、皆の時間や意見を尊重して、なるべく意向に沿うようにしています。

常に思うことは「不可能はない」ということです。可能にするためにどうするかを考え、それを行動に移すだけだと思うんです。「無理かな?」は、私の中にはないです。努力すれば、何事であっても不可能はないと思います。それが、今までの私の人生、これからの人生でもあります。全ての経験が、今の自信につながっているのは間違いありません。

まだまだチャレンジしてみたいことはたくさんあります。いろいろな壁がありますが、これからも1つずつ乗り越えて、目指すべき所に辿り着きたいと思います。

――昨年11月から今年3月末まで、長野県白馬村で「JUAN Wagyu Steakhouse」というポップアップ・レストランをオープンしていたと伺いました。

自分を仕切り直すために2018年1月から3週間、店を閉めていた間、シドニーにあるホテル内のレストランが長野県白馬村でポップアップ店を出しており、その手伝いをさせて頂きました。

長野県白馬村で、期間限定オープンさせた「JUAN Wagyu Steakhouse」
長野県白馬村で、期間限定オープンさせた「JUAN Wagyu Steakhouse」
「JUAN Wagyu Steakhouse」で提供した牛肉
「JUAN Wagyu Steakhouse」で提供した牛肉

白馬に着いてビックリしたのが、オーストラリア人や訪日外国人だらけだったことです。ホテル・スタッフも皆、白人かバイリンガルの日本人でした。日本なのに海外にいるかのような感覚に、本当に驚きました。

その後、泊まっていた白馬のホテル・マネージャーがシドニーに来てくれ、久々に会うことになりました。彼はホテルを辞めており、「何か一緒にできたら面白いね!」という話になりました。彼の帰国後、実際に話を持ちかけ、すぐに物件探しを始めました。18年10月末にようやく借りられる物件が見つかり、11月2日には白馬に飛び、住民票を入れ、事業届けを出し、物件の契約を5日間で終わらせ、シドニーに戻りました。慌ただしい準備期間となりましたが、皆が助けてくれたからこそ、実現できたポップアップ・レストランでした。

本当に良いタイミングで、あの時だからこそできたことだと思います。シドニーで店をオープンさせてから1年で海を渡った日本で、ポップアップ・レストランを開店できたことには自分でも驚いています。私の人生のテーマは「挑戦」なんです。子どものころからそうやって生きてきたので、一生変わることはないと思います。

――「JUAN Wagyu Steakhouse」は、どういったコンセプトで運営されたのですか。

日本でウィンター・スポーツを楽しもうと海外から来る人たちのために、おいしい炭火焼きの和牛を食べて欲しい! というコンセプトで、メニューはただ1つ「おまかせ」のみでした。和牛ステーキ3~4部位のカットを楽しめるプレートに、グリル野菜とサラダ、ポテト2種盛りというセット・メニューです。客層は、落ち着いた人たちが多く、家族連れにもたくさん来て頂きました。

また、インテリアとして大活躍してくれたのが盆栽です。旧友である盆栽師・平尾成志(ひらおまさし)が、わざわざ埼玉から白馬まで彼の盆栽を10点ほど持ってきてくれました。お陰で、店の雰囲気がグッと良いものとなりました。そして、ヘッド・シェフを務めてくれたゴウやカナダ生まれの日本人マネージャーとそのお兄さんが店をしっかりと切り盛りしてくれたこともあり、お客様からのレビューは9割片5つ星でした。

フライヤーを配ったり、口コミやホテルからの紹介で、シーズン中は安定してお客様に来て頂けました。また、本当にすばらしいレビューも頂き、3カ月限定の営業では、もったいないなと思う店になりました。

――最後に石黒さんの、今後の展望などについて教えてください。

今年はやりたいことが1つあり、それが今の目標です。それも現状を維持しながらの挑戦になりますが、実現できるよう先を見据えた準備をしたいです。また3年以内には、オーストラリア以外のアジアでも店をオープンさせることを漠然とですが、視野に入れています。

とにかく、今やりたいことをやる!今を楽しむ!日々を楽しくハッピーに生きていきたいです。

JUAN Bowl & Teaオーナー・シェフ・石黒アンナ(いしぐろあんな)
■住所:Shop 5, 94A Pitt St., Redfern NSW
■営業時間:【ランチ】木~日12PM~3PM、【ディナー】水~日6PM~10PM、月・火休
■Facebook: www.facebook.com/juanbowlandtea
■Instagram:「juan.redfern」で検索
■備考:フェイスブックやインスタグラムから予約するのがお勧め

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