顔 「仕事を通して男の生き様伝えたい」

インタビュー

親子経営の繁盛店「寿限無/新ばし」
オーナー村井雄之輔さん

◎開店早々、地元の人気店に◎
 シドニー北部ニュートラル・ベイの目抜き通り、ミリタリー・ロード沿いに軒を連ねる2軒の日本食レストランがある。1つは店内の一角を占める巨大鉄板で焼き上げる本場関西風お好み焼きがメインの「寿限無」、そして、かつてニュートラル・ベイとウルムルーで名を馳せた蕎麦の名店「新ばし」同様、手打ちの本格蕎麦を提供する「蕎麦処 新ばし」。この2店は入り口や内装は違えども、実は店内がつながっていて厨房も1つというユニークな形態のレストランだ。
 昨年6月にオープンするやいなや、その店舗形態や本格仕様の内装、そして何より“妥協しない日本の味”が地元紙・誌やシドニーの美食家たちに認められ、連日盛況を博している。この繁盛店を切り盛りするのが、自身のビジネスをリタイア後、長男の力丸さん(33)と一緒に店を立ち上げ、共同で経営する村井雄之輔さん(63)だ。

インタビュー
村井雄之輔さん(左)と長男の力丸さん

◎長年の夢「いつか飲食店を親子2人で」を実現◎
 実は村井さん、飲食店の経営は初めて。それまでのビジネスは、製品を海外でOEM生産して日本の卸問屋に卸す、いわゆるアパレル専門商社という全く畑違いのものだった。「それで常日ごろ思っていたのが、“いつか消費者の反応をダイレクトに感じられる仕事がしたい”ということ。服の場合は問屋から小売店を経て消費者の手に届き、その声が注文として自分に戻ってくるのは1年後。その点、飲食店はお客さんのレスポンスをその場で感じられる」。村井さんはいつしか、引退後に飲食店を開店することが夢になっていったと言う。
 もう1つの夢。それは力丸さんとの共同経営だった。「私は典型的な仕事人間。現役時代は1年のほとんどが海外出張だった」という村井さんは、ビジネスに没頭するあまり家庭を顧みず、力丸さんに父親らしいことを何1つできなかったことを後悔している。「だから飲食店を2人でやって、男としての生き様や、仕事とは何か、父親として伝えるべきいろんなことを、仕事を通して伝えたいと思った」という。
◎苦労したのは「寿限無/新ばし」の味◎
 今のような繁盛店になったことの要因・秘訣を尋ねると、「本道で勝負したことでしょう」とずばり。これまでオーストラリアにある日本食といえば、オージーの口に合うように甘く濃い味付けにアレンジするのが普通だったが、村井さんは日本の味をそのままで出すことにこだわった。「日本食ならではの味、伝統は、必ずオージーにも受け入れられるという確信があった。日本で出会ったオージーたちは皆、日本のソース、お好み焼きの味が大好きだった。それに、ここで食べた日本食が本当の日本の味じゃないと知ったら来てくれたお客さんも残念に思うはず」
 また、ウルムルーにあったかつての「新ばし」の料理人を迎えることができ、本物の手打ち蕎麦やつゆを出すことができるようになった。
 ただ苦労したのは、お好み焼きと蕎麦以外の料理の味だ。「同じ日本といっても料理人やスタッフの出身地はさまざま。当然、故郷の味も千差万別です。彼らがそれぞれに持つ“日本の味”をどうやって“寿限無の味”“新ばしの味”にしていくかということがとても大変だった」。料理を試作する毎日が1カ月以上も続いたと言う。
 しかし同店の客層は現在、9割が地元オーストラリア人で占められる。村井さんのこだわり、本物の日本の味が、結果的に地元オーストラリア人に受け入れられたのだ。


◎伝えるべきこと“まだまだ”◎
 メニュー作りでは試行錯誤を繰り返し、内装デザインも村井さん本人が現場で職人に1つ1つ注文しながら造った。その夢だった初めての飲食店「寿限無/新ばし」は、傍目には既に大成功しているように見えるが、村井さんは“まだまだ”と自分を戒める。「もっと日本のお客さんに来てもらうため、今は2階に店を広げることを計画中。今のように賑やかな雰囲気よりも、しっとりと落ち着いた空間を日本の方は好むと思いますので」と、より良い店造りを常に忘れない。
 そして力丸さんに伝えるべきことも“まだまだある”そう。「毎日の営業だけでなく、ビジネスを彼自身の手で動かす日。彼にバトンを渡せるようになる日が来るのが待ち遠しいね」。村井さんの目には厳しさの中にも息子を思う優しさが見て取れた。
寿限無/新ばし
246-248 Military Rd.,
Neutral Bay NSW
Tel: (02)9904-3011
Fax: (02)9904-3188
ランチ火~土12PM~2PM、ディナー火~日6PM~10PM、月休
Licensed

新着記事

新着記事をもっと見る

NICHIGO CHANNEL

新着イベント情報

新着イベントをもっと見る