クボタ・スピアーズ立川理道選手インタビュー

元ワラビーズ・ナンバー8のトウタイ・ケフ氏がヘッドコーチ(HC)を務めるチーム、クボタ・スピアーズ(以下、クボタ)は、豪州にあるスーパー・ラグビーの名門チーム、ブランビーズと提携関係にあり、以前から日本のシーズン終了後には選手が豪州へ渡り交流をしていた。しかし、これまでこの制度を利用した交流では、アカデミー留学という形をとるのが常だった。しかし、立川選手が昨年日本でのシーズン終了直後に豪州へ渡った時は違った。前例にないケースだったが、晴れてブランビーズへ正式加入し、試合出場を目指してメンバーとなるために、豪州を訪れたのだ。既に日本へ帰国している彼が日本のシーズン終盤を迎えたある日、千葉県船橋市のクボタ・グランドを訪ね、ブランビーズでの経験、そして豪州での生活について伺った。文=山田美千子/写真=山田武

 

——チームにはすぐ溶け込めましたか。

立川:そうですね。1つ上の兄(現クボタ・キャプテンの立川直道選手)が3年前に、同期の選手が前年にアカデミーに留学していたので、兄のことから話題が始まったり、共通の友人ができたりしました。自分にとって初めての海外生活で、チームにとっても日本人の受け入れは初めてというので不安もありましたが、溶け込みやすかったです。英語がそれほど堪能ではなかったのですが、そんな気持ちを察してくれたフィジー出身の選手がいろいろ気遣ってくれたりして助かりました。

憧れの存在だったラーカム氏との練習

——昨年からブランビーズのHCには日本でのプレー経験もあるスティーブン・ラーカム氏が就任しましたが、その影響はあったのでしょうか。

立川:ゲームを作っていくスタンド・オフ(SO)というポジションで、こういう選手になりたいと目標、お手本にしていた選手が、ラーカム氏でした。HCになっても自らが選手と一緒に練習に入りながらやっているので、実際に彼の動きを見て上手いなと思うところを体で吸収してきました。今は現役を引退していてトップ・レベルというわけではないけれど、やはり上手いですね。とても勉強になりました。自分が経験したことをクボタ、そして日本ラグビー界に還元できたらと思っています。それが責任かなと思います。

 

——以前、ジョーンズHCが本紙連載中のコラム「Go! ワラビーズ in Japan」(今号では休載)の中で、「代表に選ばれ代表チームの練習を経験した選手が、それをそれぞれの所属チームに持ち帰って、還元できるようになるように願っている」という話をしてくださったことがあったんですよ。エディイズムが根付いて来ている証ですね。豪州生活はどうでしたか。

立川:平日は朝から夕方まで練習があって、土日のどちらか試合。オフは週1日くらいでした。当初はチームメイトとアパートでルーム・シェアしていました。3月に結婚しまして、その後は妻とアパートで生活しました。キャンベラはシビックの中心に店はあるけど、賑やかなのはあの辺りだけですね。
 でも、比較的安全と言われる街だけあって、危ない目に遭うことはなかったです。

オフには家族とハミルトン島へ

——滞在中一番楽しかったことは何ですか。

立川:あまり休みはなかったのですが、1週間くらい休みがとれて、妻とハミルトン島へ行きました。とてもきれいな所で良かったです。でも、ハプニングがありまして…。自分たちでチケットやホテルを手配して行ったのですが、ちょうどケアンズに台風が来まして。シドニーからブリスベンへ向かう空港のゲートで、ブリスベンからハミルトン島へ行けないと聞かされて、どうしようかと。シドニーに1泊して待つか、とりあえずブリスベンまで行くか、それともキャンベラに戻るか選択を迫られました。その時期、ちょうどクボタのマーティン・ヒューメ・コーチが一時帰国しており、シドニーの自宅にいたので、助けてもらいました。チケットやホテルの手配もしてくれ、家でBBQをしてもてなしてくれたり、とてもお世話になりました。おかげで翌日、無事にハミルトン島に行くことができ、休暇を過ごすことができたんですよ。マーティンが帰国中で本当に助かりました。感謝してます。

 

——また海外に挑戦するとしたら、今度はどこへ行きたいですか。

立川:NZ、豪州…と考えると、もう一度、豪州で挑戦したいと思います。クボタとの関係からブランビーズでとも思うけれど、どのチームでも良いです。2016年からスーパー・ラグビーに参加する日本のチームのメンバーに入れたら、それも良いですね。NZのチームは外国人枠が2人しかないので、チャンスをつかむのがさらに難しい。豪州のほうが枠も多いし…(笑)。

普段の生活、今後のキャリアについて


正確で速いパスが魅力


RWC出場決定にチームメイトとともに喜ぶ立川(前列左から2人目)

——普段はチームの経営母体でもある株式会社クボタで社員として勤務されているのですよね。

立川:はい。クボタは会社としても、社員の人も、ラグビーに理解を示してくれて応援してくれています。とてもありがたいことです。でも、今年だとラグビー・ワールド・カップ(RWC)が終わるくらいまではあまり出社できないのが辛いです。会社や周囲の人の理解がないと仕事とラグビーの両立は難しい。そういったことも忘れずにやって行きたいと思っています。

 

——セカンド・キャリアのためにも、後に続く後輩たちのためにも大切なことですよね。昨シーズンは立川選手以外にも、レベルズのフッカー(HO)堀江翔太選手、NZハイランダーズのスクラムハーフ(SH)田中史朗選手が参戦し、計3人の日本人がスーパーラグビーに挑みました。2人は日本では元ワラビーズHCロビー・ディーンズ氏がHCをつとめるパナソニック・ワイルド・ナイツ(パナソニック)に所属するプレーヤーですが、特に田中選手は、チーム・メイトであるオールブラックスSHアーロン・スミス選手と比較しても遜色ない活躍を見せ、バーバリアンズにも選出されていますね。

立川:チーム、チームメイトの信頼を得て、あれだけやっているのはすごいと思います。1年目はただひたすら大変で、信頼を得るためがんばって…。3年目で花開くとはよく言ったもので、彼を見ているとまさしくそんな感じですね。称えるべきことです。

 

——今シーズンは豪州のレベルズから堀江翔太選手が3シーズン目の挑戦をし、フォースからは山田章仁選手(パナソニック)が初挑戦します。ラグビー強豪国ではない日本の選手が世界最高峰のスーパーラグビーでプレーするのは難しいのではないかという世間の予想を裏切ってもらうためにも、彼らにかかる期待は小さくないのではないのではないでしょうか。

立川:そうですね。ぜひ今後の2人、そして日本ラグビー界全体を、皆さんに応援していただきたいです。

 

——一方、9月に始まるイングランドでのRWCは日本の出場は決まっていますが、メンバーはまだ決まっていませんね。立川選手も有力な候補ですが…。

立川:特別飛び抜けたプレーはないけれど、パスや仕掛けなど自分の持ち味を発揮して、チームに尽くす姿をアピールできたら良いと思っています。最終メンバーに残れるように気を引き締めてやっていきたいです。

穏やかな口調ではあるが、彼の強い想い、意志を感じることができた。ブランビーズでの経験はいろいろな意味で彼を大きく成長させたことだろう。立川選手のさらなる飛躍を楽しみに見守りたい。

立川理道◎プロフィル
1989年12月2日生まれ。奈良県出身。TLクボタに所属し、SOとセンター(C TB)ポジションで活躍。エディ・ジョーンズHC率いる日本代表チームでも大きな期待を背負う日本ラグビー界期待の星。

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