日系コミュニティーで活躍ローカル人・インタビュー

Interview ローカル人インタビュー

オーストラリアの日系コミュニティーで活躍するローカル人に話を伺った。

第3回 アンドリュー・キウさん
Andrew Qiu

©Naoto Ijichi
©Naoto Ijichi

遠くの世界をリアルに楽しめる機会を提供したい

アニメや漫画、ゲーム、コスプレの祭典「スマッシュ!」を主催する非営利団体の代表として、日豪の文化交流に貢献してきたアンドリュー・キウさん。日本のポップ・カルチャーがオーストラリアで人気を集めているのはなぜか。その魅力について聞いた。(聞き手:守屋太郎、写真:伊地知直緒人)

――1990年代後期から2000年代初頭にかけて、オーストラリアの子どもたちは「ポケモン」や「遊戯王」など日本のアニメやゲームに熱中しました。アンドリューさんも、そうした日本の現代文化の影響を受けた世代ですか?

インタビュー時の様子(Photo: ©Naoto Ijichi)
インタビュー時の様子(Photo: ©Naoto Ijichi)

私は中国南部の広州で生まれ、小学校に上がる6歳の時にシドニーに移住しました。小学生の時、遊びに行っていたアイス・スケート場に「ストリート・ファイター」(格闘ゲーム)など日本の面白いアーケード・ゲームがたくさんありました。

その中に「ザ・キング・オブ・ファイターズ」という格闘ゲームがあったのですが、内容が英語に翻訳されていなくて日本語のままだったんです。言葉が理解できないから、思うようにプレーができない。でも、それが逆に日本文化に興味を持つきっかけになったんです。

その頃、ポケモンのアニメのテレビ放送が始まり、大ブームになりました。高校生になるとブロードバンドが普及し、アニメの動画をダウンロードできるようになりました。最初にテレビで日本のアニメに触れ、それをきっかけにアニメの世界に深く入っていきました。インターネットの影響は非常に大きかったです。

――大学時代に日本に留学されましたね。その経験は人生にどんな影響を与えましたか?

高校卒業後、シドニー大学で土木工学と人文学を専攻しました。大学在学中の21歳の時、交換留学生として1年間、東京大学に留学し、日本の政治について勉強しました。その時の経験が私のモノの見方や人との付き合い方を変え、大きく成長する機会を得ることができました。

それまでの僕は、厳しい家庭環境もあって、自分に自信を持てない人間でした。部屋に引きこもってオンライン・ゲームにのめり込み、外で多くの人と話をするような社交的な人間ではありませんでした。しかし、日本に留学した時、毎日のように先生や学生と飲みに行き、語り合いました。彼らは過去に関係なく1人の人間として扱ってくれ、僕を大きく変えてくれたのです。

――大学でアニメ・ソサエティー(サークル)の会長を務めた経験が、「スマッシュ!」での活動につながったのですか?

アニメ・ソサエティーでは上映会を開いたり、週末のバーベキューや飲み会で情報交換したりしていました。シドニー工科大学(UTS)やニュー・サウス・ウェールズ大学(UNSW)など他校のアニメ・ソサエティーとも交流し、共同でより大きなイベントを開いたり、合宿を行ったりもしました。当時の私たちの間では、「涼宮ハルヒの憂鬱(ゆううつ)」「コードギアス」「化物語」「さよなら絶望先生」といったアニメ作品が人気でしたね。

日本から帰国後、日豪交流に貢献したいと思い、2009年に当時は小さなグループだった「スマッシュ!」のボランティアを始めました。「スマッシュ!」には、各大学のアニメ・ソサエティーの人たちが集まっていましたので、彼らのことはよく知っていました。

――「スマッシュ!」はその後、年々規模を拡大し、オーストラリアを代表するポップ・カルチャーの祭典となりました。2015年にはプレジデント(代表)に就任しました。

2016年、「スマッシュ!」が団体として受賞した日豪友好協力基本条約調印40周年記念外務大臣表彰の式典で高岡正人・在シドニー日本国総領事(当時)と
2016年、「スマッシュ!」が団体として受賞した日豪友好協力基本条約調印40周年記念外務大臣表彰の式典で高岡正人・在シドニー日本国総領事(当時)と

「スマッシュ!」は全てボランティアの協力で成り立っている非営利団体です。日本のニッチなカルチャーに関連したさまざまなコンテンツや情報をコミュニティーに提供しています。毎年、2日間にわたって開催されるメインのイベントでは、コスプレのコンテストや同人誌の出店、ガンプラ(アニメ「機動戦士ガンダム」のプラモデル)のコンテスト、ゲームの競技会、ゲストのトーク・ショーなどさまざまな企画があります。

運営スタッフが180人、イベント当日に手伝ってくれるボランティア・スタッフが約350人。合計約530人の人たちが無償で働いてくれています。この大きなチームをまとめ、重要な決断をしたり、日本に行って関係者やゲストに協力をお願いしたりするのが僕の任務です。

実は、オーストラリアは(人口が)非常に希薄な国です。共通の興味を持つ人たちはオンラインでつながっていますが、リアルな生活で結びつく場が少ないんです。このイベントを通して、人びとが遠い所にあると思っている世界を、現実の中で楽める機会を提供したいと考えています。

今年のイベントは7月14日、15日の2日間、新装オープンしたシドニー・インターナショナル・コンベンション・センター(ICC Sydney)で開かれます。アニメ監督の大森貴弘さん、声優の置鮎龍太郎さんなどの豪華なゲストの出演が決まっています。ご期待ください。

普段はアシスタント・マネジャーとして建築会社に勤めながら、「スマッシュ!」の活動を楽しんでいます。忙しいですが、今のライフスタイルを大変エンジョイしていますよ。なので、結婚はまだ先で良いのかなって思っています(笑)。

――一番好きなアニメ作品は何ですか?

「新世紀エヴァンゲリオン」(エヴァ)かもしれませんが、ストーリーが未完なので、現時点では最終的な評価ができません。エヴァは1990年代後期にSBSの地上波で放映され、オーストラリアのアニメ・ファンに大きな影響を与えました。

完結している作品の中で一番好きな作品と言えば、「コードギアス」でしょうか。(主人公が)どのように世界平和に影響を与えるか、という壮大な世界観が好きなんですよ。

アニメだけではなく、日本のポップ・ミュージックも大好きです。以前は「XJAPAN」などのハード・ロックをよく聴いていました。最近は趣味が変わってきて、今は「AKB48」の熱狂的なファンです。

――昔と比べると、オーストラリア人の日本に対するイメージは大きく変わりましたね。

コンテンツを消費する方法が変わったんだと思います。短くて、速く、視覚に訴えるものを好むようになってきました。消費者がもっと明るくて新しいものを求めるようになってきました。

例えば5年前は「絵文字」は新しいものでしたが、今では「emoji」は英単語として定着しています。親の世代と比べて、新しい世代は異文化を吸収するスピードが速いんです。経済成長でオーストラリア人が豊かになり、アジアの影響も受けて、新しい文化を受け入れるようになりました。日本が変わったのではなく、オーストラリア人のメンタリティーが変化したんです。

――日本のポップ・カルチャーの最大の魅力は?

独創的で、予想できないところが、日本のコンテンツが好きな理由の1つです。例えば、アメリカと日本の音楽を比較すると、僕は予想できないものを選びます。日本のエンターテインメントの世界は、アメリカや他の国と比べて競争が激しく、独創性と新しいアイデアがなければ生き残れません。

もう1つは、日本では個人のクリエーターがより重要視されている点です。例えば、アメリカのアニメ映画『ファインディング・ニモ』の監督の名前を即答できる人はいますか? しかし、日本の『千と千尋の神隠し』の宮崎駿監督は誰でも知っています。

――今後の目標について聞かせてください。

音楽にもっと関わっていきたいと思います。「スマッシュ!」に最初に携わった時はカラオケのイベントをやりましたし、代表に就任した2015年の「スマッシュ!」では、初めてアニソン(アニメ・ソング)のコンサートを開きました。今後は、アニソンなどの新しいコンセプトの音楽をオーストラリアに紹介していきたいですね。

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