日系コミュニティーで活躍ローカル人・インタビュー「ロビン・ケネディーさん」

Interview ローカル人インタビュー

オーストラリアの日系コミュニティーで活躍するローカル人に話を伺った。

第5回 ロビン・ケネディーさん
Robyn Kennedy

日本のアートは「線」と「形」。モダンと伝統の対比が魅力

インテリア・デザインの職場で、捨てられていた布地のサンプルを再利用した芸術作品の創作を思い付いた。それ以来、繊維や金属、木材、写真など多彩な素材を貼り合わせて3次元で表現する「ミックスド・メディア・アート」を考案し、約20年にわたり創作活動を続けている。今年10月から11月にかけて、現代日本をテーマにした作品の個展「タッチ・オブ・ジャパン」をシドニー北部チャッツウッドで開き、注目を集めた。 (聞き手=守屋太郎)

――いつから芸術家を目指していたのですか?

人口800人ほどのNSW州西部の農村で育ちました。将来、アーティストになるとは夢にも思っていませんでした。アートとは無縁の環境でしたが、子どもの時から繊維やファッション、インテリアに興味を持っていました。服を作るのが趣味だった母の影響だったのでしょう。

1970年代に家族でシドニーに引っ越してきてから、母が日本の生け花を習い始めました。今思い返せば、それが後に日本に興味を持つきっかけになったのかもしれません。

ビジネス・カレッジで速記と簿記を勉強した後、IT(情報技術)の道に進みました。全くアートとは畑違いのキャリアを歩みました。現在も創作活動の傍ら、パートタイムでNSW州保健省のプロジェクト・マネジャーを務めていて、病院内のWi-Fi(無線インターネット通信)のサポートをしています。

――創作活動を始めたきかっけは?

日本のカオスな現代と伝統のコントラストを表現した作品「アート・クロスロード」
日本のカオスな現代と伝統のコントラストを表現した作品「アート・クロスロード」

30歳ごろまで、ハネウェル・インフォメーション・システムズ(米国系のコンピューター企業)で長年、エンジニアとして勤務していました。しかし、もっとクリエーティブな仕事に就きたくなり、以前から興味があったインテリアや装飾の道に進もうと考えました。ITのスキルを生かしてCAD(コンピューターによる設計システム)のオペレーターとしてインテリア・デザインの会社に転職しました。クリエーティブな要素は仕事の10%ほどでしたが、その中でもコンピューターで家具を設計する作業は非常に楽しかったです。

職場にはインテリア用の生地やベニア板などの商品サンプルがあり、新しい商品が出ると捨てられていました。私は「捨てるなんてとんでもない」と言って、ダンボール箱に詰めて家に持って帰りました。「何をするかは分からないけど、これで何か作ってみたい」と思ったからです。最初に作ったのは、生地や金属片などを重ね合わせたハンドメイドのギフト・カードでした。それが私のアーティストとしての出発点となりました。

その後、私は夫と2人で1年間の世界一周旅行に出掛けました。インドで手に入れたアンティークの服飾の生地をとても気に入り、大事に持ち帰りました。1997年末に帰国し、そのインドの生地を使って最初の作品を作りました。紙の上に日本の着物が浮き上がったような物が出来上がりました。額縁に入れてギャラリーに持っていくと「もっと作って持ってきて」と気に入ってくれたのです。それがアーティストとしての活動の始まりです。

そのころ、私は全く意識していなかったのですが、作品を見てくれた人たちが「日本に大きな影響を受けていますね」と言っていました。しかし、ようやく日本を旅する機会が訪れたのは、それから十数年も後になってからのことでした。

――日本の影響は、作品のどのような点に現れていたのでしょうか?

下町の裏通りの情景を描いた「バイク・レーン」
下町の裏通りの情景を描いた「バイク・レーン」

ライン(線)とシェイプ(形)でしょう。日本の芸術の多くは、はっきりとした黒いラインで描かれていることが多いと思います。私の作品では、それぞれのパーツを黒いラインで浮かび上がらせています。また、その形状も緩やかなカーブを描いた日本の寺や神社の建築物、着物に似ています。

インターネットが普及するずっと以前から、日本の本を見て影響を受けていました。日本の陶器や木の食器にも親しんできました。「エド・アーツ」(シドニー北部テリー・ヒルズにある、日本の着物や骨董品、装飾品、陶芸品などを販売する小売店)で日本の生地を手に入れ、2000年ごろから作品に使うようになりました。

――2017年に念願だった日本訪問を果たしました。旅の体験について聞かせてください。

私と夫の2人でレンタカーを借り、5週間かけて東京から西日本までドライブ旅行をしました。東京は巨大な都市なのに、他の世界の大都市と比べて落ち付いていて、セカセカしていない印象でした。若い人たちが非常に礼儀正しく、日本語が分からない私たちを一生懸命に助けてくれました。

それから箱根のポーラ美術館など各地の美術館やギャラリーを訪ねました。日本の人たちが、日本だけではなく西洋の芸術にも親しんでいることに関心しました。和食の洗練された盛り付けは「まさにアートだ」と感動しましたね。高山や白川郷を経て、金沢で私の60歳の誕生日と結婚30周年を祝福しました。

京都・嵐山の庭園、大河内山荘で
京都・嵐山の庭園、大河内山荘で

日本ではたくさんの現代アート作品を鑑賞すると共に伝統的な文化や建築物に触れ、創作のインスピレーションを得ました。京都では多くの写真を撮影し、素材を作品に生かすことができました。今回の旅行では、夫が苦手だというので、温泉に行けなかったのが心残りです。次回は女友達といっしょに温泉に浸かりたいですね(笑)。

日本で一番すばらしいと思ったのは、新しさと伝統のコントラストです。大都市のネオン、新幹線、自動の機械、洒落たレストランなど非常にモダンな一方で、伝統的な生活様式が今も息づき、非常に良いバランスの中で共存しています。そして、都市を離れれば、深い緑や険しい山の大自然も美しい。

――先月、日本の体験を描写した作品の個展を開きました。反響はいかがでしたか?

1,000人近い来場者があり、大成功でした。32の作品を購入してもらい、仕事の依頼も頂きました。チャッツウッド駅のコンコースのギャラリーを提供しているウィロビー市の担当者は「これまでで最も成功した個展だった」と言ってくれました。

地元のラジオ局の取材も受け、それを聞いて来てくれた人もいました。お客さんは日本に行ったことがある人も多く、日本が大好きな人が多かったです。「日本の新しさと伝統の対比がすばらしい」という声が多く聞かれました。

――現代日本を立体的に描いた作品からは、日本人には想像がつかない、オーストラリア人らしいユニークで斬新な視点が感じられました。最後に、現在取り組んでいることと、今後の目標について聞かせてください。

作品はウェイバートン(シドニー北部)で3カ月に一度開かれている芸術作品のマーケット「アーティサンズ・アット・コール・ローダー」にも出展しています。創作活動とは別に、個人のブログ(Web: www.lifeoutandabout.com.au)もやっています。シドニー周辺のお薦めの街、日帰りスポット、お店などを紹介していますので、興味があればぜひのぞいてみてください。

次の個展のスタイルは、紙のキャンパスをベースにして壁に飾るこれまでの作品とは異なり、より3次元の彫刻のようなオブジェになるでしょう。和の素材を立体的に組み合わせたような作風に挑戦していきたいと考えています。

私の作品にメッセージ性はありません。これからも美しいアート作品を創造して、純粋に楽しんでもらえればうれしいですね。

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