【新年恒例企画】回顧と展望2016/松本直樹(連邦政局)

新年恒例企画 回顧と展望2016
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ナオキ・マツモト・コンサルタンシー
松本直樹
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日本貿易振興機構(ジェトロ)
シドニー事務所長 平野修一
豪州経済
時事通信社シドニー特派員
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菊井隆正

連邦政局

ナオキ・マツモト・コンサルタンシー 松本直樹

ナオキ・マツモト・コンサルタンシー

松本直樹

プロフィル◎慶応義塾大学商学部卒業後、会社勤務を経て、1987年オーストラリア国立大学国際関係学科修士課程修了。同大学豪日研究センター博士課程中退。92年5月から95年7月まで、在豪日本国大使館専門調査員(豪州内政を担当)。95年8月から97年1月まで、オーストラリア防衛大学国防研究センター客員研究員。96年8月より政治コンサルタント業務を開始。専門領域は豪州政治、日豪関係、安全保障問題など。2014年日本国外務大臣賞受賞。

2016年、連邦選挙の趨勢(すうせい)

2015年は驚天動地の年であった。まず1月に実施されたQLD州選挙である。同選挙では、12年の前回州選挙で歴史的な地滑り勝利を収めたばかりの自由国民党政権が、一挙に31議席を失って敗北を喫するという、豪州政治史上でも最大級の大逆転選挙となった。QLD州選挙の結果は、豪州では政権は少なくとも2期続くのが当たり前という、歴史的事実に基づく「政治常識」を覆すものであったが、これは、連邦与党自由党のリーダーシップ問題にも甚大な影響を与えることとなった。

周知の通り、14年5月に連邦予算案が公表されて以降、アボット保守連合政権への低支持率、アボットへの低評価は固定化され、与党自由党内では「雑音」も発生していた。ただ、アボットが深刻な事故に遭うといった事件か、驚天動地のシナリオでもない限り、自由党の党首が政権第1期目内に突然交代するという可能性など、ほぼ皆無と考えられていた。ところがQLD与党の敗北という、正に驚天動地の政治事件が実際に発生し、それを契機にして、自由党内で高じていたアボットへの不満や、次期連邦選挙への不安が一挙に表面化したのである。

結局、15年の2月には臨時自由党連邦議員総会で指導部への不信任動議が採決に付される事態となったが、動議は否決されたとはいえ、この一件はアボットにとって深刻な「臨死体験」であった。さすがに反省したアボットは、その後指導スタイルの改善などを図り、またアボット個人や政府のサバイバルを重視したソフトな15年連邦予算案のおかげもあって、世論調査の堅調さも一時はトレンド化したかに見えた。ところが8月になると、それまで積み上げてきた成果も一挙に雲散霧消し、再度アボット政府の評価は「超低空飛行」となっている。主因はビショップ下院議長のスキャンダルに対する、アボットの対応の遅さ、稚拙さで、これによって「様子見」の状況であった自由党議員のアボット離れが進行したのである。

結局、アボットは、9月14日にターンブル通信大臣の党首挑戦を受けて敗北し、わずか2年ほどで首相の座から滑り落ちている。なお、これまでのところは、ターンブルの首相就任によって、与党への支持率は劇的に改善されている。こうして迎える16年だが、今年は連邦選挙の年である。選挙の形態としては、①下院と上院半数改選の分離選挙、②上下両院の同時解散選挙、そして③下院と上院半数改選の同時選挙、の3形態がある。ただ、①の分離選挙の可能性は限りなくゼロに近い。というのも、義務投票制を採用する豪州で頻繁に選挙を実施することは、それだけで有権者の反発を買う危険があるし、また現在下院では与党が大きな「バッファ」を持っていることから、そもそも下院の単独選挙を実施する意味がないからだ。

②の両院解散選挙とは、特定法案を巡って上院が膠着状態に陥った場合に、それを打開するために政府が用いる最終手段である。ターンブル政府への高評価を受けて、早期選挙の実施を推奨する向き、あるいは予測する向きもあるが、その場合の選挙形態は②となろう。両院解散選挙のデッドラインは16年の5月初旬だが、仮に同選挙であれば、今年の3月頃に実施される公算が高い。ただ同選挙は、少なくとも理論的には、選挙後の上院の情勢を政府にとって一層悪化させる危険性をはらむものである。

最後に、次期選挙が通常の形態、すなわち上記③である場合、最も早い実施日は16年の8月6日で、一方、下院の任期満了を待って、しかも選挙を最大限に延ばした場合、制度上は17年1月の選挙実施も可能である。ただし、夏季休暇中の選挙は有り得ず、実際のデッドラインは16年の12月中旬となる。最後に与野党の選挙戦略だが、与党は、ラッド/ギラード労働党前政権の体たらくを攻撃しつつ、わずか3年程で労働党を政権に復帰させてよいのかと訴える見込みである。

また「ネガティブ/反対一辺倒」と述べつつ、政策の欠如したショーテン野党党首へのスミアー・キャンペーンを採用するものと思われる。一方、野党も、ターンブルの政策上の「変節ぶり」を指摘しつつ、信頼性の欠如を攻撃するものと思われる。ちなみに義務投票制度の豪州では、他の議院内閣制の国々と比べ、リーダーシップ問題が選挙帰趨(きすう)の決定要因としてより重要である。

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