【新年恒例企画】回顧と展望2016/新井佳文(豪州経済)

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豪州経済

時事通信社シドニー特派員 新井佳文

時事通信社シドニー特派員

新井佳文

プロフィル◎
早稲田大学政経学部卒、94年時事通信社入社。福島支局、財務省、国土交通省など担当。シリコンバレー、ロサンゼルス特派員を経て13年9月から現職。

「中国頼み」からの脱却なるか

中国、豪経済を翻弄

中国の経済減速や「爆買い」に、オーストラリア経済が翻弄(ほんろう)されている。米誌フォーブスの「対中依存度」調査で、豪州は台湾や韓国を上回ってトップとなった(日本は5位)。主力の鉄鉱石や石炭を中心に輸出全体の34%が中国向けで、豪経済の盛衰は中国次第という、心もとない状態だ。中国をキーワードに2015年の豪経済を振り返ってみよう。

「中国人侵入阻止せよ」

「シドニーの住宅市場はバブルだ」(フレーザー財務次官)。シドニーの住宅価格は過去3年間に4割上昇し、販売価格が平均100万豪ドル(約9,000万円)を超えた時期もあった。移民純増や供給不足もあるが、価格高騰に拍車を掛けたのが中国人の投資目的の購入だった。  中国政府の腐敗撲滅運動を受け、富裕層が不正蓄財資産を移転させているとの指摘もある。  調査では、豪国民の7割が「中国人による対豪投資は過大で、政府の規制は緩すぎる」と不満を示した。シドニー郊外のレーンコーブで5月、「中国人の侵入を阻止せよ」と書かれた人種差別的なビラがまかれる問題も発生。白豪主義復活を想起させる、ゆゆしき出来事だ。  政府も重い腰を上げ、国籍を偽った購入者に禁錮刑を科す方針などを打ち出した。

粉ミルクも爆買い

11月には、粉ミルクの爆買いも問題になった。豪ベラミーズ社のオーガニック粉ミルクが店頭から消え、市民から「赤ちゃんの粉ミルクが手に入らない」と悲鳴が上がった。  遠因は、08年にメラミン混入の粉ミルクを飲んだ乳児らが中国で死亡する事件が起きたことだ。中国産品に対する不信感が根強く、安全性を求めて豪州産人気が高まった。加えて、中国政府が1人っ子政策廃止を決め、子ども関連商品のニーズが急増した。  大手スーパー「コールズ」を訪れてみると、確かに一部の粉ミルクが全くない。英語でなく中国語で、「1人4缶まで」との注意書きが掲示されていた。

巨大牧場買収に「待った」

モリソン財務相は11月、牧場運営会社S・キッドマンが進める中国企業への巨大牧場売却計画について、「国益を損なう」として認めない方針を表明した。外資による豪企業買収は日常茶飯事で、政府が介入するのは異例だ。  問題視されたのはその広さと位置。売却対象の10カ所の牧場の総面積は約10万平方キロに上り、韓国の国土に匹敵する。そのうちアンナクリーク牧場(南オーストラリア州)はウーメラ武器試験場に隣接しているため、モリソン財務相は「安全保障上の懸念がある」と判断した。  この件は、豪中関係の難しさを象徴している。豪経済にとって中国は最大の「お得意様」で、成長には関係強化が欠かせない。しかし安全保障面では、海洋進出を強める中国は最大のリスク要因。9月に就任したターンブル首相も、中国との距離をどう取ったらいいのか、迷いが見える。

忍び寄る不況の影

豪経済は4~6月期まで、24年連続で「リセッション(景気後退)知らず」を達成した。大半の先進諸国が世界金融危機の余波で不況に陥った中、豪経済は中国向けを中心にした資源輸出が好調で、荒波を乗り越えてきた。  豊富な資源の輸出で外貨を稼いできた「ラッキー・カントリー」。国民の1人当たり国内総生産(GDP、14年)は6万米ドル(約730万円)と、世界指折りの高所得国になった(日本は3万6,000米ドル)。しかし、中国の経済成長鈍化で資源輸出が鈍り、豪経済にも黄信号がともり始めている。ラッキー・カントリーにあぐらをかき、豪国民が勤勉さを失ったことも不振の一因だろう。  16年に豪経済の起爆剤の1つとして期待されるのが、15年末に発効の対中自由貿易協定(FTA)だ。牛肉などの輸出拡大が見込まれる。やはり、「中国頼み」脱却は難しいようだ。

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