【新年恒例企画】回顧と展望2017/豪州経済(新井佳文)

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豪州経済

時事通信社シドニー特派員 新井佳文

時事通信社シドニー特派員

新井佳文

プロフィル
◎早稲田大学政経学部卒、時事通信社入社。福島支局、財務省、国土交通省など担当。シリコンバレー、ロサンゼルス特派員を経て13年9月から現職。

豪経済、チャイナ・マネーで揺れる

オーストラリア経済は2016年半ばまでに、25年連続で「リセッション(景気後退)知らず」を記録した。日本を始め多くの先進国が世界金融危機の影響などで不況にあえぐ中、資源開発ブームや中国向け鉱物輸出拡大に支えられ、経済成長を維持してきた。しかし、中国マネーへの依存度拡大でゆがみも生じており、「チャイナ・リスク」に対する警戒ムードも高まった。また、日本が落選した次期潜水艦調達計画や、ワーキング・ホリデー中の所得に課税する「バックパッカー税」など、話題を集めたトピックを中心に16年の豪経済を振り返りたい。

送電網や牧場売却で「待った」

連邦政府は16年中に2度、中国企業による買収案件に「待った」を掛けた。4月には、S・キッドマン社が巨大牧場を中国の上海鵬欣集団に3億7,070万豪ドル(約300億円)で売却しようとした際、「安全保障上の懸念がある」(モリソン財務相)と阻止。牧場群の総面積は10万平方キロと、韓国の国土に匹敵する。兵器試験場にも近く、「スパイ活動の拠点になる」と懸念する声もあった。

8月には、NSW州の電力公社オースグリッド売却計画でも、中国企業向け長期リース権売却を「国益に反する」(モリソン財務相)と阻止した。中国政府は「保護主義的だ」と反発。ロブ前貿易相も、英国の植民地として始まった豪州は歴史的に資本の蓄積が乏しく、「農業部門には伝統的に外資が不可欠だ」と訴え、中国マネー排除の風潮を批判した。

各州は税収不足を補うため、電力網や道路、港湾などを売却、あるいは長期リースする計画を進めている。いずれのケースでも資金力で勝る中国企業が落札する可能性は高く、17年も中国マネーとの距離感が問われそうだ。

潜水艦計画で日本敗退

日豪関係では、豪政府の次期潜水艦建造計画で「フロント・ランナー」と目されていた日本が落選したことが、大きな関心を集めた。12隻の建造費が500億豪ドル(約4兆円)に上る巨大プロジェクト。安倍政権はこれを足掛かりに、武器の本格輸出に乗り出す構想だった。

しかし、ターンブル首相は4月、仏造船大手DCNSと共同で、南オーストラリア州アデレードで建造すると発表。日本とドイツは落選した。DCNSを選んだ理由を「(長い航続距離など)豪州が求める独自のニーズに最も合致していた」と説明した。

DCNSが逆転受注した真相をめぐり、さまざまな観測が取り沙汰された。DCNSは豪国防省に近い人物をスカウトし、豪部門責任者に据え、巧みに売り込んだ。対照的に、官民連合チームの日本では、責任者の顔が見えず、PR合戦で完敗した。「日本は豪現地生産に消極的」とのイメージも払拭(ふっしょく)できなかった。他に、「中国を刺激するのを避けるために日本製採用を見送った」、「原子力潜水艦採用を視野にDCNSを選んだ」などといった憶測も飛び交った。

豪政府が潜水艦計画で、コスト拡大を覚悟で現地生産を重視した気持ちは分かる。自動車産業など、製造業の衰退が深刻化しているからだ。

米自動車大手フォード・モーターは10月、豪工場を閉鎖し、90年を超える豪州生産の歴史に幕を閉じた。トヨタ自動車と米ゼネラルモーターズ(GM)傘下のGMホールデンも、コスト高などを嫌って豪生産撤退を決めており、17年末までに豪州から自動車メーカーがなくなる。

バックパッカー税めぐり混乱

資源産業の低迷に伴い税収が減っており、豪政府は穴埋めに必死だ。その1つが、ワーキング・ホリデーでの若者の就労に課税するバックパッカー税構想だった。従来は豪国民と同様、年1万8,200豪ドル(約150万円)までは非課税。これを一気に32.5%に引き上げようとしたところ、観光業界や農業界から猛反発を浴びた。ワーキング・ホリデーとして海外から来る若者は、果物の摘み取り作業などで欠かせない労働力になっている。

高率の課税適用で「税率が10.5%のニュージーランドなどに流れる」(野党労働党)と批判された。結局、15%の税率が17年1月から適用されることで折り合った。

年明け早々、1月20日には、トランプ氏が次期米大統領に就任する。環太平洋連携協定(TPP)からの離脱を宣言するなど、「トランプ・ショック」の第2波が豪経済も翻弄する可能性がありそうだ。

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