【新年恒例企画】回顧と展望2018/為替(谷村昌彦)

為替

三菱東京UFJ銀行
オセアニア総支配人兼シドニー支店長

谷村昌彦

プロフィル◎1989年4月三和銀行(現三菱東京UFJ銀行)入行。ストラクチャード・ファイナンス部、アジア投資銀行部(香港)、アジアCIB部(シンガポール)、欧州CIB部(ロンドン)、トランザクションバンキング部などを経て、2016年10月より現職。東京大学、ニューヨーク大学ビジネス・スクール卒業

豪ドルの底堅い動きは継続

2017年、世界はトランプ米大統領の政治・経済・外交政策に大きく揺さぶられる年となった。国際政治では極端な右傾化は回避されたものの、反グローバリズム、反移民を公約に掲げる政党による政権獲得、勢力拡大の事例が相次いだ。米国のTPP及びパリ協定離脱も顕著な事例と言える。経済では米国の景気拡大は9年目を迎え、米株価は史上最高値を更新、その余波が豪州含め世界の株価を押し上げた。中国も底堅い成長を維持し、特に貿易量回復を通じてアジア太平洋地域の景気底入れに貢献した。

こうした中、豪州の景気拡大も継続した。豪ドルは軟調な米ドルの動きに加えて、RBAが次の一手は利上げと明言し、そのタイミングを図る姿勢を見せたこともあり、総じて底堅く推移している。以下17年の豪ドル相場を振り返りつつ、18年の相場動向を展望する。

17年、豪ドルの対米ドル相場は0.72ドル台で取引を開始した。年初から米ドルが対主要通貨で軟調に推移すると豪ドルは上昇し、0.77ドル台まで上昇した。しかし上値の重さを確認すると下落し、しばらく横ばい圏での取引が続いた。7月に入ると欧州、英国、カナダの中銀総裁が相次いで金融緩和の巻戻しや金融引締めの可能性に言及した。これが豪州を含めたグローバルな協調利上げ機運の醸成につながり豪ドルは急上昇、米国の追加利上げ期待が後退すると米ドルが急落、この結果豪ドル買いが殺到し、約2年2カ月ぶりに0.78ドルを突破した。

その後RBAが景気について明るい見通しを示したことや、米国の追加利上げ期待が一層後退したことで豪ドルは一段高となり0.80ドルの大台を突破、9月には15年5月以来となる0.81ドル台まで上昇した。しかしRBAが米国を中心とする金融引締めの潮流に追随しない意向を示したうえ、インフレ率が予想を下回ると豪ドルは下落に転じた。二重国籍問題による議員辞職で、与党の下院議席数が過半数を割り込むと政治不安も加わり急落、0.75ドル台まで値を崩している(11月末現在)。

対円相場は年初84円台で寄り付き、年前半はドル円に追随する動きとなった。7月以降の豪ドル上昇局面では、一時15年12月以来となる90円を突破したが、その後84円台まで値を下げている(11月末現在)。

18年は、海外情勢では引き続き米国景気動向が鍵を握る。足許は株価が史上最高値を更新するなど堅調だが、市場の注目はその持続性に移っており、その命運を握るのは金融政策である。15年12月に始まったFRBの利上げは3年目に入り、通常2年強程度とされる引き締め期間を勘案すれば、サイクルは終盤に近い。イエレンFRB議長の後任としてパウエル現FRB理事が就任するが、今後は微妙な舵取りが要求されるだけに、新議長の市場との対話力が注目されよう。

豪州経済を俯瞰すれば、景気拡大は26年間に及び、一時期に比べれば力強さに欠けるが底堅さは不変だ。石炭や鉄鉱石など主要輸出資源価格が中期的に見れば底入れしていること、財政・金融政策両面において景気をサポートする方策が取られていることから、本年も景気拡大が持続すると見る。豪ドルはファンダメンタルズが良好な点、米国の利上げサイクルが終盤に入り米ドルが買い進めにくい点を踏まえれば、今後も底堅い値動きが続くと見込まれ、上値を試す展開を予想する。政策金利は16年8月に史上最低となる1.5%に引き下げられたまま据え置きが続いている。減速する内需、低いインフレ率に加え、このところ住宅市場が調整色を強めていることから、足許で利上げを急ぐ必要は見当たらない。しかし景気が再加速する兆候が見えれば、金利先高観が高まり豪ドルは敏感に反応すると予想する。

一方で、米国、欧州、英国などの主要先進国と比較すると、豪州金利の相対的な魅力が低下していることは事実であり、早ければ本年前半にも豪米政策金利は逆転する。これは00年以来の事象であり、当時は金利差逆転を契機に豪ドル安が進行しただけに注意を要する。

対円相場は、日豪金利差、両国の金融政策の方向性に着目すれば豪ドル優位な状況は不変であろう。下落しても75円近辺では買い意欲が強く、大きく値崩れすることはないと見る。

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