【新年恒例特集】回顧と展望2019/連邦政局(松本直樹)

連邦政局

ナオキ・マツモト・コンサルタンシー

松本直樹

プロフィル◎慶応義塾大学商学部卒業後、会社勤務を経て、1987年オーストラリア国立大学国際関係学科修士課程修了。同大学豪日研究センター博士課程中退。92年5月から95年7月まで、在豪日本国大使館専門調査員(豪州内政を担当)。95年8月から97年1月まで、オーストラリア防衛大学国防研究センター客員研究員。96年8月より政治コンサルタント業務を開始。専門領域は豪州政治、日豪関係、安全保障問題など。2014年日本国外務大臣賞受賞

2019年は連邦選挙の年

2018年は保守連合政府が一挙に混迷の度を深めた年であった。まず昨年の2月には、自由党と連立する与党国民党の党首であったジョイス副首相が、元スタッフの女性との不倫問題によりリーダーを辞任している。ジョイスといえば、エキセントリックながら、地方有権者層の間では高い人気を誇ってきた大物政治家である。不倫問題では大いに物議を醸したものの、ジョイスの失脚、そして知名度や存在感の希薄なマコーマックの党首就任は、国民党には大きなロスとなった。しかもシニア・パートナーの自由党では、より深刻なリーダーシップ問題が発生している。契機となったのは、17年の10月にターンブル保守政府が採択した地球温暖化/エネルギー(電力)政策、すなわち「全国エネルギー保証」(NEG)政策をめぐる自由党内の分裂であった。

自由党の強硬右派を中心とする地球温暖化対策消極派が、NEG政策は電力料金の一層の上昇や、電力供給の信頼性、安定性をより損なうものとして反発し、この激越な政策論争が自由党内の権力闘争、ひいてはリーダーシップ問題にまで発展したのである。ただし実情は、自由党内の反ターンブル陣営が、NEG論争を「ターンブル降ろし」の絶好の機会と捉え、これを利用したというものであった。いずれにせよ、自由党では15年9月の「アボット降ろし」に続き、再度現役の首相が失脚する事態となったのである。

そしてターンブルの後任として昨年の8月に首相の座に就いたのが、ターンブル政権下で財務大臣を務めたモリソンであった。確かにモリソンの庶民性やエネルギッシュな姿勢は、多くの国民に好印象を与えるものであった。ところが、ターンブルの政界引退に伴い実施された連邦下院補欠選挙では、自由党は同選挙区で初の敗北を喫している。その結果、与党保守連合は、下院で過半数に満たない「マイノリティー政権」に陥る事態となったのである。

さて、こうして迎える19年だが、今年は連邦選挙の年である。まず選挙形態だが、ほぼ間違いなく下院と上院半数改選の同時選挙となろう。この形態の場合、選挙実施時期の最終日は5月18日となる。これまで実施時期についてはさまざまな憶測が流れてきたが、現時点では選挙はギリギリまで延ばされ、5月11日もしくは18日となることがほぼ確実である。その理由は、モリソン政府が、通常は5月の第2火曜日である連邦予算案の公表日を大幅に前倒しにして、今年の4月2日とすることを決定したからだ。選挙日の公表はその直後となることから、幾つかの規定を勘案すれば、上記の予測となる。

次に選挙争点だが、これは2つに大別可能で、1つは豪州の選挙全般に共通し、常に争点となる「ルーティン的」かつ非政策的なもの、具体的には、与野党のリーダーシップに対する好悪や評価と、与野党の経済運営能力に対する「漠然とした」評価となる。もう1つが政策争点で、これは各選挙によって争点化する分野も異なるし、しかも選挙により争点の意義にも差異がある。次期選挙のケースだが、ターンブル政権が続いていた場合は、税政策等の経済問題が重要争点となる可能性が大であった。この点はモリソン政権下でも同様の見込みである。

ただ、新政権下では労使政策が重要争点に躍り出る可能性が高く、また地球温暖化/エネルギー政策の争点としての重要性も高まる公算が大と言える。ちなみに政府が労使政策の争点化を狙っている理由は、モリソンが経済政策の一環として同改革を重視しているからだ。またモリソンが傍若無人な労働組合に怒りを募らせると共に、労組の過激な要求にも警戒感を強めているとの事情もある。

更に労使問題では、ショーテン野党党首を攻撃する材料に事欠かないとの政府の思いも指摘できよう。肝心の選挙帰趨だが、最近の「首相交代劇/お家騒動」は、自由党という「ブランド名」に深刻な傷を付けるものであった。そのため、ただでさえ低めであった与党勝利の可能性は、一層低下することとなった。

もちろん、現時点で選挙帰趨の結論を出すのは時期尚早で、選挙は常に「水物」である。ただ、保守連合の勝利のシナリオを想像することはやはり困難と言える。既に多くの有権者の間には、保守政府に抗議したいというレベルを超えて、政府を積極的に懲らしめたいとの感情が醸成されているように思えるからだ。

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