【新年恒例特集】回顧と展望2019/豪州経済(田中健吾)

豪州経済

時事通信
シドニー支局 支局長兼記者

田中健吾

プロフィル◎1994年上智大卒、時事通信社入社。金沢支局、ブリュッセル支局、ニューヨーク総局などを経て2017年9月から現職

豪州経済予断許さず、記録更新でも

豪州経済は2018年も堅調な成長を続け、景気拡大の期間が27年に達し、最長記録を更新した。だが住宅市場は値下がりに転じ、物価も伸び悩むなど力強さを欠いている。米国と中国の貿易摩擦が残り、資源に依存する豪州経済の先行きは予断を許さない状況だ。

金融業界の不正、相次ぎ発覚

18年を振り返ると、最も衝撃的だったのは金融業界で次々と明るみになった不正行為だ。「利益第一」に走り、ずさんな融資やサービス提供の実態が浮き彫りとなった。

一連の不正は、豪政府が17年12月に設置した「銀行、年金、金融サービス産業の不正に関する王立委員会」の調査で分かった。金融業界で近年マネーロンダリング(資金洗浄)などの違法行為が相次ぎ発覚したことから、政府が徹底調査に乗り出した。王立委は公聴会を開き、事前に提出された資料などに基づき、調査担当の法廷弁護士が証言者に質問する形式で調査を進めた。証言には、金融機関や規制当局の関係者、銀行の利用者らが登場した。

大手銀行では、保険請求資格がない顧客への保険商品の販売やローン紹介者に支払う報奨金に絡んだ不正などが日常的に行われていたことが判明。金融助言サービスでは、助言を行っていない顧客から手数料だけを徴収する不正が横行していた。最大手コモンウェルス銀行では死亡した顧客から手数料を徴収していた例が4件あり、うち1件では毎年1,000豪ドル(約8万円)の手数料を10年以上も徴収していたというから、あきれるばかりだ。

特に金融サービス大手APMは、助言サービスで手数料だけを徴収していた問題を隠蔽しようと、当局に虚偽の報告を行っていたと認めたことで批判が高まった。結局、会長と最高経営責任者(CEO)が立て続けに辞任に追い込まれた。同社の株価は急落し、集団訴訟も提起された。

王立委は9月下旬の中間報告書で、短期的な利益を追求する「強欲」が不正の温床になったと批判。顧客の利益をないがしろにして、銀行にとって「サービスや商品の販売が唯一の焦点になった」と指摘した。当局についても不正行為を告発して処罰するための提訴をためらったと分析した。王立委は19年2月1日までに予定している最終報告書で、規制改革などを勧告する見込みだ。

「日の丸ガス田」操業開始

北部ダーウィンでは、国際石油開発帝石が主導する液化天然ガス(LNG)開発事業「イクシス」で7月末に生産が始まった。11月には安倍晋三首相を招いて操業開始を記念する式典も開催された。イクシスは日本勢が約7割を出資する「日の丸ガス田」。生産するLNGは日本の年間輸入量の1割超に相当する年約890万トンで、生産したLNGの6割以上は日本向けに出荷される。日本では地球温暖化対策などからLNGの需要が拡大しており、安定的なエネルギー調達につながる。

原料となる天然ガスは沖合の水深約250メートルの海底から生産。全長890キロの海底パイプラインを通じて陸上の加工施設まで運ばれる。実際に陸上施設を訪れる機会があったが、プラントは「巨大な要塞」のようだった。陸上にある施設の敷地面積は東京ディズニーランド7個分に相当する360ヘクタール。天然ガスを液体に加工する施設2基が設置され、ガスを貯蔵する容量16万5,000キロリットルのタンクも2個設置されている。

TPP、総選挙に注目

19年を展望すると、米国を除いた11カ国による環太平洋連携協定(TPP11)が18年12月30日に発効し、その効果が期待されそうだ。豪州政府では牛肉など農畜産物の海外市場の参入機会拡大などを通じて、30年までに年間156億豪ドル(約1兆2,500億円)の経済押し上げ効果があると見込んでいる。

5月に行われる見込みの総選挙も焦点となる。世論調査では最大野党・労働党が政権を獲得するシナリオが有力だ。同党のショーテン党首が首相に就任し、保守連合の政権下で伸び悩んだ賃金をテコ入れする経済政策が実施されると見ている。

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