ROOS in Japan インタビュー:エディー・ジョーンズさん

 

スポーツ特集

ROOS” in JAPAN


第二回

日本人の血を引く名将

ラグビー日本代表新監督

エディー・ジョーンズさん

(取材=山田美千子、写真=山田武)

昨年末、日本ラグビー・フットボール協会より4月から新たな活動を始める日本代表チームのヘッド・コーチ(HC)として、元オーストラリア代表ワラビーズでHCを務めた名将エディー・ジョーンズ氏の就任が発表された。「エディー・ジャパン」の誕生である。 日本を世界レベルまで引き上げ、かつ日本らしいラグビーができる指導者であること、2015年RWC/19年RWCまでの戦略的ビジョンを持っていること、世界レベルのコーチング・スキルを持っていること、国際的なネットワークを持っていること、日本の一貫指導体制と連携・協力できること、日本人コーチを育成できる人材であること、多くの課題に向かって挑戦して、課題を的確に克服できる情熱を持っている人材であること——という選考基準に合致したのだ。 03年のRWCオーストラリア大会ではHCとしてワラビーズを準優勝に、07年フランス大会では南アフリカ代表スプリングボクスをテクニカル・アドバイザーとして優勝に導くなど、世界レベルでの経験と実績が豊富。またオーストラリア人と日本人のハーフであり、日本についての造詣も深く、日本でも多くの実績を残している。 そのエディー・ジョーンズ氏が持つ、日本ラグビー再生のためのビジョンとは。

 

日本代表HC就任おめでとうございます。一部のファンの間では以前から、「エディー・ジャパン待望論」がありました。

そうですね。そのようなお話があることは常に感じておりました。

 

96年には日本代表のFWコーチをされ、また大学、社会人、そして代表チームでのコーチ経験もあり、日本のラグビーを熟知している。そのエディーさんがHCに就任したことで「エディー・ジャパン」にファンは大きな期待を寄せています。

そうですね。とてもいいフィットかなと思っていました。私は日本人のハーフでもありますし。

私がプレーしていたオーストラリアのクラブはランニング・ラグビー発祥のチームなのですが、日本はそういった形のラグビーを目指していくべきではないかと思います。世界の上位15チームを見ても、日本代表より体格が大きい。ですからフィジカル面で劣っている部分をほかで補わなくてはならないのです。それにはフィットネスを高めなければならないし、スキルを磨かなければならない。さらに、クリエイティブに、創造力をも使ったプレーをしていかなくてはなりません。

今の日本のラグビーはオーソドックスなスタイルに変わってきてしまった。オーソドックスにプレーしても世界のトップ10には入れません。最も重要なのは勝つことです。日本代表が勝つためには他チームにない強みを持つことです。

例えば、オールブラックスは高い身体能力。ワラビーズは頭脳的でスマートなプレー。スプリングボクスは強いフィジカル。イングランドはセットピースのチーム。では日本には何があるのか。我々には速さがあります。日本人は狭いスペースで速く動くことができる。ボールを早く動かし、試合のテンポを(自分達が)コントロールしていく。日本人の体つきを上手く生かした、頭を使ったプレーをして、我々のアドバンテージにしていくことが必要です。

 

 

ジョージ・グレーガン氏をはじめ、これまでにお話を伺った元ワラビーズの選手も口々に、日本のラグビーは「速い」と言います。

世界でも一番速いラグビーだと思います。ただ、単に速くプレーすればいいというわけではないのです。速くてもミスが多くては意味がない。精度の高いプレーが必要なのです。80分間、速いプレーをし続けるということは不可能ですからね。

先にお話したように、試合のテンポをコントロールすること。スピードのある中で精度の高いプレーをすること。この2つをこれからやっていきたいと思っています。

世界的に見てもいい選手というのはミスが少ない。例えばダン・カーター選手(オールブラックス)です。すごいプレーは2〜3試合に1回くらいですが、彼はスキルの高い選手であり、あまりミスはしないですよね。

 

 

それでは、どんな選手を選びたいとお考えでしょうか。

FWにはタフな選手。例えば東芝の大野均選手です。彼は理想的な代表選手だと思います。フィットネスもあるし、ハートでプレーもしてくれますし。FWにはそういった選手が必要です。

BKにはスキルのある選手。アタックの仕方もユニークでテクニックもある選手、例えばサントリーの小野澤宏時選手のような選手が必要となってきます。

 

国際試合をテレビ中継で見ると、国歌斉唱の際に選手1人ひとりがアップで映し出されますが、オーストラリア、南アフリカなど強豪チームは選手が歌っています。曲調もあるかもしれませんが、日本は目を閉じて聞き入ってしまう選手が多いように見受けられ、桜のジャージに対する誇り、代表の意識が他国に比べると弱いように感じることがあるのですが。ワラビーズのネイサン・シャープ選手などは映像を通して彼の熱い想いがひしひしと伝わってきて、感動を与えてくれるのですが…。

まずは代表のジャージを着ている誇りというものを、もう1度浸透させないといけないですね。それには、代表チームを日本で一番いいチームに作り上げることが必要。そうすれば自ずと誇りというものも生まれてくるものです。 誇りやプライドが戻ってくれば、勝つことができると思います。勝つことができるようになれば、スタジアムに足を運んでくれるファンも増えるのではないでしょうか。

ところで、なぜ日本人の選手達は試合の後に涙を流すのでしょうか。感情的になるのは試合前と試合の最中であって、試合後にもっとやっておけばよかったという後悔の念を持っても仕方がないのです。 試合に臨むにあたっては全力を尽くす最高の準備をしなくてはいけません。ワラビーズやスプリングボクスの選手が歌っているというのは、その試合に集中し、感情を高ぶらせ、試合を開始する準備が整っているということなのではないでしょうか。

代表のジャージを来てプレーするというのは本当に名誉なことなのだと、選手に感じてほしいと思います。そして、試合の後は泣かなくていいんです。全力を尽くし、十分な力があれば勝てるのです。もし不十分だったら勝てない。

でも、例えその試合に負けたとしても、ただ落ち込むのではなく、次はどうしたらいいのかと考えるべきなのです。 プロフェッショナルという言葉はいろいろな意味で使われていると思うのですが、私は、お金の面だけでなく、自分がどのように準備をしていくかということだと思うのです。リコーでプレーしているイングランド代表のジェームス・ハスケル選手、彼は遠征に行く新幹線の中で食事をするのに出来合いのものは食べない。食べ物、飲み物を自ら用意してくるのだそうです。なぜなら、それ(テイクアウトの食べ物)が彼自身にとっていい準備じゃないと分かっているからなのです。そういうことがプロフェッショナルだと思うのです。小さなことですが、それが大事なんです。

いつも、どうやったら良くなれるかということを頭に置いて最良の準備をしていくという意識を浸透させなければならないと思います。

 

また今回、選手の育成とともに指導者の育成も行うということですが、コーチとして成功する人の条件とは何でしょうか。

どうやったら勝てるのかということに関する理解度が高いこと。ほかのチームにない強みを探ること。それができるかどうかだと思います。スポーツはビジネスの世界と似ていると思います。 アップル社はiPhoneを作り大ヒットした。彼らは次は何だろうと考え、そこからiPadを作りました。他社も似たものを作りました。でも、コピーはオリジナルに比べれば良くないんです。コピーには向上心がないから。

ラグビーにも同じことが言えると思います。まずはどうやったら勝てるのだろうかと探り、それが分かったら次はどうしたらよいか、さらにその次は、と。どうしたら最大限の能力を引き出せるのかということを常に追求し続ける。指導者も向上心を持ち続けなくてはならないと思います。

 

「エディー・ジャパン」とワラビーズとの対戦があれば、たいへん興味深いと思います。

すばらしいことだと思います。ただ、日本は勝たなくてはいけないですけどね。

私はオーストラリア人で、5年間ワラビーズのHCを務めました。ワラビーズをコーチしたことを誇りに思っていますし、違うチームのコーチをしていても彼らと対戦することはたいへん名誉なことだと思っています。 チームをコーチするのは結婚生活と同じだと思うんです。1回に1つのチームしか愛することはできません。今はジャパンだけです !

最後にオーストラリア在住の日本人、オーストラリアで日本を応援してくれているファンへメッセージをお願いします。

日本のラグビーがこの先前進していくために、エキサイティングで、秩父宮のスタジアムが満員になるくらいファンが集まってくれるようなゲームをしていきたいです。

在豪の方々が、日本に一時帰国される時、「日本代表の試合があるから、この時期に帰ろう」と日程を合わせてもらえるような試合をしていきたいと思っています。応援よろしくお願いします。

まもなく船出する「エディー・ジャパン」に大いに期待したい。

 

 

 

PROFILE
Eddie Jones
1960年1月30日タスマニア生まれ。シドニー大学卒。父はオーストラリア人、母は日本人で、日本語は堪能。現役時代のポジションはフッカー(HO)。ワラビーズとしてのプレー経験はないが、シドニー代表(82〜91年)、NSW州代表(84〜90年)の経験を持つ。96年日本代表FWコーチをはじめ、ACTブランビーズ(97〜2001年)、オーストラリアン・バーバリアンズ(1999年)、オーストラリアA代表(2001年)でHCを経験。豪代表ワラビーズHC(01〜05年)として03年ワールド杯(RWC)で準優勝、その後レッズHC(07年)。南アフリカ代表スプリングボクス(07年)ではテクニカル・アドバイザーとして07年RWC優勝に貢献。サントリー・サンゴリアスでは09年にGM、10年からGM兼監督。そして12年4月から日本代表HC。その手腕に期待がかかる。

(取材・写真=板屋雅博)

 

新着記事

新着記事をもっと見る

NICHIGO CHANNEL

新着イベント情報

新着イベントをもっと見る