日本に豪ブームを!─アンドリュー・ライリー氏インタビュー

 

ROOS in Japan

“ROOS” in JAPAN

第4回

オーストラリア政府観光局 日本・韓国局長

アンドリュー・J・ライリーさん

 日本在住が長く、日本政府や在日本多国籍企業での勤務経験があるなど自他ともに認める「日本通」のライリー・オーストラリア政府観光局日本・韓国局長に、日本人観光客のオーストラリア誘致について、その戦略をうかがった。 (取材=板屋雅博)

——局長は日本でのご経験や滞在が長いと聞いています。簡単にこれまでの日本との関わりをご紹介ください。

初めて日本に来たのは11歳の時。父親の仕事の関係で家族とともにシンガポールから船で東京へ来ました。東京オリンピックの少し前ですね。新幹線が開通し東京タワーも完成。すごい勢いで都市が近代化していく、エキサイティングな時代でした。カラーテレビ放送も始まっていました。シンガポールではテレビ放送が1日に数時間しかなく、その差は歴然でしたね。

私の人生のほとんどはアジアが中心でしたが、日本ではさまざまな産業に従事し、常に関係がありました。具体的には、通信、テレビ放送、大規模不動産開発、通産省関係、そして観光業です。

私は日本の多くの姿を見てきましたが、変化し続ける日本に飽きることはありませんでしたし、このように日本と関わってこられてたいへん幸せだったと感じています。日本人は誠実で勤勉、常に上を目指す姿や、顧客を大切にする姿勢を持っています。そんな日本の人々が大好きですし、彼らとともに過ごせることをとても誇りに思います。

——日豪関係についてのお考えをお聞かせください。

先日行われた東アジア首脳会議中にオーストラリアのトニー・アボット首相が、日本を「アジアで最も良い友人」と述べたことについて、残念ながら日本ではあまり報道がありませんでした。日本とオーストラリアは過去60年以上をかけて、独自かつ成熟した、そして友好的な関係を築いてきました。民間レベルでは1,300万人以上の日本人がオーストラリアを訪問しているほか、日本が最初にワーキング・ホリデー制度の協定を結んだ国であり、多数の姉妹都市提携や留学生、多数の在留邦人、豪人のコミュニティーもあることから、その親密度がうかがえると思います。

——観光局長としての展望をお聞かせください。

1つは日本から豪州への年間渡航者数をかつてあった50万人へと戻すことです。1990年代には80万人を越えていましたし、2007年でも50万人を越えていました。私の任期のうちに50万人まで戻すことが目標です。

もう1つは質の向上です。パッケージ・ツアーでグレート・バリア・リーフなどの大自然やオペラ・ハウスなどの都市を観るスタイルに加え、ダイビング、シュノーケリングをはじめとするアクティビティーやアウトドア体験、ワイルドフラワー鑑賞、食事やワインを楽しむなどの、体験型スタイルへと幅を広げること、そのバラエティーを広げることが大切だと考えています。

今の日本の人々は趣味が多彩になり、各々が千差万別の夢を持っています。豪州はその夢を実現できる場所です。豪州は広大な国。手つかずの大自然から近代的な都市まで多彩な魅力があり、そして安全で、また英語が通用するという利点もあります。

——具体的に日本人にとってのオーストラリアの魅力とは?

観ることと経験することの2つの魅力があります。

観る魅力としては、グレート・バリア・リーフ、ウルル(エアーズ・ロック)などの大自然の景観があります。現地の人々はとても友好的で、街も安全ですので、テレビやパンフレットで得た情報をもとにして現地を観て楽しむことができるでしょう。

もう1つの魅力は、経験する楽しみです。若い人から年配の方までいろいろなことを経験できるでしょう。例えば、メルボルンでカフェ文化を楽しむ、アデレートでワインや食事を楽しむなど、各地の都市で経験できる体験や、ハンググライダーやスキューバーダイビング、サーフィンなど、自然を相手にしたスポーツといった経験もあります。経験の延長として現地のスクールなどで学ぶこともできます。私の周りにもアロマセラピーやバリスタ、ワイン製造を学んできた知人がおります。若い人たちはワーキング・ホリデーを利用して、現地で働くという経験もできます。

——ワーキング・ホリデー制度も観光においては重要なファクターとお考えなのでしょうか。

その通りです。毎年8,000人ほどの日本人が、このプログラムを利用してオーストラリアを訪問しています。1年、2年といった長い時間を豪州で過ごし、さまざまな経験をし、理解を深めることは、日豪関係の強化にとって重要なことです。

ワーキング・ホリデー制度を利用して若い人たちにオーストラリアに滞在してもらう。これも当局の仕事の1つです。

——日豪観光交流年の今年、日本でも多くの企画が進められていますが、観光客の手ごたえはいかがでしょうか?

前半にも良い反応がありましたが、多くの企画は今年の後半、これから実施される予定です。

例えば、日豪間には100以上の姉妹都市があり、これまでも各地で多くの人々の交流が進められていますが、この観光交流年を契機にして姉妹都市関係がより活気付くことが期待されています。

例としては以前、私が観光局に在籍中、日本の姉妹都市の大学などを数名のオーストラリア人が車で回り、オーストラリアの魅力を紹介する「ロードショー」を実施しました。これも関係を深める良い機会となりました。今年後半の日豪観光交流年で行われるこのようなさまざまなイベントが、今年だけでなく今後に生かされればと思います。

——今後、オーストラリアへの渡航客を増やす具体的な方策は?

オーストラリアへの渡航者を増やすためには、以下の3つの活動を行うことが重要と考えます。

まず第1に、旅行業界と密に連携を図り、新しいプロダクトやエキサイティングな観光素材、日本人旅行者に合う旅行商品にフォーカスし、紹介していきます。ターゲットは、個人旅行者をはじめ、旅慣れた旅行者や旅先に高い期待をもつ方々です。

それにはまず、日本の旅行業界の方々に豪州を熟知していただく必要があると考えます。主な活動として、当局では、豪州旅行業界の方々と商談の機会となる年1度のトレード・ショー「ATE (Australian Tourism Exchange)」へ企画担当者やオペレーターの方々を含む、決定権を持った日本の旅行業界の方々をご招待しています。ATEは、世界各国より旅行会社が一堂に会し、豪州の旅行関連業者と15分間の商談が計5万回以上行われ、効率的に商談していただく絶好の機会となっています。

2つ目は、最前線で働く旅行業界向けのオンライン・トレーニング・プログラムや視察・研修旅行の実施、さらに州政府観光局と共に日本でワークショップやセミナーを旅行業界向けに開催することです。旅行業界向けのトレーニング・プログラムを拡充していきます。

最後に3つ目は、消費者の需要を喚起する消費者向けマーケティングです。オーストラリア政府観光局では、テレビでの露出強化に努めており、年に100回以上、テレビでオーストラリアが紹介されました。

同時に、デジタルやSNSでのマーケティングを確立させることも重要です。現在、オーストラリア政府観光局が運営する日本語のFacebookページ(https://www.facebook.com/AustraliaJP)は8万6,000人以上のファンがおり、ほかの外国政府観光局が運営する日本語のFacebookと比べ、約4倍近くのファン数を獲得しています。

さらには、メディアの特性を生かした統合型のキャンペーンを行い、インパクトのあるものにすることも重要です。TV番組をはじめ、紙媒体や映像広告、デジタル、SNSといった媒体を用い、旅行業界の商品広告とともに仕掛け、インパクトのある露出を増やします。また、ワーキング・ホリデーやビジネス・イベントなどの、特定のセグメントなどを対象にしたキャンペーンも行います。

今年、2013年のJTBレポートではオーストラリアは「最も行きたいデスティネーション」の第3位に戻ってきており、この潜在需要をいかに実現化するかにかかっているわけです。実際の渡航者との差が大きいのが実態であり、簡単なことではありませんが、実行可能と信じています。

しかし、これらの活動は、航空会社によるオーストラリアへの座席供給なくしては意味がありません。過去10年間で、オーストラリア−日本間の航空座席数は激減しています。オーストラリア政府観光局の一番のプライオリティーは航空会社と連携し、航空座席供給を増やすことです。このために、オーストラリア政府観光局では、航空会社による新路線運航用に予算を確保しています。

——ワインの消費量が日本で増えていますが、生産国として観光に生かせていますか?

オーストラリア政府観光局では今後、フード&ワインにフォーカスした「レストラン・オーストラリア」というコンセプトのキャンペーンを開始いたします。

オーストラリアを訪問した日本人は、オーストラリアには素晴らしい食事とワインが楽しめる国であることを行って初めて知るというデータがあります。

大自然や都市を観光する魅力に加えて、美味しい食事やワインの魅力は、豪州の魅力をさらに高めてくれるはずです。フード&ワインは当局にとって重要な戦力と言えます。

個人的にはフード&ワインは単独では旅行の目的にはなりにくいとは思いますが、数多い旅行プランにフード&ワインを追加することですることでオーストラリア旅行の魅力はさらに増すでしょう。

問題点はどうやって良いフード&ワインをプロモーションするかです。オーストラリアの料理とは何なのかという点もあります。現在、ワイン・オーストラリアと組んで日本のメディアをオーストラリアへ取材誘致するプログラムも実施しています。オーストラリアを訪問する日本人に良いレストランやワイナリーを紹介することや、食べ方の提案をすることなども提案していき、観光誘致につなげられたらと期待しています。

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