ROOS in Japan インタビュー:ブルース・ミラーさん

ROOS in Japan

ROOS” in JAPAN


第1回

日本語堪能の親日家アンバサダー
駐日オーストラリア大使

ブルース・ミラーさん

日本を舞台に活躍するオーストラリア人キーパーソンにインタビュー。記念すべき第1回は、1978年に国際交流基金の招待で初来日したことがきっかけで大学で日本語と日本文学を本格的に学び、自他ともに認める「親日家」となったというブルース・ミラー駐日オーストラリア大使。東京都港区のオーストラリア大使館でお話を伺った。

ーーー大使のこれまでのご経歴、専門分野などについてご紹介ください。

外務貿易省、首相内閣省内で外交政策に関わる仕事、具体的には海洋法政策やアジア太平洋地域の安全保障問題に取り組んできました。駐日オーストラリア大使着任前は、国際政治経済および安全保障に関する首相直属の情報評価機関である内閣調査庁(ONA)の副長官を務めていました。

専門分野は対北東アジア関係、対日関係で、2度の東京勤務を経験しています。日豪関係においては、政治、経済および安全保障における両国の関係強化が重要ですが、大使としての義務と責任において職務を遂行するだけでなく、個人的な深い思い入れ、特に人的交流の促進については、強い思いがあります。

ーーー日本語がとても堪能でいらっしゃいます。

11歳のころ、父から「外国語を学ぶのであれば、アジアの言葉を選びなさい」と言われ、この時から日本に強い思いを抱くようになりました。当時はオーストラリア人が日本語を学ぶということは珍しいことでしたが、1978年に国際交流基金の招待で日本を訪問したのがきっかけで、帰国後、シドニー大学で日本語と日本文学・歴史を専攻し、この時に日本語を本格的に学びました。

ーーー2度の在日オーストラリア大使館勤務を経て、昨年10月から大使として着任されました。大使がお持ちの日本に対する印象は?

過去30年以上のうち通算で11年を日本で過ごしていますので、感覚としては両国を行き来する日本の商社マンに近いかもしれませんね。学生として、そして外交官として日本で暮らしたこれまでの経験から、私にとって日本は“第2の故郷”という感じです。

日本は昨年、東日本大震災で甚大な被害を被りました。復興には大変な困難が伴うことでしょう。しかし、日本、日本国民の皆様にはたいへんな強靭さが備わっていることを私は知っています。これから先直面する困難を必ずや乗り越えることができると確信しています。

ーーー日豪関係の現状について大使のお考えをお聞かせください。

オーストラリアと日本は“自然な”パートナーです。我々両国はアジア太平洋地域のリーダーであり、過去100年以上にわたり、先見の明を持ったビジネス界の人々や政治家、教育者によって築かれた経済的、政治的、戦略的、文化的な深いつながりを共有しています。

中国の台頭はありますが、日本の経済は依然として世界の中で重要な役割を担っています。人口の面では中国やインドの10分の1以下ですが、その日本が経済的観点では中国と同規模であり、インドをはるかに上回っています。

また、日本がわが国の重要なパートナーであるのは、その経済力のためだけではなく、民主主義、法の支配、契約義務の遵守、自由主義経済などの価値観を共有しているからです。そして、ともにこのような価値観が社会を強固にしてくれることを知っているためです。

米国が長きに渡りアジア太平洋地域と世界に安定と平和をもたらしてきた点を認識していますし、ともに米国との緊密な同盟国でもあります。この点からも、両国は“自然な”パートナーと言えるのです。

両国の戦略的関係は、過去数年の間にその重要性を増してきました。1990年代、私が最初に日本に赴任した際、多くの日本政府の方々は、なぜ地域の安全保障問題をオーストラリアが協議の議題にしたがるのかと戸惑っているようでした。しかし現在は、わが国は、日本が米国以外で、いわゆる「2プラス2」と呼ばれる外務・防衛閣僚会議を開催している唯一の国です。またわが国は日本が米国以外で「物品役務相互提供協定(ACSA)」への署名を行った唯一の国なのです。

両国は現在、情報の共有を含め、さらなる協定の締結に向けて動いており、実現すれば、より緊密な協力を行えるとともに、米国を含めた3カ国関係をより強固に構築することが可能となるでしょう。

ーーー両国が交渉中の日豪経済連携協定(EPA/FTA)に関してご意見をお聞かせください。

既に4年以上も交渉を続けている日豪経済連携協定(EPA/FTA)の締結に向け、両国は迅速に行動することが重要です。農業は両国が解決すべき交渉事項の1つであり、日本にとって重要な懸案事項です。わが国は日豪経済連携協定によって、むしろ日本の農業が強化され、食糧安全保障を高めることに貢献するのだという強い考えを持っています。

私は農業に関する議論が未来に目を向けた、より建設的なものになってほしいと思っています。農業分野の強さを示す指標として用いられている食糧自給率の議論などがそうです。

日豪経済連携協定は、日本の食糧安全保障を強化するものです。わが国の農業や食品加工施設に対する日本企業の投資が促進され、わが国から日本の高い水準に見合った健康的で安全な食品を輸入することで、こうした企業はより多くの利益を上げられるようになるでしょう。

このことはコストの低減につながり、食品の選択肢も広がります。そしてさらに重要なのは、正しい政策が実行に移されれば、日本の農業の強化にもつながるということです。

農業保護主義の結果として、日本の食糧自給率は1960年の79%から、2010年の39%にまで低下しました。日本の農業の衰退はどの国のためにもなりませんし、事実、日豪経済連携協定を通じてこうした事態が起きることはあり得ません。わが国の農業産出量は既に限界に近いところまで来ているのです。

ーーー東日本大震災後、オーストラリアは日本の被災地に対してさまざまな支援を惜しみませんでした。

昨年は1月にはQLD州をはじめとした各地で大規模な洪水被害があり、その後、東日本大震災が起こりました。そしてこの両国の災害時ほど、人的交流の重要性が明確になったことはありません。

QLD州などの洪水の際には、日本企業や市民の皆様から多くの寄付金が寄せられました。また、東日本大震災の際には、オーストラリア国民や企業が多額の義援金を寄付しました。オーストラリア政府も、オーストラリア赤十字社・太平洋災害アピールを通じて1,000万豪ドルを寄付するなど、迅速な対応を取りました。政府が派遣した76名の都市捜索救助隊は、宮城県南三陸町で生存者の捜索活動に携わりました。

オーストラリア空軍のC-17輸送機を派遣し、500トンを超える救援物資、人員の国内輸送を支援するとともに、福島第1原子力発電所での事故の収束に向けてC-17輸送機をさらに2機派遣し、特殊ポンプの輸送を行いました。南三陸町へ多数の食糧救援物資を寄付しました。

また、オーストラリア政府は、最も被害の大きかった地域の大学生、教職員、専門職従事者に渡航費、宿泊費および学費を提供し、オーストラリアでの短期滞在を支援する新たな教育支援プログラムや、エンデバー奨学金に毎年10名分の日本枠を設けるという、継続的なコミットメントも発表しました。

現在、豪日交流基金の支援の下、南三陸町から20数名の中学生をQLD州ゴールドコーストに招いて語学研修に参加していただく「生活体験プログラム」の実現に向けて動いています。

このような支援は、わが国と日本、両国国民の間の温かい友好関係の真の証だと言えます。

ーーー大使在任中の最大のミッションは何でしょうか?

大使の任務として日豪関係の強化に注力しています。政治や貿易、経済、安全保障などの分野に関わるものです。両国の関係はアジア太平洋地域、そして全世界にとっても、極めて重要です。私は特に人的交流こそが両国の未来にとって最も重要であり、今後も強化されるべき分野であると考えています。

両国民間の友好関係は長い年月をかけて発展してきました。その中で重要な役割を果たしたのが、両国を行き交う多くの観光客です。

お互いの国を訪れた個人的な経験が、相手国についての認識を形作るわけですが、我々の職務はそれを最大化していくことです。私と在日オーストラリア大使館のスタッフは、教育や人々の交流がより深まるように、でき得る限りのことを行うことを目標の1つとして掲げています。わが国が、日本にとって再び人気のある海外旅行先となり、また、より多くの留学生にお互いの国で学んでほしいと思っています。

日本人留学生には有意義な体験をしていただき、それが呼び水となって多くの若い日本の皆さんがオーストラリアを訪れるようになればと願っています。

ーーー最後に、大使お気に入りの日本についてご紹介ください。

まずは活気ある刺激的な日本の首都・東京。観光で数日間滞在しても、決して飽きることはないと思います。そして、京都や大阪、奈良、神戸など関西が大好きなのですが、日本に来て最初に暮らした地域だからかもしれません。

京都東山の「哲学の道」や奈良の「山の辺の道」を散策するのは私の楽しみの1つです。真冬の城之崎温泉で蟹を満喫したり、和歌山県の熊野古道を訪ねるもの良いものです。

松江から、出雲大社に立ち寄って山口まで行く山陰の海岸線や、人情味あふれる国際色豊かな都市、福岡や長崎、有田や唐津といった佐賀県の焼き物の街も素晴らしいと思います。

東北や信州地方には素晴らしい温泉や美しい景色、優れたハイキング・コースや登山コースなどが多くあり、別の趣があります。

北海道の雄大な自然も必見で、本州の夏の酷暑を逃れる人々にはうってつけです。個人的には礼文島を訪れ、新鮮なウニを味わうのが好きです。

香川県直島など瀬戸内海の島々には、瀬戸内国際芸術祭の舞台でもある世界レベルの美術館があり、訪れる価値があります。(取材・写真=板屋雅博)

 

PROFILE
Australian Ambassador to Japan / Bruce Miller
シドニー出身。シドニー大学で人文学士/日本語学・日本文学・歴史/法学士を取得。1986年に外務貿易省に入省後、在日オーストラリア大使館一等書記官(後に参事官へ昇進)(1992~96)、首相内閣省防衛情報部シニア・アドバイザー(97~98)、アジア太平洋安全保障課課長(99~2000)、戦略政策部部長(01~02)、北東アジア部部長(03~04)、在日オーストラリア大使館政務担当公使(2004~08)などの要職を歴任。11年10月より現職。対東アジア関係の課題や地域安全保障問題のみならず、世界規模の枠組みといった外交政策に豊かな経験と見識を持つ。特に日本の事情には詳しい。趣味は芸術や文学、ハイキング。

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