パリ在住 正子ドラリューさん

世界の日本人ボランティア

世界の日本人ボランティア (15)
パリ在住 正子ドラリューさん
女性と子どもの国際人権擁護活動に従事  
「やっぱり人間て、素晴らしい」

Text by Kenji Sakai
 世界各地で問題となっている女性や子どもに対する不当行為に対して、“自分にできることが何か”を見つめ行動する、勇気あるボランティア・ワーカー、正子ドラリューさん。彼女が暮らすパリで話を聞いた。


インタビューにはきはきと答えてくれた正子さん

世界の日本人ボランティア
パリの街並みをバックに

母娘に息づいているボランティアの精神
 正子ドラリューさんは、父親がフランス人、母親が日本人で、パリ生まれの28歳。
 母親は団塊の世代にあたる人で、1960年代に海外渡航自由化の後、60年代後半から70年代にかけて、多くの日本人の若者たちがソビエト経由でヨーロッパを目指したが、彼女もその1人。パリに着いた後、パリジャンと恋に落ち結婚。家庭を築き、正子さんたちが誕生する(2人の弟がいる)。
 ちなみに母親は現在、ネパールのカトマンズに住み、現地でボランティア・ワークをしているというから、親子2代にわたってボランティアのスピリットが息づいているようだ。
 正子さんは、パリで学業を終えた後、2004年にカリフォルニアの大学へ短期留学。国際学部に籍を置き、視野を広げた。そこでアメリカとフランスの大きな違いを実感する。
 個人的な感想として前置きし、アメリカは広大で隔離された国という印象を持ったとのこと。それと一般的に、政治に関して自身の意見を述べることをタブー視された国という感じがしたとも言う。
 フランス語はもちろん、英語とスペイン語がペラペラのトライリンガルな彼女。母親の薦めで高校生の時に日本語のコースを取ってチャレンジしたが、漢字が難解なことに閉口してギブアップ。代わりにスペイン語をマスターしたそうだ(英語でのインタビューとなった)。
 日本へは毎年夏休みに行っており、日本の現状には精通している。原宿や渋谷のこともよく知っているし、残虐な事件が多発する世相も分かっている。正子さんは、日本の若者たちを見て、ある種の孤独感を感じると言う。うまく解釈できないが、若者たちによる犯罪多発の源はそこにあるのではと、首をかしげた。が、それでも全体的には、日本はまだまだ平和で安全な国だと断言した。
 日本女性のファッションに関しても印象を聞いた。パリでは、皆ができるだけほかの人と違うニュアンスを出そうとしているのに対して、日本ではできるだけ皆と同じものを競うのが大きく違う、のだそう。特に日本女性の、ケリーやバーキンなどの高価なバッグへの熱は、正子さんには理解できないらしい。パリでも上流社会の若い女性には、同様の現象が見られるとのこと。
 日本人と日本食が大好きという正子さんだが、現在パリは寿司ブーム。至る所に回転寿司店が見られるが、「味がちょっと」と言い、肩をすくめた。


アムネスティ・インターナショナルとの出会い
 19歳の時、何か社会に貢献したいと決め、いろいろな団体を調べた結果、一番ピッタリときたのがアムネスティ・インターナショナル(以下AI)だった。
 日本に滞在中のある時、応接間でうたた寝し、起きた時につけっ放しにしていたテレビから流れていたのが、イスラエルで起きた市民に対する不当な投獄事件のドキュメンタリー番組。正子さんはその事件に関して行動するAIに感動し、そのことが潜在的に自分をAIに向かわせたと言えるかもしれないと教えてくれた。
 AIでのボランティア・ワークは、死刑廃止の運動だけではなく、世界で不当な扱いを受けている女性や子どもたちの支援も重要な活動の1つ。具体的には、当地の政府に訴え、人々の署名を集め、デモをし、メディアに訴え、まず人々に関心を持ってもらうことが基本。正子さんは既にグアテマラ共和国とアルゼンチンへ出かけ、女性や子どものために活動をしている。グアテマラでは過去、何万人もの女性がさまざまな理由で非道に虐殺されている。現地で立ちはだかる大きな壁に絶望的にもなったが、そこで活動するあるアメリカ人女性を見て、大きな勇気を与えられた。彼女は小規模ながら子どもたちのための学校を作り、正子さんに「性急にならないで。できることから実行すればいい。どんな些細なことでもいいから」と言葉をくれたという。
 07年にはアルゼンチンへ行き、1980年のノーベル平和賞受賞者アドルフォ・ペレス・エスキベル氏がオープンしたホームレス・キッズの施設でボランティア・ワークをした。施設に暮らすほとんどの子どもたちが児童売春の犠牲者で、そういう子たちと一緒に生活し、社会に大きな義憤を感じたという。またそれと同時に、自身の非力さを痛感する一方で、どんな凄まじい逆境の中でも強く生きようとする子どもたちのエネルギーや生命力に感銘し、大きな希望を与えてもらったと気負いなく語る。
 ボランティアは創造力のあるリレーションシップ、と正子さんは説明する。与え与えられるフィフティー・フィフティーのリレーションシップ。その姿勢のままで長い長い道のりを歩き続けなければならない険しいものだが、活動を通じて何かが少しでも前進すれば、大きな生きがいを感じることができる。「世界で起きている、特に子どもたちに対して起きている不正に、絶望を感じることはもちろんひんぱんにあります。でも、アルゼンチンで出会った子どもたちを思い出すと、やっぱり人間は素晴らしいと思い直せるんです」と、言葉を結んだ。
 現在パリで就職活動中の正子さん。「これから仕事を見つけ、結婚し、家庭を築くというプロセスを経るはずだと思いますが、ボランティアはいつでも身の回りにあるもの、言い換えるとボランティアは生活の一部です」と胸を張る。
 インタビューの後、パリの街並みを背景にした写真をリクエストし、外で立ってもらった。実際の正子さんは、世界を股にかけてボランティア・ワークをしてきたとは信じられないほど、華奢な美少女という風情だが、マロニエの葉が色づくパリの街に、思っていた通りぴったりと決まっていた。    
(本紙・坂井健二)

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