【教育特集2015①】オーストラリアの教育制度

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就学前教育から大学入学まで

日本と違うオーストラリアの教育制度

オーストラリアで子育てをする中で、知っておかなければならない最も大事なものの1つが教育制度。日本では幼稚園・小学校・中学校・高等学校と分かれているが、オーストラリアではどのようになっているのだろうか。どんな点が日本と同じで、どんな点が日本と違うのだろうか。今回は、就学前教育から大学入学までのオーストラリアの教育制度についての基礎知識を、NSW州を例に紹介していきたい。 取材・文章 空閑睦子

教育制度の概要

オーストラリアで子育てをする時に、教育制度についての知識は必須。もっとも、一番大切なのは、どのような教育制度があるのかを調べた上で自分の子どもをどう育てるかという将来のビジョンを持つことだ。「どこの大学に通わせるのか、バイリンガルに育てるのか、マルチリンガルに育てるのか、将来どこで暮らすのか、ご家庭でよく話し合い、お子さんの性格を考えた上で、教育機関を選んでほしいと思います」と、幼児から大人のための総合教育センター「Universal Kids」代表の内野尚子氏は話す。そして、「一度決めたからといって、それを目標にがちがちに進めていくのではなく、途中で適宜修正をしながら、子どもにとって最善の方法を選んでほしい」と続ける。

こうしたアドバイスをしっかり心に留めた上で、まずは教育制度の概要について見ていきたい。

連邦国家であるオーストラリアでは、教育制度は州ごとに異なっている。NSW州では、NSW州教育・地域社会省(NSW Department of Education and Communities、略称DEC)が公立学校とそのほかの義務教育全般を担当し、その下部組織である地方事務所が教育行政を担っている。また、NSW州教育委員会(Board of Studies, Teaching and Educational Standards NSW、略称BOSTES)が、私立学校、教育カリキュラム、義務教育修了証明書(Record of School Achievement、略称RoSA)、高等学校卒業認定試験(Higher School Certificate Examination、略称HSC)を担当している。

表1 2015年の各タームの日程

Term 区域 日程
ターム1 東部  1月28日(水)〜4月2日(木)
西部  2月4日(水)〜4月2日(木)
ターム2 東部/西部  4月21日(火)〜6月26日(金)
ターム3 東部/西部  7月14日(火)〜9月18日(金)
ターム4 東部/西部  10月6日(火)〜12月18日(金)

NSW州の大学入学までの教育制度は、就学前教育、準備教育(キンダーガーテン、通称キンディ)、初等教育(プライマリー・スクール)、中等教育(ハイ・スクール)に分かれる(図1)。就学前教育は日本の幼稚園や保育園に相当する。プライマリー・スクールは日本の小学校に、ハイ・スクールは中学校および高校に相当する。日本のように学年が小学校、中学校、高等学校で区切られておらず、初等教育のイヤー(Year)1から中等教育のイヤー12までの12年間を通して「イヤー○」という呼び方をしている。義務教育期間は、イヤー1からイヤー10まで。学期はタームと呼ばれ、4学期制であり、新学期は1月末から始まる(表1)。

基本的な就学年齢についてだが、プライマリー・スクールへは、その年の7月31日までに6歳になる子どもが、同年に始まるイヤー1に入学することになっている。またその1年前に、プライマリー・スクールに併設されたキンディーに、義務ではないが、ほとんどの子どもが通う。

もっとも、オーストラリアでは保護者が入学時期を決めることも可能で、子どもの状態によって、早めたり遅らせたりすることができることも覚えておくと良いだろう。

図1 NSW州と日本の教育制度比較

学校の種類

学校は公立校(パブリック・スクール)と私立校(プライベート・スクール)に大きく分かれる。公立校は基本的には、住所によって通う学校が決まる学区制を採用している。私立校には、男子校、女子校、宗教に基づく学校、バイリンガル教育を実施する学校、モンテッソーリ・メソッドやシュタイナー教育といった著名な教育を取り入れた学校など、さまざまな特徴がある。人気の私立校の場合、子どもが生まれた時点でウェイティング・リストに名前を載せることもあるそうだ。

公立校、私立校問わず、オープン・デーと呼ばれる学校見学説明会が行われる。普通は1年間に複数回開催されるので、実際に校内の雰囲気や様子を知るのに役立つ。スケジュールは各学校によって異なるため、問い合わせて確認するのが良い。

ここまで紹介してきたことを含め、学校に関するさまざまな情報については、日本語による解説ページもあるDECのインターネットのサイトが役に立つ(記事末のリスト参照)。

 

就学前教育
 NSW州では、3〜4歳から就学前の教育を受けることが奨励されている。就学前の教育にはデイ・ケア・センター(Day Care Centre)、オケージョナル・ケア・センター(Occasional Care Centre)、プレスクール(Pre-School)の3つの種類がある(表2)。必ずしも日本の保育所や幼稚園などと内容がぴったり重なるわけではないので、英語で理解するのが良いだろう。
 それぞれの施設では、先生と子どもの割合が決まっている。2歳未満には、子ども4人につき、エデュケイター(Educator)と呼ばれる先生または保育士が1人、3歳以上には子ども11人につきエデュケイターが1人と決められている。
 週に2〜3日程度通うのが一般的。定員20〜60人ぐらいの小規模な所が多い。中には60人以上という大規模な所もある。

表2 就学前教育の種類と費用など

就学前教育
Day Care Centre
デイ・ケア・センター
Occasional Care Centre
オケージョナル・ケア・センター
Pre-School
プレスクール
対象年齢  0〜5歳  0〜5歳  3〜5歳
利用料金  $100前後/1日  $10〜$25/1時間  施設により異なる
備考 朝8時〜夕方6時まで預かってくれる所が多い。食費やおむつなどの費用が含まれる。 費用は1時間単位。初回登録料の必要がある所もある。 「おむつが取れていること」を条件にしている所が多い。スケジュールは義務教育の学校と同じ。

●デイ・ケア・センター
 対象は新生児から就学前までではあるが、センターによって受け入れ年齢の設定が異なる。預けられる時間帯は概ね朝8〜夕方6時が多い。年末年始を除いて、年間48週以上オープンしている。

●オケージョナル・ケア・センター
 対象は新生児から就学前まで。利用料金は1時間単位で決められている。

●プレスクール
 対象は3歳から就学前まで。預けられる時間帯は朝9〜午後3時。学校と同じように4学期制で、夏休みなどのスクール・ホリデーがある。時間的に余裕のある保護者の子どもが多い。「My Child」というサイトでは、住んでいる地域にある施設の空き状況やサービスの種類などが検索できる(記事末リスト)。

 

キンディー
 前述したように、5歳前後からは、義務ではないが、キンディーに通う。キンディーでは楽しい時間を過ごしつつ読み書きや算数が学べるような工夫がなされている。また、インファント・スクール(Infant School)と呼ばれる学校もある。ここは準備教育からプライマリー・スクールのイヤー2までをカバーし、このスクールが終わるとイヤー3から他のプライマリー・スクールに通うことになる。

 

プライマリー・スクール
 イヤー1からイヤー6がプライマリー・スクール。プライマリー・スクールで学ぶ主要な教科は、英語(English)、算数(Mathematics)、理科と技術(Science and Technology)、創造芸術(Creative Arts)、社会と環境(Human Society and its Environment、略称HSIE)、心身発育と保健体育(Personal Development, Health and Physical Education、略称PDHPE)の6つである。学ぶ内容については、BOSTESのウェブサイトで見ることができる(記事末リスト)。

 

ハイ・スクール
 イヤー7から始まるハイ・スクール。イヤー10の修了時には義務教育修了証明書(RoSA)が交付されるが、そのためにはイヤー7から、英語(English)、数学(Mathematics)、科学(Science)、歴史(History)など10の科目を取らなければならない。加えて選択科目もあり、農業技術(Agricultural Technology)、商学(Commerce)などがある。イヤー9ではラップトップ・パソコンが配布されるのも特徴だ。
 私立校ではもちろんのこと、公立校でも生徒のニーズや関心に合わせた学校がある。例えば、クリエーティブ・アンド・パフォーミング・アーツ・ハイ・スクールズ、テクノロジー・ハイ・スクールズ、スポーツ・ハイ・スクールズなどがある。DECのサイト内にある「School Locator」からこうした学校を探すことができる(記事末リスト)。プライマリー・スクールもハイ・スクールも公立校の場合、オーストラリア国籍や永住権を保持していれば学費は無料。ビザのカテゴリーにもよるが、テンポラリー・ビザ保持者の場合年間約5,000〜6,000ドルかかる。私立校は公立校よりも学費が一般的に高い。


関連情報サイト
■NSW Department of Education and Communities(DEC)日本語サイト(NSW州教育・地域社会省)
 Web: www.schools.nsw.edu.au/languagesupport/language/japanese.php
■MyChild
 Web: www.mychild.gov.au/sites/mychild
■Board of Studies, Teaching and Educational Standards NSW (BOSTES)(NSW州教育委員会)
 Web: www.boardofstudies.nsw.edu.au
■NSW Department of Education and Communities(DEC)(NSW州教育・地域社会省)
 Web: www.dec.nsw.gov.au

取材協力/監修:内野尚子(うちのなおこ)氏
プロフィール◎96年よりシドニー在住。11年間ローカルの幼児教育機関で教師「Authorized Supervisor」を務める。元日本語補習授業校代表兼教師。幼児から大人のための総合教育センター「Universal Kids(旧子どもクラブ)www.universalkids.com.au」の代表。NPO日豪教育サポート・グループを通して在豪日本人のための現地教育のシラバスやバイリンガル教育の情報共有に努めている。また、ニーズに合わせたセミナーも開催。

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