未知への挑戦

福島先生の人生日々勉強
未知への挑戦

私たち人間は、未来への希望を抱くように生まれついています。未知に対して心を開き、楽しめる存在です。特に幼いうちは記憶にまだほとんど刷り込みがありませんから、これから起こること、今まさに起ころうとしていることを純粋に面白がることができます。しかし、大人になるにつれ、既知であることがあらゆる希望への障害になります。

誰もが経験するもので言えば、雨。恵みの雨と言えども、出かける時に降っているとうっとうしいと思うものですし、湿気を不快に感じたりするものです。傘を持ち歩くのが面倒であることも多く、外出の計画にも支障が出ます。配達の仕事など、外で働く人は本当に大変でしょう。しかし子どものころは、傘に当たる雨の音や傘を回したときに飛ぶ水しぶきを面白がったり、長靴を履くのも、水たまりでじゃぶじゃぶするのも好きだったはず。ところが、雨で遠足が中止になり、野球やサッカーの試合が流れ、大事な靴が台無しになって、…といった記憶の蓄積によって、いつの間にか雨を楽しめなくなってしまうのです。

人生においては、経験を積むほどにこうした刷り込みのせいで世界をありのままに見られずに、未来に対してすくむという現象が起こります。過去の記憶や未知に対する先入観に乗っ取られ、問題が起きると想定して、震え上がったり委縮したりしてしまうのです。絵を描くのも、歌を歌うのも、上手下手に無頓着だったころはただ楽しめたはずなのに、自分が下手だと認識したとたんに、他人の目や評価を気にし、絵や歌を楽しむことをやめてしまったりします。恐れや不安から未来を先取りし、自己表現の自由を失ってしまうのです。しかし、それは本当の自分の姿ではなく、記憶に乗っ取られてしまっているだけなのです。

人が自分の人生を生きる時に大切なのは、記憶そのものが自分なのではないと気付き、記憶や先入観から自分を取り戻すことです。何かが起きた時に記憶に頼って対処するのではなく、未知のものに対して心を開いていることが大事です。もちろん、基本的な日常生活は記憶がなければ成り立ちません。しかし、記憶に頼ってばかりだと、生きることに対して、柔軟でいられなくなります。未知なる局面を迎える時には、新たに創造する生き方を選びましょう。難しそうに聞こえますが、決してそんなことはありません。初めて泳げた瞬間や自転車に乗れた瞬間と同じで、未知の経験に対して「既知」に頼らない能力が発動した瞬間です。

毎日を生きるということは、未知への挑戦そのもの。1人ひとりがそれぞれの道を行き、まだ見ぬ世界の扉をどんどん開いていきましょう。


福島先生の教育指導

教育専門家:福島 摂子
大阪府出身。30年間、教育に携わり、教育カウンセリング・海外帰国子女指導を主に手がける。1992年に来豪。シドニーに私塾『福島塾』を開き、社会に奉仕する創造的な人間を育てることを使命として、幼児から大学生までの指導を行う。2005年10月より拠点を日本へ移し、日々活動の幅を広げていく一方で、オーストラリア在住者に対する情報提供やカウンセリング指導も継続中である。

新着記事

新着記事をもっと見る

NICHIGO CHANNEL

新着イベント情報

新着イベントをもっと見る