矛盾を知る

福島先生の人生日々勉強
矛盾を知る

いかに綿密な計画を立てようとも、すべてが滞りなく進むということはなかなかありません。集中力を欠いたとか、体の調子が悪くなったとか、さまざまな理由があり、物事が思うように運ぶということはほとんど奇跡に近いと言って良いでしょう。思い通りにいかなくなる理由には、自分が生み出した問題だけではなく、外部からの干渉があります。外からの何かに関わらざるを得ないのは人生の宿命ですが、実はこれが本人にとって一番厄介な事象となります。

邪気のない行為でさえ時に計画遂行の障害になることもありますが、意思を持った破壊的行為に巻き込まれるということもあります。しかし、ここで考えたいことは、思い通りにするためにはどうしたら良いかということではありません。良いと思うことにも、願わしくないことにも関わらなければならないというこの世の事情が、人間というものを形成してきたのだという事実です。私たちが生きるこの世界は、相反するものが同居する矛盾した世界であり、私たち自身もまた矛盾した存在なのです。

私たちの心には愛があり、慈しみを持って人と接することができます。しかし、慈愛に満ちたその体を支えているものは何でしょう。免疫機能という自衛システムです。まるで戦争のごとく、免疫はウイルスを攻撃し、駆逐しています。慈愛を持ちながらも、生きるために弱者を滅ぼし続けている矛盾した存在、それが人間なのです。この矛盾は個体にとどまりません。私たちは、自分自身が誰かから傷つけられることがあるのと同じように、必ず誰かを傷つけながら生きています。悲しいことですが、同時にその矛盾は、人間を育てる重要な役割を担っているということも確かなことなのです。

人間には美しい心とともに醜い心もありますから、他人の不幸を聞いて同情するばかりでなく、喜ぶ人もいれば、安心することもあります。同じ人を愛していながら憎んだりもする生き物です。しかし、その矛盾が人間の心を育てるのです。もしも、愛されるばかり、思い通りになるばかりで平穏無事な毎日を送っていたら、苦しんでいる人の気持ちなど、一生分からないでしょう。しかし、それはあり得ない仮定です。なぜなら、人の気持ちを察することのできない人が平穏無事でいられるはずがないからです。

自らも矛盾を抱えながら、人から拒否され、嫌われ、意地悪をされ、一方で、愛され、救われ、褒められたりもしながら、私たちはどうにかこうにか一個の人間を創り上げてきました。人を「許す」ことができるのは、矛盾に気付いているからです。悲しみが深いほど、愛も深いのです。


福島先生の教育指導

教育専門家:福島 摂子
大阪府出身。30年間、教育に携わり、教育カウンセリング・海外帰国子女指導を主に手がける。1992年に来豪。シドニーに私塾『福島塾』を開き、社会に奉仕する創造的な人間を育てることを使命として、幼児から大学生までの指導を行う。2005年10月より拠点を日本へ移し、日々活動の幅を広げていく一方で、オーストラリア在住者に対する情報提供やカウンセリング指導も継続中である。

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