個を超越する

福島先生の教育指導

Teacher’s Advice

福島先生の教育指導


個を超越する

 生きていれば、天から来たとしか思え ない災禍に何度も見舞われますが、どん 底から再生していく力を持っていること が生きるものの素晴らしさでもありま す。しかし、とかく世の中には、自分の 外から来たと思える災難も、冷静な心で 顧みれば、おおよそ自分の中から起こっ たものであったということも少なくあり ません。

 弱い心が妄想して描き出す不幸もありま す。社会での自分の待遇を不満に思うとい うことなどは、最も陥りやすく、分かりや すい例でしょう。自分はこんな待遇をされ るはずの人間ではない、努力しているの に、社会はなぜ自分を受け入れないのか。 しかし、それは独りよがりの妄想に過ぎ ず、はたから見れば、その待遇に値する人 間であるに違いないのです。

 まれに、この点に気付ける人もいま す。自分は酒癖が悪い、金銭感覚がな い、異性関係にだらしないなど、自分の 弱点を知っている人もいます。しかし、 弱点を矯正するかというとそれはせず、 人間なんて弱いものだ、それくらいは許 されて当然なのだと自己弁護し、その罪 を社会や家族に転嫁するのです。自分の 弱点のために社会や家族が自分を評価し てくれないなら、なぜ反省し、改めよう としないのでしょうか。自分で妄想し、 逆境を作り出しておきながら、世を恨む人が多いのは、たいへん残念なことで す。世を恨めば、自分だけでなく、身近 な人まで不穏な世界に引き込んでしまい ます。本人が気付かないうちに、罪なき 人につらい思いをさせてしまい、そのこ とがさらに自分を不幸にします。

 では、どうすれば再生できるでしょう か。自分の業を悔いてばかりでは、自信を なくす一方です。ここはひとまず自分を忘 れることです。人間は、個を超えた大きな 利益を考える時、世を恨む気持ちが少なく なるものです。世界のことを懸命に考える といった視野を意識的に持つことで、目の 前の怒りは収まります。小さくとも、まず は「個」を超えましょう。

 例えば、夫が幸せになりたかったら、妻 を幸せにすることです。妻を喜ばせること に懸命になることで、自己評価が上がりま す。例え妻が喜ばずとも、努力している自 分は評価できます。実はこれが最も重要な ことです。自己評価が低い人ほど、ひねく れふてくされ、世を恨むというからくりが あるからです。他人から受ける評価という のは、簡単に覆せるものではありません。 しかし、文字通り、懸命に喜ばせ続けてい れば、いつしか他人からの評価も上がりま す。他人の幸福は、めぐりめぐって自分の 幸福になるということが身に染みることで しょう。利害とは、個を超越したところに あるのです。


教育専門家:福島 摂子
大阪府出身。26年間、教育に携わ り、教育カウンセリング・海外帰 国子女指導を主に手がける。1992 年に来豪。シドニーに私塾『福島 塾』を開き、社会に奉仕する創造 的な人間を育てることを使命とし て、幼児から大学生までの指導を 行う。2005年10月より拠点を日本 へ移し、日々活動の幅を広げてい く一方で、オーストラリア在住者 に対する情報提供やカウンセリン グ指導も継続中である

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