腑に落ちる

福島先生の教育指導

福島先生の人生日々勉強
腑に落ちる

日本人のもののとらえ方は実に自然に即しています。太古の昔より五感は自然とともにありますから、利便性を重視する今のやり方にのっとって生きるとストレスが溜まるというのは、当然のなりゆきと言えるでしょう。

中でも分かりやすいものと言えば、時の読み方です。昔は、日の出と日の入りで時を計る「不定時法」でした。夜が明けて、星が見えなくなる時刻を「明六ツ」、日が暮れて星が見え始める時刻を「暮六ツ」と呼び、その2つを基準として時刻を定めていました。

不定時法では、夏至と冬至で2時間くらいの差があるので、その不定時法を計るために「大名時計」も使用します。これは、節分を基準に1年を24等分した「二十四節気」の節ごとに分銅の位置を変えていくもので、日本独自の時計です。そこまでして、昔の日本人は時間を調整し、自然に即した時を生きようとしたのです。種を明かせば、夜明けとともに働き、日が暮れると眠るという生活を送っていたころは、実働時間を6つに分けた方が働きやすかったということでしょう。この不定時法こそが、実践に即した、心と体に優しい時の刻み方だったのです。

このことは、「働くことが生きること」という、現代人が忘れがちな生の根源を思い出させてくれます。自然や人の生活に合わせて時を定める「不定時法」から、時計によって人の生活を定める「定時法」になり、時間に追われ、働かされて生を削られるという感覚になりがちですが、本来は働くことそのものが生きることと同義であったはずです。時の計り方を変えたことによって、純粋さが削られ、不満やストレスが追いかけてくる目まぐるしい生活を手に入れてしまったというわけです。

時間を変えられない残念な今を生きるに当たり、ささやかな抵抗を試みるとするならば、それは「日本人が不定時法に見られるような現実、現場主義である」という特性を見直すことです。一里、二里と言いますが、平坦な道と山道とでは、一里の距離が全く違います。これは、1時間でどれだけ歩けるかということを計算して考案されたものでしょう。なんと現場に即した実践的な測り方でしょうか。

実践に即した生き方は、優れた「ものづくり」に現れています。理屈や机上の学問よりも、「腑に落ちた」ものを第1義としてきた結果です。剣道、柔道、茶道、華道、…究めるべきものには「道」とついていますね。「その道を歩け」という即実践の民族性の現れた言葉です。自分の足で歩き、失敗し、何度も実践を重ねてこそ、ものになるということです。特性を生かし、現場を踏みしめ、本物を目指すとしましょう。


教育専門家:福島 摂子
大阪府出身。29年間、教育に携わり、教育カウンセリング・海外帰国子女指導を主に手がける。19 92年に来豪。シドニーに私塾『福島塾』を開き、社会に奉仕する創造的な人間を育てることを使命として、幼児から大学生までの指導を行う。2005年10月より拠点を日本へ移し、日々活動の幅を広げていく一方で、オーストラリア在住者に対する情報提供やカウンセリング指導も継続中である。

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