無念無想

福島先生の教育指導

福島先生の人生日々勉強
無念無想

2人の子どもの前に宿題が積まれています。1人は、全部で何枚あるだろう、どのくらいかかるだろう、と数えてから始めました。もう1人は、特に何も考えずに、積まれた課題の1枚目を手に取り、すぐに取り掛かりました。話だけを聞くと、算段して課題に取り組む子どものほうが良い結果に終わるように思えますが、実際は、無心に取り組んだ子どものほうが、最後まで集中力を切らすことなくやり遂げることができるということが分かっています。

子どもに限らず、大人でも同様の結果が得られます。ところが、大人になるにつれ、無心に取り組むということ自体が難しくなってきます。しかし、これが脳の老化のせいなのかというと、そうではありません。子どものほうが集中力に長けていて、没頭することで驚くほどの成果を得ることができるのですが、それはただ、子どもの持つ情報や思考が大人よりシンプルであるからに過ぎません。大人になると、老化によって脳の記憶力や瞬発力が衰えてしまうと勘違いしがちですが、実は、雑多な情報と複雑化した思考が頭の中に溢れかえっているために、注意力が散漫になり、一意専心できずにいるだけなのです。

「無念無想」という禅の言葉を掲げましたが、これはひと言でいうと「無心」になるということです。あれこれと余計なことを考えず、目の前のことに集中する。そうすることで、人間は素晴らしい力を発揮することができるという教えです。たとえ目の前に仕事が山積みになろうとも、ほかに何も考えず、専心打ち込んで行えば、秩序正しく、1つ1つやり遂げていくことができるのです。

まずは、今この瞬間になすべきことをよく知り、それをきちんとやることです。そうして、目の前のことが1つ終われば、また、そのときそのときに目の前にあるものに没頭すればよいのです。集中しているつもりでも、「これが終わったら、あれをやらなくては」とか、「お昼に何を食べようかな」などと考えたりしていることが多いもの。逆に、休んでいるときにも、休息に集中せず、仕事や家事のことが頭をよぎったりもするでしょう。歯を磨くなら、歯を磨くことに徹する。本を読むなら、本を読むことに徹する。大切なのは、目の前にある1つのことに専心する、ということです。「忙しい」というのは、頭の中が混乱し、心が追い込まれている状態です。1つ1つを丁寧に行うことで、心身ともにシンプルになり、潜在能力が発揮されて、素晴らしい成果を得ることができるのです。

丁寧に生きる姿には、研ぎ澄まされた美しさがあります。丁寧に、丁寧に、生きていきましょう。


教育専門家:福島 摂子
大阪府出身。29年間、教育に携わり、教育カウンセリング・海外帰国子女指導を主に手がける。1992年に来豪。シドニーに私塾『福島塾』を開き、社会に奉仕する創造的な人間を育てることを使命として、幼児から大学生までの指導を行う。2005年10月より拠点を日本へ移し、日々活動の幅を広げていく一方で、オーストラリア在住者に対する情報提供やカウンセリング指導も継続中である。

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