「陶芸作家/真船晶子」の巻

メルボルンの街に息づくアートたち アートの時間ですよ !
「陶芸作家/真船晶子」の巻
真船晶子さんの作品「Purpple Rain」真船晶子さんの作品「Purpple Rain」

文:たかぎ まさひこ
 陶芸作家というと、皿や花瓶などを制作するものだと想像しがちだ。しかし、陶芸作家、真船晶子は予想に反し、全く違う作品を制作するアーティストだった。彼女の場合、陶芸作家と呼ぶよりもセラミック・アーティストと呼ぶ方がふさわしいかもしれない。作品からあふれるのは、豊かな想像力、そして遊び心と優しさである。彼女の作品群を見ると、陶芸という手法を単に利用しているだけで、トルソー、仮面、モービル、鈴など、その形態は多種多様であり、まさに、自分の個がそこに存在しているアーティストの作品と言っても過言ではない。
「なぜオーストラリアに来たのですか」と質問すると「人生転がってここまでやって来たのよ」と言った。日本で大学を卒業し、同時に陶芸を始めた。陶器を作りたいというよりも、この手法を手に入れるためだった。日本で師匠についたが美術団体には属さず、一匹狼で活動した。フィリピンに10年住んだ後、来豪して約9年。彼女の世界観を広げたのは、活気に満ちたフィリピンのアート界だった。当時の作品にはどことなく影があり、心の葛藤が交差しているそうだが、アーティストたるもの、やはり苦悩の中から表現が生まれる。“生きる=表現する”。まさに自分自身に問いながら制作するアーティスト魂だ。
 しかしオーストラリアに来てから、心境の変化に加え、この地で受け入れられるものとの違いにより、作品は変貌を遂げた。どこかに満ちあふれた幸福感が醸し出されている。その心境を象徴するかのような代表作が、メルボルンのシティで販売されている「Hug Bell」(抱擁してほしい時にならす鈴)と、「Love Letter Box」(箱の中にカップルの造形物が入っており、その中にハートが隠されている)だ。
 彼女は最後に語った。「自分の作品が、人と人をつなげていくものの中央にあってほしい。それが自分の表現していくテーマなのかもしれない」。素手から生まれる作品には、ぬくもりが感じられ、作者からのメッセージが込められている。それは、作家自身が自分に投げかけたものなのかもしれない。今後の彼女がどこへ向かって行くのかとても楽しみである。
■Shoko’s Studio(陶芸教室)
Tel: (03)9509-4620
Email: smafune@optusnet.com.au
Web: www.shokoceramics.com


たかぎまさひこ プロフィル
メルボルンを拠点にアート・マネジメントを手がける、マユミ・インターナショナル社のオペレーション・マネジャー。1995年より美術系出版社営業・編集、画商などとして芸術分野で活動している。

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