「ネクスト・ウェーブ」の巻

アートの時間ですよ!

「日本×アート」をテーマにメルボルン街歩き
アートの時間ですよ !
第3回
「ネクスト・ウェーブ」の巻

文:たかぎ まさひこ
  5月31日に終了した「2008ネクスト・ウェーブ・フェスティバル」は、新進気鋭の若手アーティストたちが作品やパフォーマンスを発表する、年に1度の芸術の祭典だ。今年は「Closer Together」というテーマの下に、400を超えるアーティストたちが60以上のプロジェクトに参加、メルボルン各地の会場で発表を行った。


(写真)「Spinning / 石井言絵」 より


 今回は、その中で私が注目した将来有望な日本人アーティストを紹介したい。石井言絵(いしいことえ)さん、秋田県出身。2001年に来豪、04年にVIC州きっての芸術系大学ビクトリアン・カレッジ・オブ・ジ・アーツ(VCA)に入学、現在は同校のファイン・アートの修士号コースで勉強している。昨年、ビクトリア・パーク・ギャラリーで、VCAの日本人学生による展示「Open Air」を企画・開催した人でもある。
 ネクスト・ウェーブ・フェスティバルでは、センター・フォー・コンテンポラリー・フォトグラフィー(CCP)のギャラリーでビデオ作品を発表した。タイトルは「Spinning」。日本語にすると「回転すること」と訳せるが、この作品の場合は「糸紡ぎ」という言葉が当てはまる。作品の内容をひと言で言えば「作者自身の口から赤い糸が出てくる様子が永遠に続く不可解な映像」となるのだが、それは素人の浅はかな見方。単純に見えて奥が深いのが現代アートである。彼女自身から解説を聞いた。
 ギリシャ神話の中にクロト(Clotho)、ラケシス(Lachesis)、アトロポス(Atropos)という3人の女神が登場する。この女神たちは「運命の糸を司る」と言われ、今回の作品はそこからヒントを得たのだそう。赤という色は、生きる情熱の赤、女性としてこの世に命を誕生させる行為や月経などのイメージにも重ね合わせることができる。表現方法はシンプルだが、意味深い作品だ。アーティストとしての彼女もその独自の創造世界を、この赤い糸のように絶え間なく紡ぎ続け、飛躍していってほしいと思う。
 彼女のような若手の日本人アーティストが、メルボルンに根差し、活躍しているという現実はとてもうれしいことだ。石井さんの作品は7月5日まで展示されているので、ぜひ足を運んでみてほしい。
2008 Next Wave Festival
■Web: 2008.nextwave.org.au
Centre for Contemporary Photography
■Web: www.ccp.org.au
たかぎまさひこ プロフィル
メルボルンを拠点にアート・マネジメントを手がける、マユミ・インターナショナル社のオペレーション・マネジャー。1995年より美術系出版社営業・編集、画商などとして芸術分野で活動。現在はアート・マネジメントのほか、美術系出版物の編集・監修、評論、芸術に関わる著名人へのインタビューやDVDの解説文執筆なども行う。

新着記事

新着記事をもっと見る

NICHIGO CHANNEL

新着イベント情報

新着イベントをもっと見る