オーストラリアの乗合船の釣りスタイル

Let's 豪 Fishing !Let’s 豪 Fishing ! 
第164回

フィッシング・ライター
金園 泰秀
オーストラリアの乗合船の釣りスタイル
「放流 ! 」という掛け声とともに、ジギングで釣り上がったばかりの全長1メートル前後のキングフィッシュをボートの後ろから、魚に傷が付かないようにそっと放流する。観光客の釣り人たちは魚を持って帰らないので、写真を撮った後はすべて放流することが多い。そんなことを繰り返している我々をすぐ近くで見ていたのは、地元のオージーの釣り人たちが鈴なりに乗っている乗合船のボート。全員があっけに取られたような顔だ。
(写真)ナイロン糸を巻いた大きな木製リールに重いオモリのオーストラリア標準の道具

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最新のジギング道具では、初心者のカップルでもこんな魚が釣れる

 ジギング釣りは高価な道具を使った特殊な釣りになるので、まだオーストラリアの釣り人たちには一般的ではなく、昔からのスタイルの釣り方をしている人には、マジックを使って釣っているように見えるのかもしれない。  オーストラリアの外洋釣りの遊漁船のタイプは大きく分けて2種類ある。乗客数をあまり多く乗せずにちょっと豪華な感じのクルーザーで、トローリングで大物のカジキ(マーリン)やマグロ、シイラ、サワラなどを狙うゲーム・フィッシングを行うものと、漁船タイプのボートに大勢の釣り人を乗せて、釣り人全員が1人ひとり餌の付いた仕掛けを海底まで下ろし、餌釣りでタイ類を筆頭にアジ類やカラフルな色をしたベラ類などの五目釣りを行うリーフ・フィッシングが主流だ。  ゲーム・フィッシングでは、船上のスキッパー(船長)たちがお客さんに代わって、釣り道具の準備やセットなどすべてを行う。お客はただビールなどを飲みながら魚が掛かるのを優雅に待ち、魚が掛かった時に渡される竿のリールを巻くだけといった贅沢な大名釣りだ。少人数でトローリング・クルーザーを貸切ることになるのでそれなりに料金もかかる。  反対にリーフ・フィッシングは、ボートをチャーターする仲間たちの1人当りの料金を抑えるために乗船定員いっぱいまで釣り人を乗せることが多い。乗合船の場合でも、可能な限りたくさんの釣り人を乗せた方がボート・オーナーの実入りが大きいのは言うまでもない。週末になると定員数いっぱいまで人を乗せたボートが目立つのはそういった事情からである。
 当地の釣りボートには道具を持ってない人や持参されない人向けに釣り道具が料金に含まれて用意されている。ただ、残念なことに昔からの大きなリールにナイロン糸を巻き、重いオモリを付けたシンプルなものが主流になっている。
 狭く、そしてたくさんの釣り人を乗せた船上では、隣同士の仕掛けと絡まらないように重たいオモリを使用する。大袈裟な言い方だがゴム糸のように多少は伸びてしまうナイロン糸では、慣れないと海底からの魚のアタリや、ひどい時にはオモリが海底に着底したことも分らないこともあるほど釣りづらいものだ。

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日本からのお客さんが持ってきた15万円以上のリールとハンドルのセット

 ナイロン糸を使用するのは、隣同士で仕掛けが絡まった場合、糸の絡みが解けやすく、もし切断することになっても安価でダメージが少ないためだ。日本から発展したPEラインやブレイドラインでは糸自体の伸縮が極端に少ないので、深い海底から竿先に届いてくる小さな魚の食い(アタリ)も見逃すことがないため釣果も飛躍的に伸びる。ただ、この高価なラインでは3人以上のラインが絡まると解いて元に戻すことが困難になり、混んだボートでは高価な糸を途中で切断することにもなりかねないのが欠点と言える。
 地元の釣りクラブなどの団体がチャーターした釣り船では、釣り道具は釣り人たちが自前のものを使用することが多い。気心が知れた仲間と和気あいあいに楽しみ、そしてPEラインを使用したある程度最新のタックルを持参することが多いので、ナイロン糸の貸し釣り具と違って釣果も飛躍的に上がってしまう。
 日本からの釣り人のほとんどは、日本の水深の深い場所での船釣りには、必ずといっていいほどPEラインを使用しているので、当地のナイロン糸に重いオモリといった仕掛けでは勝手が違いすぎて釣りにならないケースが多いようだ。
 オーストラリアで外洋のボート釣りの道具がなかなか進化しない理由は、まだまだ自然が残る豊かな海で、魚の持ち帰り制限があるものの、昔からのシンプルな道具でも日本と比較して釣れ上がる魚の数が多いからだろう。
 ちなみに、日本の道具で日本の海で船釣りをしていた私も、長年見ているこのオーストラリア・スタイルの仕掛けや道具を使っての釣りは苦手で、お客さんにもすべて日本の道具と日本式スタイルで釣ってもらっている。釣果よりも、のんびり船上で釣りを楽しむオージーたちと違って、黙々と魚をたくさん釣りたい日本からの釣り人にはそれなりの道具が必要になる。
オーストラリアの釣り情報
www.fujimaru.com.au

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