愛犬が気管虚脱(Tracheal Collapse)と診断。治りますか

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Q 7歳のヨークシャー・テリアを飼っています。少し前からちょっとした拍子に咳をするようになりました。病院で診てもらった結果“気管虚脱”という聞いたことがない病名で、「治らない」と言われましたが本当でしょうか。
(40歳主婦=女性)

A 「気管虚脱(Tracheal Collapse)」は、肺への空気の通り道である気管が途中でつぶれてしまい、呼吸がうまくできなくなる病気。咳の原因として小型犬によく見られます。

原因

気管は本来いくつもの連なる軟骨によって、蛇腹ホースのようにしっかりと筒状の形態を保持しています。しかし気管虚脱を発症した状態では、その軟骨が強度を失い柔らかくなって、息を吸うだけで気管がつぶれてしまうため、咳や呼吸困難が起こります。
 気管の軟骨が軟化してしまう原因はまだ解明されていませんが、発症しやすい犬種(トイ・プードル、ヨークシャー・テリア、ポメラニアン、チワワなど)があることから、遺伝的要素があると考えられている他、頸部への余計な負荷や、肥満による胸部の圧迫などの関連性も指摘されています。気管虚脱は進行性の病気で、慢性化すると咳によって気管の粘膜が炎症を起こし、気道が更に狭まくなるという悪循環になります。

症状

症状は発咳やガーガーとガチョウの声のような呼吸音に始まり、悪化すると呼吸困難や酸欠により舌が青紫色になるチアノーゼが見られ、最終的には窒息死してしまいます。
 咳の引き金として挙げられるのは、運動や興奮またはストレスや暑さで呼吸が荒くなったり、首輪が引っ張られることにより喉が圧迫されるなどです。

診断

呼吸困難はレントゲンでほぼ確実に診断ができますが、より正確に確かめたい場合は、内視鏡または放射線透視が必要となります。

治療

気管虚脱の完治は難しく、治療は症状を抑えることを目的とした内科的治療になります。軽度の場合は鎮咳薬、気管拡張剤、抗炎症剤などの内服薬でコントロール。症状が重いまたは一時的に悪化した場合などはステロイドも併用します。
 外科治療は、気管の形状を外側から固定する方法や、内側に金属のメッシュを入れるステント法などがあり、内科治療の効果が見られない時に行います。豪州では現在内視鏡を使用してできるステント法が主流。しかし気管内に異物を留置するこの方法は、処置後どうしても咳が出るので、咳止めの薬を継続する必要があります。日本では気管の外側に装着する素材の研究と改良が進んでおり、外科治療で良い結果を出している病院もあるようです。

予防

原因が解明されていないため、残念ながら予防法も確立されていません。しかし気管虚脱になりやすい犬種や、咳が出やすいなどの兆候がある場合、できるだけ咳の引き金となる状況を作らないよう努め、首輪をハーネスに替えるなど、首の周りに掛かる負荷を減らすことが重要。肥満体の場合は余計な脂肪が更に気管や胸部を圧迫しないよう、減量することが非常に大切です。


戸塚 遊喜(とつか ゆき)
Chatswood Veterinary Clinic

シドニーの現地校を卒業後、シドニー大学の獣医学部を卒業。現在、シドニーのノースショアにある小動物専門病院「チャッツウッド・ベタリナリー・クリニック」に勤務。動物の鍼灸師の資格を保持している。

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