アトピー性皮膚炎の犬に処方する新薬について教えてください

何でも相談

Q うちの犬は小さいころからアレルギー体質で、いつも体のどこかをかゆそうにしています。最近、アトピー性皮膚炎に効く新しい薬が出たと聞きましたが、どんな薬なのかとても興味があります。この薬で治るのでしょうか。また副作用などの安全性も教えてください。
(45歳主婦=女性)

A 犬の皮膚のかゆみを抑える新薬アポクェル/アポキル(APOQUEL)が、2016年からオーストラリアでも発売されました。成分名はオクラチニブ(Oclacitnib)です。この薬は犬のかゆみに対して即効性があり、安全性も高く、長年アトピーやアレルギーで苦しんできた犬にとって高い効果を発揮しています。

皮膚のかゆみの原因

犬のかゆみを伴う皮膚疾患で一番よく見られるのがアレルギーやアトピー性皮膚炎です。
 アレルギーは、ノミや食物など特定の物質に対して免疫が過剰に反応してしまう疾患で、通常激しいかゆみを伴います。
 アトピーは、体質や環境など複合的なものによって皮膚に炎症が起こる疾患で、原因がはっきりと特定できません。かゆみの度合いもさまざまで、眠りの妨げになるほどのかゆみを伴うこともあれば、足をぺろぺろと舐めるだけのこともあります。

かゆみの悪循環

皮膚にかゆみを感じると、その箇所をかいたりかじったりすることで細胞が傷ついて炎症が増幅します。炎症はかゆみの誘発物質を更に出すので、より強く高い頻度でかきむしり、どんどん症状が悪化してしまいます。皮膚炎の治療は、まずこのかゆみのサイクルを断ち切ることが重要となります。

従来の薬

これまでは、炎症とかゆみを抑える強い効果があるステロイド剤がよく使われてきました。しかし、ステロイド剤は全身への副作用も多いため長期使用は避けたい薬です。ステロイド剤より副作用の少ないシクロスポリン(免疫抑制剤)やワクチンでの減感作治療などがありますが、効果が出るのに4~6週間と時間がかかります。

アポクェル/アポキル(APOQUEL)

従来の薬と異なり、新薬アポクェル/アポキル(APOQUEL)はかゆみのシグナルを伝達する酵素(ヤヌスキナーゼ)を阻害することでかゆみと炎症を抑えます。ステロイド剤と同じほどの効果と即効性(4時間以内)がありながら、かゆみを起こすシステムに的を絞って作用するので、全身への副作用と免疫系への影響は最小限で済みます。また、ステロイド剤は抗炎症剤との併用ができなかったりなどの制約がありますが、この薬にはありません。
 使用法については、最初の2週間は1日2回で、それ以降は1日に1回(または半量を2回)投与します。小さな錠剤なので無理なく与えられます。
 まれに吐き気を催すといった副作用があるそうですが、当院の今までの使用で特に目立った副作用は経験していません。また、重度な感染症がある場合は悪化させる恐れがあるため使用できません。
 アポクェル/アポキル(APOQUEL)は発売されてまだ1年足らずですが、既に多くの犬に対し良い効果が得られています。しかし、これはアレルギーやアトピーを治すものではなく、症状を抑えるだけのものです。薬を止めればかゆみはすぐ戻ってしまいます。費用はステロイド剤に比べるとだいぶ高くなります。犬の大きさにもよりますが、薬代は1日4~5ドル程です(100錠入りボトルで計算)。


戸塚 遊喜(とつか ゆき)
Chatswood Veterinary Clinic

シドニーの現地校を卒業後、シドニー大学の獣医学部を卒業。現在、シドニーのノースショアにある小動物専門病院「チャッツウッド・ベタリナリー・クリニック」に勤務。動物の鍼灸師の資格を保持している。

*オーストラリアで生活していて、不思議に思ったこと、日本と勝手が違って分からないこと、困っていることなどがありましたら、当コーナーで専門家に相談してみましょう。質問は、相談者の性別・年齢・職業を明記した上で、Eメール(npeditor@nichigo.com.au)、ファクス(02-9211-1722)、または郵送で「日豪プレス編集部・何でも相談係」までお送りください。お寄せいただいたご相談は、紙面に掲載させていただく場合があります。個別にご返答はいたしませんので、ご了承ください。

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