中高齢の小型犬は注意「クッシング症候群」とは?

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Q 先週定期健診で、12歳のダックスフンド(雌、避妊済み)が「クッシング症候群」の疑いがあると言われました。聞いたこともないのですが、どんな病気なのでしょう。餌をよく食べていますし、具合が悪そうには見えません。疲れやすくなったのと、トイレが近くなったのは年相応だと思っています。
(37歳会社員=男性)

A クッシング症候群は体内で作られる副腎皮質ホルモンが過剰に分泌されてしまう病気で、副腎皮質機能亢進症(ふくじんひしつきのうこうしんしょう)とも言います。中高齢の小型犬によく見られる病気です。

副腎皮質ホルモン(コルチゾール)とは

腎臓のすぐ上にある副腎という小さな内分泌腺で作られるホルモンで、体が自然に分泌するステロイドのことです。糖やたんぱく質の代謝、血液中の電解質の調整、炎症や免疫の反応など、あらゆる体の働きに必要とされる重要なホルモンであるため、過剰に分泌されるとさまざまな器官に影響が出てしまいます。

原因

まずクッシング症候群の8割は、脳下垂体の腫瘍が原因であると言われています。副腎からのコルチゾールの分泌は、脳下垂体からの指令で制御されていますが腫瘍が出来るとこの制御が効かなくなり、過剰にコルチゾールが生成されてしまいます。
 また同様の理由で、副腎が腫瘍に侵されることでも、コルチゾールが過剰に分泌されます。その他、アレルギーやアトピー性皮膚炎などで、過剰なステロイド剤を長期的に服用すると、副作用によりクッシングの症状が出てしまいます。

症状

● 多飲多尿:水をたくさん飲む、尿の量が増える
● 多食:食欲が増す
● 皮膚の変化:毛が薄くなる、胴体が左右対称に脱毛する、色素沈着、皮膚炎
● 腹囲の膨満:内臓脂肪の増加と肝臓の肥大に合わせ、お腹がポッコリと出る
● その他:呼吸が荒くなる、疲れやすくなる、免疫力の低下、血栓が出来やすくなるなど

診断

症状でクッシングが疑われても、確定診断には詳しい血液検査を始め、原因によっては腹部超音波検査や頭部のCTスキャンなどが必要な場合もあります。

治療

原因によって異なります。まず、脳下垂体の腫瘍が原因の場合、腫瘍自体の根本的な治療は無く、副腎レベルでの反応を抑える薬を投与します。これらの薬は場合により、体内のコルチゾールを減少させ重篤な状態に陥らせるため、安定するまで細かいモニタリングを必要とします。
 また副腎の腫瘍が良性の場合は手術による摘出で治療が望めます。悪性の場合は腹膜内への転移などで手術自体が不可能なことが多く、治療は困難です。薬の副作用が出た際は、内服しているステロイド剤を徐々に減らしていくことで、その後回復します。

予後

悪性の腫瘍が原因の場合以外は、適切な投薬によって症状の改善、長期生存も可能ですが、治療は生涯続けなければならないでしょう。もしクッシング症候群が疑われても、症状などが日々の暮らしに支障を来さない場合は、治療をしないという選択もあるでしょう。


戸塚 遊喜(とつか ゆき)
Chatswood Veterinary Clinic

シドニーの現地校を卒業後、シドニー大学の獣医学部を卒業。現在、シドニーのノースショアにある小動物専門病院「チャッツウッド・ベタリナリー・クリニック」に勤務。動物の鍼灸師の資格を保持している。

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