愛猫に見られる食欲のむらやお腹の不調、リンパ腫とは

日豪プレス何でも相談

ペット

Q

11歳の猫を飼っていますが、この1年でだいぶ体重が減り、最近では食欲にむらがあり、お腹の調子もあまり良くありません。病院で腸のリンパ腫かもしれないからと、超音波検査を勧められました。初めて聞く病気なのでとても心配です。治る病気でしょうか。(52歳主婦=女性)

A

リンパ腫(Lymphoma)とは、免疫細胞の1種であるリンパ球が、がん化する病気です。体のあらゆる場所で発症する可能性のある病気ですが、猫では胃腸壁とその周りのリンパ節が侵される消化管型リンパ腫(Alimentary/Gastrointestinal Lymphoma)が一番よく見られます。進行のゆっくりな低悪性度(low grade)か、早い高悪性度(high grade)かで予後は大きく異なります。

原因

はっきりとした原因は分かっていませんが、高齢に伴う免疫力の低下、炎症性腸炎などによる慢性的な炎症、受動喫煙などが考えられます。体の他の部位で発症するリンパ腫では、猫白血病ウイルスや猫免疫不全ウイルスへの感染が発症の危険性を高めますが、消化管型リンパ腫では強い関連性は認められていません。

症状

発症は10歳以上の高齢猫で、一番よく見られるのが体重減少、嘔吐、下痢、食欲減退などの慢性的な消化器症状です。

診断

診断までの流れは、問診、触診、血液検査、超音波検査、病理組織検査となります。
 高悪性度の場合は触診で腫れた腸やリンパ節が確認できることもありますが、低悪性度のリンパ腫は触診や血液検査だけでは分からないことが多いです。病状が進んでいる場合は血液検査で低タンパクや貧血などが見られます。
 超音波検査をすれば腫れた腸壁やリンパ節が確認でき、ある程度リンパ腫かそうでないかの見当が付きますが、確定診断には組織の一部を採取して調べる必要があります。

治療

リンパ腫の治療は主に抗がん剤を用いた化学療法です。低悪性度のリンパ腫は注射ではなく経口薬でも治療できるので、家で投与でき、定期的な血液検査以外で通院する必要はありません。薬はずっと飲み続ける必要がありますが、副作用はほとんど見られません。
 高悪性度のリンパ腫の場合、部分的に腸閉塞を起こすこともあるので、手術が必要になることもあります。化学療法は経口薬に加え血管注射による治療も必要になります。

今後

残念ながらリンパ腫からの完治は望めません。しかし低悪性度のリンパ腫の場合、抗がん剤治療での溶解率は70%で、平均生存期間は2~2年半と望ましいデータがあります。
 反対に高悪性度の場合、溶解率は25%~50%にとどまり、生存期間も2~9カ月しかありません。

消化管型リンパ腫は猫で一番よく見られるがんですが、幸いなことに大多数が、グレードが低く、化学療法にも良く反応してくれる低悪性度のリンパ腫です。
 高齢の猫で原因不明の体重や食欲の低下、または慢性的に嘔吐や下痢などが続いている場合は必ず病院で診てもらってください。

*オーストラリアで生活していて、不思議に思ったこと、日本と勝手が違って分からないこと、困っていることなどがありましたら、当コーナーで専門家に相談してみましょう。質問は、相談者の性別・年齢・職業を明記した上で、Eメール(npeditor@nichigo.com.au)、ファクス(02-9211-1722)、または郵送で「日豪プレス編集部・何でも相談係」までお送りください。お寄せいただいたご相談は、紙面に掲載させていただく場合があります。個別にご返答はいたしませんので、ご了承ください。


戸塚 遊喜(とつか ゆき)
Chatswood Veterinary Clinic

シドニーの現地校を卒業後、シドニー大学の獣医学部を卒業。現在、シドニーのノースショアにある小動物専門病院「チャッツウッド・ベタリナリー・クリニック」に勤務。動物の鍼灸師の資格を保持している。

新着記事

新着記事をもっと見る

NICHIGO CHANNEL

新着イベント情報

新着イベントをもっと見る