犬の子宮蓄膿症(パイオメトラ/Pyometra)について

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Q

友人の犬が子宮蓄膿(ちくのう)症になりましたが、緊急手術のお陰で一命を取り留めたそうです。私も7歳になる雌のビーグルを飼っていますが、まだ避妊手術をしていません。今からでも手術した方が良いでしょうか。(30代主婦=女性)

A

子宮蓄膿症(パイオメトラ/Pyometra)は細菌感染により子宮が炎症を起こし、子宮内部に膿がたまってしまう病気です。避妊手術をしていない中高齢の雌犬に多く発症し、治療が遅れると腹膜炎や敗血症などを起こし生命に関わることがあります。

原因

直接の原因は大腸菌などが膣から侵入して起きる細菌感染症です。犬は通常、1年に2回ほど発情期があり、子宮蓄膿症は発情期の1~2カ月後に発症します。発情期を過ぎると妊娠に備え、黄体ホルモン(プロジェステロン)が多く分泌されます。

黄体ホルモンは受精卵を異物として攻撃しないよう、子宮内の抵抗力を下げる働きがあるので、この時期は膣から入り込んだ細菌に対しても抵抗力が弱くなってしまいます。

黄体ホルモンは、更に細菌感染の温床となる子宮内膜を分厚くしたり、子宮の出入り口の子宮頚管(けいかん)を閉ざしたりするなどの働きがあるため、感染した細菌は増殖しやすく膿が大量に子宮内に蓄積されていきます。

症状

始めのうちは無症状ですが、病状が進むと子宮にたまった細菌の毒素が体をめぐり、全身に影響を及ぼすようになります。多飲多尿、食欲や気力の低下、発熱、嘔吐などが見られます。

子宮にたまった膿が膣から漏れ出してくる場合もありますが、膿が全く排出されない「閉鎖型」の方が病気の進行が早く、腫れて膨れ上がった子宮が体内で破けて致死性腹膜炎を起こす危険があります。

診断

避妊手術をしていない雌犬で発情期後、上記の症状が見られる場合はまず子宮蓄膿症を疑った方が良いです。ほとんどの場合、血液検査、レントゲン検査、超音波検査の3つで確定していきます。

治療

手術で膿のたまった子宮と卵巣を取り除くのが最善の治療法です。手術が早く、他に重篤な合併症を起こしていなければまず助かります。早期に発見できれば、手術自体も通常の避妊手術と大差なく、入院や回復期間も短く済みます。

反対に発見が遅れ、病状が悪化または腹膜炎などを起こしてしまっている場合、手術にも危険が伴い、助からないこともあります。

手術なしで治療する場合、抗生物質と子宮頚管を開く注射で膿を外に出すという方法もありますが、治療に時間が掛かるだけでなく、完治しない場合や、次の発情期後に再発しやすくなるなどのデメリットがあるので、内科療法は勧められていません。

予防

子宮蓄膿症は避妊手術をすることで完全に予防ができる病気です。逆に避妊手術をしていない雌犬では発症する確率が25%とも言われ、非常にかかりやすい病気です。

雌犬を飼っている人、これから飼おうと予定している人は、健康で体力もある若いうちに避妊手術を済ませておくことを強くお勧めします。

*オーストラリアで生活していて、不思議に思ったこと、日本と勝手が違って分からないこと、困っていることなどがありましたら、当コーナーで専門家に相談してみましょう。質問は、相談者の性別・年齢・職業を明記した上で、Eメール(npeditor@nichigo.com.au)、ファクス(02-9211-1722)、または郵送で「日豪プレス編集部・何でも相談係」までお送りください。お寄せいただいたご相談は、紙面に掲載させていただく場合があります。個別にご返答はいたしませんので、ご了承ください。


戸塚 遊喜(とつか ゆき)
Chatswood Veterinary Clinic

シドニーの現地校を卒業後、シドニー大学の獣医学部を卒業。現在、シドニーのノースショアにある小動物専門病院「チャッツウッド・ベタリナリー・クリニック」に勤務。動物の鍼灸師の資格を保持している。

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