きちんと知って欲しい! STD(性感染症)のこと【小林孝子医師】

きちんと知って欲しい!
STD(性感染症)のこと

「ワーキング・ホリデー(WH)でオーストラリアへ!」と、いざ動き出しても、夢や希望だけでなく健康面などの不安もたくさんあるはず。最近ニュースなどで耳にするSTD(Sexually Transmitted Diseases=性感染症)も、正面から話題に取り上げられることは少ないが気になる情報の1つ。正しい知識と適切な予防で回避できるSTDのリスクについて、ブリスベン近郊のビーンリー・ロード・メディカル・センターでGPとして活躍する小林孝子医師に、STDを取り巻く状況や正しい予防策などを伺った。 (取材・文=内藤タカヒコ)

日本の状況を知っておこう

出典:厚生労働省
出典:厚生労働省

昨年、日本の厚生労働省がSTDの予防を呼びかけるために人気アニメ「セーラームーン」をイメージ・キャラクターに使って話題になったが、これには感染者の増加を止めたいという願いが込められている。

例えば梅毒の場合、2010年には621例(男性:497、女性:124)だったが、15年には2,037例(男性:1,463、女性:574)に増加している。全体で約3.3倍、女性では約5倍という事実があり、特に25歳未満の若年層での増加が懸念されている。このデータは厚労省が発表している届出数で、実際にはもっと深刻な事態と考えられている。またSTDには目立った自覚症状がないものもあるが、小林先生は「決して他人事とは思わずに、真摯(しんし)に考えて実践して欲しいです。これは自分だけでなく、大切なパートナーや将来生まれてくる子どもにも影響する重要なことなのですから」と話す。

渡豪前にすべきこと

来豪する人に、日本出国前に実践しておいて欲しいことは以下の3点だ。

① STDについて理解する
② 自分の身は自分で守る
③ 予防接種を受ける

①について、STDには梅毒、クラミジア、HIVなど多くの種類があるが、むやみに恐れず正しい知識を持とう。まず日本できちんと検査を受け、既にSTDに感染していたら治療しておく。

出典:厚生労働省
出典:厚生労働省

②は性犯罪がSTDにつながる可能性を考慮し、危険な場所に行かない、酒を飲み過ぎて記憶をなくすような行為はしない。また保険についても理解し、STDの検査(症状がなくても検査費がカバーされるか)、治療、妊娠、中絶、性犯罪による医療補償などが保険でカバーされるかを確認し、自分自身で守るという「意識」を持とう。

あらかじめ日本で医師に避妊について相談し、ピルを処方してもらい渡豪するのも賢い方法だ。服用の仕方が分からなければGPに質問しよう。

③はSTDの他にも不慮の病気を予防するため、風疹・はしか・おたふく風邪のワクチン、インフルエンザ、B型肝炎、百日ぜき、破傷風の各ワクチンの予防接種を受けておくと良い。日本で医師に相談しよう。特にB型肝炎は、性交渉、タトゥー、ピアス、ドラッグなどの注射器の使い回しなどから感染することが多い。

ファームで働く場合はすり傷や切り傷から破傷風になることもあるので、破傷風ワクチンは必ず接種する。一度作られた免疫は約10年持続し、12歳で定期予防接種を受ければ20代前半まで免疫があるが、20代後半以降の人は改めて予防接種を受けておく必要がある。

滞在中の注意点

短期の旅行などでも滞在中にはさまざまな出来事が起こるが、WHで1年以上の滞在となればなおさらだ。実際にすてきな出会いを経て、恋をして、結婚し、家族を持ってオーストラリアで暮らしている人も多い。恋愛中、性関係を持つことはごく自然なことだからこそ、2人ともSTDをきちんと理解し、また妊娠の可能性についても考え話し合っておこう。小林先生は、以下のことを実践して欲しいと話す。

① コンドームを使う
② ピルを服用する
③ もしもの時はモーニング・アフター・ピル

STD予防で最も重要なのが①のコンドームの着用だ。言い出しにくくても、コンドームを付けるようはっきり伝えよう。

望まない妊娠を確実に避けるにはピルの服用を。コンドームを着用しても18パーセントの確率で妊娠の可能性がある。ピルは基本的に保険適用外だが、服用の不明点と併せて医師に相談してみよう。

妊娠を望んでいないのに、コンドームを使わず(または破れてしまった)、ピルも飲んでいない場合は、緊急措置として性交渉後72時間以内に③のモーニング・アフター・ピル(商品名:Postinol1)を服用する。薬局で約20ドル(処方箋不要)で購入でき、モーニング・アフター・ピルと言えば薬局の人はすぐに分かる。しかし心配な場合はすぐにGPに相談しよう。

オーストラリアのSTD、妊娠事情

オーストラリアでは14年に約8万6,000人がクラミジアに感染したという統計があり、その78パーセントは15~29歳だ。また梅毒感染者も36パーセント増加(The Kirby Institute UNSW)。政府はGPに対し、30歳以下の患者がSTD以外の理由で受診しても、クラミジアのスクリーニングを勧めるよう指導している。

検査で陽性と出た場合、関係のあった(ある)全てのパートナーに連絡し、相手にも検査と治療をしてもらう(トレーシング)。STDは自分だけ治療をしても100パーセント安全ではないのだ。

妊娠に関してオーストラリアでは、産む・産まないは女性が決め、パートナーの同意は不要だ。州によって法律が異なり、QLD州では妊娠20週を過ぎたら中絶は不可で、21週以降は他州で中絶手術を受けなければならない。

望まない妊娠の場合はGPに相談したり、相談窓口に電話をしよう。例えば女性の合法中絶の権利をサポートする機関「Children by Choice」は、無料の電話通訳を利用し日本語相談が可能だ(日時:月~金曜9AM~5PM、Tel: (07)3357-5377または1800-177-725/ブリスベン市外)。

比較的安全といわれるオーストラリアだが、万が一レイプ被害に遭ったら、警察か公立病院の緊急外来へ行く。この時、体液の採集を行うため、体を洗わずに行く必要がある。日頃からピルを服用し、破傷風とB型肝炎の予防接種をしておくと被害は多少抑えることができるが、一番重要なのは自分の身は自分で守ることだ。

STDや不慮の妊娠は話しにくいテーマだが、放置できない深刻な問題でもある。もし悩んでいるなら小林先生に相談しよう。日本語で安心して話せて、女性として、日本人として、そして医師としてアドバイスしてくれる。


◆ビーンリー・ロードメディカル・センターは、ブリスベン、ゴールドコーストのWH、女子学生に向けて、性病や避妊に対する注意喚起プロジェクト「My Health Brisbane andGold Coast」をFacebookから発信する(1月下旬から2月頃)。活動資金調達のために女性特有の健康問題に関するセミナーを順次開催予定なので、ぜひ参加してみては。


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