【QLD】すてきに年を重ねよう!リタイアメントに備えて今できること②

すてきに年を重ねよう!リタイアメントに備えて今できること

遺言 取材協力=フェニックス法律事務所/清水英樹さん

遺言書の重要性

遺言書とは、生前に自分の遺産をどのように誰の采配で分配するのか、葬儀を含む諸事の整理をどのように行うのかなどを明記した文書を指す。オーストラリアでは「ウィル(Will)」と呼ばれ、自分の所有する財産の大小にかかわらず、家族を持つ約60パーセントの人が、生前の自分の意向を法的に有効にする遺言書を作成すると言われている。

遺言書は、本人の死後に生前の意向を実行に移せる唯一の方法であり、遺産の分配などを決定する非常に重要な書類となる。もし遺言書を残さずに死亡した場合、遺産は法律に従って規定の親族に、規定の配分で分配される。

相続権利を与えられている親族とは、配偶者または事実婚の配偶者、子ども、孫、親、兄弟姉妹、祖父母、おじ・おばとされている。これらの関連法律上で相続権を与えられている遺族が誰もいない場合、個人の遺産は国家に帰属することとなる。

法的に有効な遺言書を作成する

法に適合する遺言書の作成において、いわゆる“ホームメイド・ウィル”と呼ばれる個人の裁量で書き記した物では通用しないのが現状だ。普段使用している表現や言葉では、遺言書の内容があいまいな解釈になり、正確さに欠けるため、相続トラブルの原因となってしまう。そうならないためにも、遺言書は基準を満たす法的文書として、専門の弁護士や管財人事務所に依頼して作成することをお勧めする。

作成した遺言書を有効な物にするためには、まずは本人がその内容を理解していること。そのため、英語で用意される遺言書の内容が理解できない場合は、翻訳家による詳細を確認し、完全に理解する必要がある。次に、本人のサインがある文書であること、そして、それは2人以上の証人(相続を受ける人以外)の前で行った物であること、これら3点が必須条件となる。内容は、本人の実際の境遇に合致した物である必要があり、結婚や離婚、相続人の死亡など境遇が変化した際には、新たに遺言書作成の必要性が生じる。どんな場合も最新の遺言書が有効とされるため、過去に作成された遺言書は混乱を防ぐために破棄しておかなければならない。最近では、遺言書の相続人から外されたり、相続できる金額が不明だとして訴えが起こることも多い。そのため、遺言書以外に「補足説明書(Memorandum of Wishes)」により別途説明しておく必要性が増加傾向にある。

結婚した場合、婚前に作成された遺言書は自動的に全て無効となる。また、離婚の場合も婚姻期間中に作成された遺言の“配偶者”に関わる規定は全て無効になるが、“配偶者”が「トラスティー(Trustee)」と呼ばれる管財人に指名されている場合や、特記事項があった場合は例外として扱われるため注意が必要だ。

また、遺言書を作成したら加筆修正は絶対に行わないこと。加筆修正が行われた時点で、その遺言書は無効となってしまう。一箇所のみの修正や加筆の必要が生じた場合に限り、「Codicil」と呼ばれる追加書類に変更内容を記載する。その際、遺言書と同様、2人以上の証人の元で本人のサインが必要とされる。

次に、遺言書を作成したら「エクセキューター(Executor)」と呼ばれる遺言執行人(複数任命していればそれぞれ)に本人の署名なしの遺言書のコピー(フォトコピー)を渡し、遺言書原本の保管場所の指示をしておくこと。法律上正式な遺言は本人の署名がある原本の1通のみとされるため、遺言執行人には本人の署名なしの状態のコピーを渡さなければならない。

エクセキューター

遺言書の中で指名されているエクセキューターとは、遺言者の死後、遺言内容を実現するために必要な手続きをする人のことを指す。残された全ての財務関連の法律的な手続きを執り行う極めて責任重大な役割を担っている。そのため、18歳以上と決められている。また海外や遠方にいては、エクセキューターを務めるのは難しい。そして、滞りなく遺産処理を進める上である程度の法的知識があった方が望ましいとされる。よって一般的に、エクセキューターは家族から1~2人、外部の専門管財人を1人を指名する方法が取られる。

パワー・オブ・アトーニー

もしもの時のための委任状

年齢を重ねるごとに懸念される自身の判断能力の衰えや、コミュニケーションに困難をきたすような知能障がいが生じた場合など、「もしも」の時に効力を発揮するのが「パワー・オブ・アトーニー(Power of Attorney)」という委任状だ。遺言書が死後、有効になる書類であるのに対し、パワー・オブ・アトーニーは存命中の財産管理や個人の医療方針に関する決定を第三者に委任するための法的文書のことを言う。

この委任状によって正式に代行を委任された代理人を「アトーニー(Attorney)」と呼び、法的書類にサインできる権限が与えられるため、委任者の銀行口座、有価証券、不動産など、あらゆる財産に関する管理や取引を始め、病気になった際の治療や投薬など健康や生活面に関する決定を代理で行うことができる。委任者が亡くなった時点で、アトーニーの効力は失われる。委任できる内容が、州によって多少異なっているので注意しよう。

パワー・オブ・アトーニーには、「General Power of Attorney」と「Enduring Power of Attorney」と呼ばれる2種類のものが存在する。それぞれの違いは以下の通りだ。

General Power of Attorney

委任者が判断能力を喪失した状態に陥った時点で効力が失われる性質を持つことが特徴。委任者が海外渡航などで一時的に不在にしている間など短期目的で作成され、管理する財産も限定的に記載される。

Enduring Power of Attorney

General Power of Attorneyとの大きな違いは、委任者が判断能力を失った状態に陥った後も効力が継続する点。そのため、さまざまな規制や要件を付けてコントロールすることができる。この文書は不慮の事故による再起不能のけがや突然の疾病、また加齢に伴い可能性が高くなる知能障がいなどに備えて作成される場合が多い。

忘れてならないリビング・ウィルの存在

先述の第三者に決定権を委任をするための法的書類パワー・オブ・アトーニーの存在は知られているが、安心してリタイアメント生活を全うするために、忘れてはならない公式書類がもう1つある。それは「リビング・ウィル」とも呼ばれる「Advance Health Directive(AHD)」である。「Health Direction」「Advance Care Directive」とも呼ばれ、州によって呼び方が異なる。

AHDには自身が判断能力を喪失した状況やコミュニケーションを取ることが不可能な状態になった時に、自分の望む医療ケアに関わる具体的な指示を明記することができる。例えば、自宅療養か医療施設かといった、どこでどのような治療や投薬を受けたいのか、また延命装置の有無などの指示をしておくことで、アトーニーはその意向に沿って意思決定をすることができる。

AHDのフォームは、クイーンズランド州政府のウェブサイトからダウンロードするか、ニュース・エージェンシーでも購入することができる。内容は医師による確認が必要になる他、本人の署名に当たってはジャスティス・オブ・ピース、弁護士または公認書士の内から、21歳以上の証人が1人必要になる。

自分の人生を最後まで自分らしく生きる意味でも、リタイアメント生活を迎えるに当たっては、遺言書、パワー・オブ・アトーニー、そしてAHDの準備を始めよう。


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